第21話 白い死神⑤

 <Gディバイド>は、護衛の機体が減少し守りが手薄になったダガー級巡洋艦に狙いを定めて接近していく。

 二手に分かれた『アンデッド小隊』は、『地球連合軍』の艦隊を包囲しながら旗艦であるサリッサ級巡洋艦<パイク>を目指して、その戦力を削っていく。

 4機の猛獣に囲まれた『地球軍』の艦隊は、今や混乱し指揮系統も滅茶苦茶で統制が取れてはおらず、反撃は単調でユウ達『アンデッド小隊』にとって脅威にはなり得なかった。


「マリク隊長、俺は目の前のダガー級を落とした後、サリッサ級に攻撃をかけます」


『了解した。俺達ももう1隻ダガー級を撃沈したら、サリッサ級に向かう。合流して一気にたたみかけるぞ』


「分かりました」


 マリク機との通信を切ると、ユウは<Gディバイド>のスラスターを全開にし、ブラスターライフルによる射撃を連続してダガー級に放つ。

 ダガー級のターミナスレイヤーは2層展開されており、出力もオービタルトルーパーのものより少し強固といった程度だ。

 そのような薄皮では1撃で<カトラス>を撃墜する白い死神の猛攻を止める事は出来ず、瞬く間に食い破られる。

 <Gディバイド>は対空攻撃をかわしながら、ライフルでダガー級の対空システムを沈黙させていく。そして、反撃が弱くなった瞬間を見計らってブリッジにライフルを数発叩き込み破壊するのであった。

 艦の頭脳を破壊され、宇宙を漂うだけの巨大な獲物をこのまま見過ごす死神ではなく、エンジン部にも立て続けに攻撃を放ち、間もなくダガー級巡洋艦は爆発を起こしバラバラに四散した。


「ダガー級戦艦の破壊を確認……次の標的に移行する」


 ユウは<エンフィールド>へ戦況連絡を手早く済ませると、敵旗艦であるサリッサ級巡洋艦<パイク>に対して攻撃を開始した。

 その直後、<パイク>はコロニー〝ベルファスト〟側に向けて移動を始めていた。撤退するのならば、退路であるコロニーとの逆側に移動するのが当たり前であり、この奇妙な行動に<エンフィールド>のブリッジでは皆の頭上にクエスチョンマークが浮かんでいる。

 だが、艦長であるアリアは、その行動の真意を察し、憤りを覚えていた。


「コロニーを盾にする気!?」


 アリアと同様に、敵艦の目的に気が付いたユウは、さらにスピードを上げて<パイク>に向かって行く。

 そのさなか、コクピットに敵機接近警報が鳴り響き、頭上側から<カトラス>がTBターミナスビームセイバーを展開させながら突っ込んで来るが、<Gディバイド>もTBセイバーにて応戦する。

 ぶつかり合う青色と黄色の高密度のターミナス粒子はバチバチと激しい音と光を放つ。

 その閃光はあまりにも強く、コックピットのモニターでは光度を調整し出力されパイロットの操縦に影響が出ないように配慮がなされている。

 同様に真空の宇宙では聞こえない周囲の音は、モニターに表示された状況をシステムが解析し、機体のライブラリーにあるデータから最適な音声データがコックピットないしはヘルメットに再生され、パイロットに伝える仕組みとなっている。

 これにより、パイロットは視覚だけでなく聴覚を用いて操縦に生かせるようになっている。

 <Gディバイド>は、敵機のTBセイバーを切り払うと瞬時に敵の後方に回り込み、蹴りを叩き込んだ。

 コックピットに激しい衝撃を受けバランスを失った<カトラス>は動きが一瞬麻痺し、その隙に<Gディバイド>は黄色に輝くTBセイバーの刀身で敵の胴体部を真っ二つに切り裂いていく。

 コックピットに超高温のターミナス粒子が直撃し、敵機のパイロットは一瞬で蒸発するのであった。

 

「さすがに旗艦の防衛部隊はさっきの連中と動きが違う。時間がかかればコロニーが盾にされる……なら!!」


 <Gディバイド>のブラスターライフルの銃身バレルが前方にスライドし、コックピットのモニターに『ブラスターモード稼働中、使用可能』と表示され、ユウは照準を<パイク>のブリッジに合わせてトリガーを引いた。


「これで一気に叩く! 行けぇーーーーーー!!」


 ブラスターモードへ移行したライフルから、敵艦のブリッジ目がけて赤い閃光が解き放たれた。

 艦を守るために、ターミナスシールドを展開させた<カトラス>3機を破壊し、赤色した超高出力のターミナス粒子が<パイク>のターミナスレイヤーに直撃する。

 サリッサ級のターミナスレイヤーはダガー級と同様2層まで展開が可能であり、<Gディバイド>が放ったブラスターモードの砲撃は威力を弱めながらも、その防御層を完全に破壊するのであった。

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