3.現れたのは……。







「コスプレショップだったのか、ここ……」


 俺はようやく周囲を確認して、そう漏らした。

 並んでいるのはどれも、有名なアニメの制服や戦闘服などのコスチューム。

 ぶっちゃけ俺にとっても幸せな空間。だが、意外なのはまさかミレイが……。


「……ミレイ、アニメとか好きなの?」

「あ、あの……その!」


 有名なロボットアニメ、そのツンデレヒロインの戦闘服を着ながら小さくなるミレイさん。着ている服こそ同じだが、性格は正反対の少女がそこに。

 店に置いてあったソファー、その対面に座ったミレイは顔を真っ赤にしていた。

 するとそんな状況を見て一人、苛立つ人物がいる。


「お前、お嬢様を愚弄しているのか?」


 それは護衛の男性――アレン。

 彼はこういった趣向はないのか、とかく居辛そうにしていた。

 しかし大切なお嬢様のためか、鬼のような表情を浮かべている。俺はそんな彼に笑いかけながら、こう答えるのだった。


「あー、大丈夫。ノープロブレム。自分もアニメとか好きだから!」


 そう、実は俺はヲタなのだ。

 とはいっても、割とライトな層ではあると思ってる。

 ソシャゲの課金は隔月で20000円。好きなラノベは厳選して、アニメのグッズが出る時はそちらを優先しているし、結構考えている方だと思えた。


「む……そう、なのか?」

「そうそう。だから、なに? いわゆるフレンズっての? そんな感じ!」


 重苦しい表情を変えないアレンに、俺は軽妙な口調で語りかける。

 すると徐々にだが、彼も警戒を解いてくれたようだった。


「とりあえず、お前はお嬢様の敵ではない――それは分かった」


 ふっと息をつき、サングラスを外す。

 現われたのは何とも、ムカつくほどに綺麗な顔だった。

 キリッとした金の眼差し。眉間に傷跡があったが、それもまた逞しさを感じさせた。まさしく美男というやつだ。イケメンだ。

 若干のジェラシーを抱いたが、俺はすぐに気持ちを切り替える。


「そうそう。とりあえず、銃からは手を離して、な?」

「………………」

「無言!?」


 苦笑いしながらツッコみを入れてしまった。

 どうやら、このアレンという男はなかなかの堅物らしい。

 俺は仕方なしにミレイの方へと向き直った。そして、寿命を確認する。


「あと、30分」


 小声でそう呟いて、息をついた。

 そうなってくるともう、逃げたりする時間はない。

 何度も言うが『寿命が見える』などという世迷言は、聞いてもらえない。


「だったら――」


 どうにか集中して、アレンと一緒に危機を切り抜けるしかない。

 そう思った時だった。


「誰だ――!」

「え!?」


 彼が叫び、入口に銃口を向けたのは。

 予定の時間よりも圧倒的に早い。そのことに困惑していると、





「な……!?」





 視線をアレンと同じ方向に向けた時、息を呑んだ。

 そこにいたのは、海晴だった。




「どう、して……?」




 だけれども。

 俺が驚愕したのは、それだけじゃない。

 海晴が泣きじゃくった顔で手にしていたのは――。




「お、お兄ちゃん……!」



 震え声で、俺を呼ぶ。

 彼女の手には、一つの銃が握られていた。



 

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