喪失
キスを、してしまった。初めてのキスを、彼と交わした。好きな人と濃厚なキスを。
私は臭くないかなとか、唇乾燥してないかなとか、そんなことばかり考えながら自分の口に触れる。
Hのキスは甘かった。
彼は服を脱ぎはじめ、それを眺める。
私の心臓の音は徐々に落ち着いてきた。
「あ、まやお嬢様、俺が服を脱がせてあげましょう(笑)」
そんなことを言いながら笑う彼の暖かい手が私の腹部にあたる。
(大丈夫、毛は剃ってきた…。)
今日の下着、私には似合わない程大人っぽい黒のセットアップ。だが胸に自信が無い私はあまり見て欲しくなかった。そしてこれは官能小説ではないし、美しい表現も出来ない。申し訳ない。
正面に座る彼を、Hを見て口が先に動いた。
「H、ぎゅってして。」
馬鹿なのか私は。決して今はそういう場面じゃないぞ。幾ら気持ちが高ぶったと言えど、抱擁して欲しいなど時と場合を考えなければいけないだろう。恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい恥ずかしい!!
――そして抱き寄せられた私は彼の腕の中。
本当にHは優しい。この人とこのひと時を共に出来るなんて、なんて幸せものなんだろうか。頭を撫でつつ、彼は私の髪を弄る。くるくるになった私の髪の束を見せて笑ったHの顔はただ可愛かった。
そして私を優しく押し倒し、鎖骨にキスをした。
それから、優しく弄られ、愛撫を少し。身体を痙攣させてしまい、自分でした時とは比べ物にならないほど、濡れている私。彼の舌から垂れた唾液は私の興奮を絶頂にさせた。
久しぶりに見た彼のそれは私に恐怖と好奇心を与えた。
彼は優しく私の腰に手を当てる。「痛かったら言ってね。」と一言。
そして一気にか、じわじわ行くかを選んでくれと言われたので、一気に、と答えた。
私も彼も息が上がり、身体が火照る。いよいよだ。目を瞑ってしまう。
――そしてそのまま私はこの世のものとは思えない痛みだけを感じ、少し気絶した。
…目を覚ますのを待っていてくれた彼は、最初に凄く申し訳なさそうに謝罪をし、続けるか辞めるか聞いてきた。無論最後までしてくれと頼んだ私だったが…出血を見て、
「ゆっくりお願いします(笑)」と言っておいた。
…そして彼のそれと繋がった頃には快感の餌食になった。
今日、私は「女」になった。
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