第19話 白い死神③

「なんだ? 敵襲!? どこから?」


 巡洋艦ダガー級のブリッジは混乱していた。<エンフィールド>攻撃のため移動を開始した矢先にコロニーとは逆の方向から奇襲を受けたのだ。

 周囲に艦影はいない。反応はただ3つのみ。


「レーダーに熱源あり! オービタルトルーパーが3機と思われます!」


「たった3機だと? くっ! 本艦のオービタルトルーパー全機を向かわせろ! 一気に叩け!」


 攻撃を仕掛けた3機は、依然として速度を落とさないまま敵艦に向けて接近する。『アンデッド小隊』の3機が戦場に到着したのだ。


「ルカ、ケイン! まずはあの艦を墜とすぞ! 油断するなよ」


『分かってますよ隊長! それじゃあ、まずは周囲の連中からいきますか!』


 ケインの長距離狙撃仕様の<セルフィーカスタム>が専用のスナイパーライフルを構える。

 ライフルに搭載された高性能照準システムが機体のシステムと連動し、ライフル搭載カメラが捉えた映像をコックピットに表示する。

 通常の機体とは一線を画する鮮明な映像と狙撃用データがモニターに表示され、照準を敵機に向ける。ケインはコックピット内で息を殺し、意識を狙撃に集中する。

 機体の狙撃用のシステムが彼の視線などの情報から、長距離射撃をアシストする。照準マーカーが敵機の中心で定まり、赤色で表示された。


「当たれ!」


 間髪入れずケインは引き金を引き、スナイパーライフルから高出力のターミナスエナジーによる粒子が発射される。

 それは、ダガー級の防衛に当たっていた<カトラス>の胴体をターミナスレイヤーごと打ち抜く。

 その状況を付近で目撃していた別の<カトラス>パイロットは、自機のはるか射程外から正確に襲ってくる狙撃に恐怖していた。


「なっなんだ? あんな距離から攻撃が可能なのか!?」


 止まっていると狙撃の餌食になると考え、この場から離れようとするが、今度は別の方向から高出力の砲撃が放たれ、彼の機体は上半身を吹き飛ばされるのであった。


「敵機1機撃破! 次の標的に移ります」


 敵機を一撃で破壊したのは、オレンジカラーの<セルフィーカスタム>による砲撃であった。

 オレンジカラーが特徴のルカ機のバックパックに装備されたターミナスキャノンは、オービタルトルーパーの武装として高威力の部類に入る。

 並みの機体ではターミナスシールドを展開しても、それごと撃ち貫かれる。もはや支援機という位置づけから逸脱した破壊力を有していた。


「よし! ケインはそのまま狙撃で奴らを引っ掻き回せ! ルカは俺の援護を頼む。突っ込むぞ!」


『分かったわ!』


 目の前のダガー級巡洋艦に向かって突撃していくライトグリーン色の機体。マリクの<セルフィーカスタム>は、敵機のTBターミナスビームマシンガンの包囲網をかわしながら自機のTBターミナスビームライフルをカウンターとばかりにお見舞いする。

 その正確な射撃を受けて、ある者はマシンガンを破壊され、ある者は胴体に直撃を受けて爆散した。

 そんな、ライトグリーンの機体を包囲しようと3機の<カトラス>が回り込もうとするが、そこにケイン機の長距離射撃が急襲し的確に黄土色の『地球軍』機を撃墜していく。

 そして、狙撃に注意を払った所にルカ機のライフルやターミナスキャノンによる一斉射が行われ、シールドごと敵機を粉砕するのであった。

 僚機を失った<カトラス>にマリク機が腰部からTBターミナスビームセイバーを引き抜き突っ込んでいく。

 近づかせまいと必死にマシンガンを乱射するが、マリクはそれを回避やシールドによる防御でやり過ごすと、一気に近づきコックピット部に高出力のビーム刃を突き立て、破壊した。

 護衛のオービタルトルーパーを全て失ったダガー級戦艦は弾幕を張り、『アンデッド小隊』の3機を寄せ付けないように抵抗を開始する。


「必死だな……さっきは<エンフィールド>が同じ状況にあったわけだが……まぁ、因果応報だ……一気に墜とす! 火線を集中させるぞ!」


『『了解!』』


 3機の攻撃がダガー級戦艦に集中し、2層のターミナスレイヤーを瞬く間に破壊していく。

 敵艦の防御層が消失すると、マリクとルカの2機は艦全体に火器を集中させ武装を破壊する。

 迎撃不可能になった所でケイン機のスナイパーライフルから放たれたビーム砲がブリッジに直撃、その後動力炉も続けて破壊された。

 艦の脳と心臓部を破壊されると、しばらくしてダガー級戦艦は爆発し、宇宙のスクラップと化したのである。

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