そうだ、王子辞めよう!外伝『ランス王国物語 ヒロイン達が勝手に国を統一します!?』
にゃんパンダ
第1話「プロローグ①」
「リアン様!只今帰還致しました!」
その言葉と同時にドアが弾けるように開き、そして弾けるような笑顔の女騎士が食堂に入ってきた。
彼女の名前はセシル・スービーズ。
弱冠17歳で我がルボン伯爵家の騎士団長を務める女傑である。
と言っても、雌ゴリラのようなゴリマッチョという訳ではない。
むしろ、整った美しい顔立ちにプラチナブロンドの髪をシニヨンにした彼女は、黙っていれば儚い美少女にさえ見える。
ついでに胸も儚い。
そんな彼女は、私がちょうど朝食を取ろうとした時にやってきた。
「セ、セシル様ぁ!旦那様は朝食の最中でぇ……」
ノックもなしにいきなり入ってきた彼女をメイドのコゼットが咎めようとするが、
「黙れ」
セシルの鋭い眼光とドス効いた一言で、
「ひぃっ!……きゅう」
黙らされ、そして気絶した。
可哀そうに。
「お帰りセシル、あと遠征ご苦労様」
私は苦笑しながら、私が命じた訳でもないのに隣の領地に攻め込んで帰ってきた彼女に、とりあえず労いの言葉を掛けた。
「ありがとうございます!リアン様!」
するとセシルは返り血が付いたままの顔で、嬉しそう微笑んだ。
「……」
まるでホラー映画のワンシーンである。
顔が美しいから余計に怖いんだよなぁ……。
「あ、あとリアン様!お土産もバッチリ持ち帰って来ました!」
そういうと彼女は私の目の前にドカッと麻袋を一つ置いた。
「ええっと……これは?」
嫌な予感しかしないし、はっきり言って聞きたくないのだが……。
話が進まないので仕方がなく聞いてみた。
すると彼女は誇らしげに袋を開けながら答えた。
「敵の大将、ジラール侯爵の首です!」
「……」
ああ、やっぱり……。
何となく分かってたよ……。
そして私がそのまま無言でいると、セシルは何を勘違いしたのか、勝手に喋り出した。
「あ、ご安心下さいリアン様!私はあの娘のように姑息な真似はしていませんから!ちゃんと正面から屋敷にカチ込んで、全員血祭りにあげましたから!」
「……」
なんてことを……この脳筋め!
というか、正面から屋敷にカチ込んで血祭りにあげるとか、どこのヤ○ザだよ!?
怖すぎるよ!
と、私がそんなことを考えていると、
「ええと……それでですね……。私、頑張ったので、その、ご褒美を……」
セシルは血のついた顔で、上目遣いに何かを期待して見つめてきた。
「ん?……ああ!いつものか」
「はい」
すると、セシルは私の前に跪き、
「はい、なでなで」
「えへへ……」
嬉しそうに、なでなでされた。
というか、カチコミのご褒美が頭なでなでって……。
そして、セシルは心行くまで頭なでなでを楽しみ、
「あ、ありがとうございましたリアン様!これで元気いっぱいです!では、早速次の敵を滅ぼして参りますのでこれで失礼しますね!」
そういうと彼女は風のように、いや嵐のように去っていった。
「……はぁ」
全く、いつもの事ながら困ったものである。
そして、目の前の朝食と麻袋に目をやりながら、私は横に控えるメイドのレイニーに言った。
「この袋を片付けてくれ。あと、申し訳ないが朝食の肉は下げてくれ」
流石にこの状況では、ね……。
「畏まりました旦那様。では、魚料理に致しますね」
「頼む」
気が利くレイニーは即座に朝食の代替案を提示すると、平然と赤黒く染まった麻袋を持って食堂を出て行った。
はぁ、全く朝から疲れる……おっと、そう言えば自己紹介がまだでしたね。
改めまして、皆様こんにちは。
そして初めまして。
私、ガレリア王国ルボン伯爵家当主、マクシミリアン=ルボンを申します。
現在18歳の若き貴族で、一応金髪碧眼のイケメンです。
あと、実は転生者で現代日本の記憶を持っていたりしますが、専門的な知識もスキルもないので、特に大活躍したいとかありません。
むしろ、静かに、そして穏やかに暮らすことを望んでいます。
あ、この世界の説明もまだでしたね。
ここは、地球の中世ヨーロッパによく似た世界で、「ガレリア王国」という国です。
と言っても、現在この国は名ばかりで、好き勝手に諸侯が暴れる戦国時代です。
原因は大きく二つあり、一つは王家が堕落して弱っていたこと、もう一つは海峡を隔てた先にある隣国「ルビオン王国」が攻め込んできたことが原因です。
そんなガレリア王国の一角に、我が「ルボン伯爵家」があります。
細かいことは追い追いお話しますが、私はついこの間亡くなった父の後を継ぎ、ルボン伯爵となりました。
そして、新当主として私は中立を保ちながら上手くこの戦国時代を生き抜くつもりだったのですが……。
何故か、望みもしないのに絶賛領土拡大中なのです。
しかもオートで。
意味が分からないと思いますが、私もそれは同じです。
実際そうなのですから。
詳しくは後でお話ししますが、さっきの脳筋……もといセシルと、もう一人によって勝手に領土が拡張されて行くのです。
さて、一体何故こんなことになってしまったかと言うと……おや、噂をすればもう一人がやって来たようです。
彼女は先ほどのセシルと違って淑やかに入室し、入り口付近で優雅にカーテシーをキメました。
「ご機嫌よう、お兄様。只今戻りました」
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