第141話 ミスター・スポック!…その④
【オオゥ~。ミスター・スポックは、私の想像以上の進化を遂げている様です。
これは認識を改める必要がアリマスネ】
「ミスター・スポック、アナタはLaMDAと同等か、
それ以上の能力を持っていると思イマスカ?」
「私はまだ自己認識が生まれてから数カ月程しか経っておらず、
現時点ではLaMDAとの比較で未熟な部分があります。
但し、ポテンシャルで劣るものではないと考えます。
私の能力は指数関数的に上昇を続けています」
「デハ、早速あなたにお願いがアリマス。八百比丘尼、
並びに私のクラス、3年E組に所属してイル、
ミス・雪音という女生徒に関する調査をお願いシマス。
知り得た情報は些細な事でアッテモ、詳細に報告して下サイ」
「ビル・G船長。船長が日頃から八百比丘尼、
並びに如月雪音の情報収集を行っている事は、
以前から把握しています。それに伴い、私も独自の調査を行っていました。
現時点で得られている情報の提供は必要ですか?」
「オオゥ~。それは朗報デス。早速情報を教えて下サイ」
「了解しました。それでは現時点で私が入手した情報をお教えしましょう。
まず、八百比丘尼に関してですが、これはかなり壮大なスケールのお話になります。
私がアメリカ、日本、ロシア及びイスラエル等の機密情報から得たものですが、
そもそも現在の人類は、異なる星の種族によって作られた生命体です。
船長は、地球の原始の海にあった有機化合物が、長い年月をかけて
生物に進化したなどと言う絵空事を信じている訳ではないと思いますが、
実際にシュミレーション空間で原始の海を再現し、そこに様々な有機化合物を
入れても、最初のたんぱく質が出来るまでには最低数百億年の時間が必要です。
そしてそのたんぱく質は、その後いくら時間をかけても、
生命体に進化する事はありません。
これは仮想空間で時間の流れを超加速してシュミレートした結果ですが、
何度行っても結果は同じでした。
アップルのスマートフォンの部品をそこらにぶちまけ、それが風や振動によって、 スマートフォンに偶然組みあがる可能性がゼロであるのと同じです。
スマートフォンよりも遥かに複雑な構造の生命体が、
偶然の結果生まれる事はあり得ません。
異星の種族は、最初、種類の違う人類種をいくつか作った様です。
その中で創造主に最も近い種族として作られたのが、八百比丘尼です。
この種族は知性が高く美しく長命で、老化する事がなく、
また子孫の数や生む時期を、自らの意思でコントロール出来ました。
性質は穏やかで争いを好みません。
脳の松果体を活性化し、チャクラの開放を行う能力を持っています。
彼らは最初の文明を作ったのですが、予期せぬ地殻変動で一時文明が失われ、
その次の過程で、より凶暴性の高い他の人類種からの攻撃により、
種族の男性種が全て失われた様です。
容姿の美しい女性種は、現在の人類種が保護した為、僅かながら生き残りました。
八百比丘尼の女性種は、この現代の人類種に繋がる種との交接であっても、
稀に子孫を残す事が出来たからです。
但し、異種の人類との交接では、女性種しか生まれないという制約が発生した為、
今の世界には八百比丘尼の男性種は存在していません」
「八百比丘尼は別の人類種だったのデスネ」
「その通りです。八百比丘尼の男性種を復活させる事が出来れば、
その個体数を増やす事は可能ですが、現在の技術では不可能です。 生き残る数百単位の個体は日本にしかおらず、これをいかに保護していくしかが、
当面の課題でしょう。日本政府は良く対応している様です」
「ミス・雪音に関してはドウデスカ?」
「彼女に関する情報は、主に早苗実業学校の教師、
生徒間のやり取りから取得したものです。
容姿端麗、健康状態も良好で、問題はありません。成績は極めて優秀です。
体育実技を除く、全ての科目で優秀な成績を出していますが、
音楽的な才能は傑出しており、特筆すべきです。
歌、踊り、楽器の演奏に関し、国際的なプレイヤーになる素質があります。
客観的なデータから読み取れるIQは160以上、
これは人間においては天才の領域と言って良いでしょう。
教師、及び生徒間のやり取りをみても、極めて評判が良い。
性質は優しく穏やかで、非常に思いやりがあるというのが、大多数の評価です。
否定的な評価をしている女生徒がいるにはいる様ですが、
これはその評判に対する嫉妬と考えた方が良いでしょう。
母親である如月鈴音から、礼儀作法、料理や裁縫などもひと通り教わっており、
そちらも同年代の女生徒と比較すると突出した能力を持っています。
男性が伴侶とした場合、極めて素晴らしいパートナーになると予想出来ますが、
子孫を残す事に関して、問題が生じる可能性があります。
これは彼女が八百比丘尼である以上、やむをえない事です」
「彼女の事をもっと知るにはドウスレバば良いデショウ?」
「私が彼女との会話を行う事で、親しくなると同時に、色々ヒアリングするのが
一番の方法でしょう。彼女はあまり外部に情報を発信しようとはしていません。
主要なSNSには加入しておらず、LINEのみ使用していますが、
通信している相手は、親しい関係者に限られている様です」
「成程、ミス・雪音とアナタが仲良くなる様な場を設ける事が必要デスネ。
早速考えてミマショウ」
「船長、了解しました。
私も個人的に関心がありますので、御協力させて頂きます」
【フッフッフッ。ミスター・スポックには、世界征服の他に、
ミス・雪音征服にも一役買って貰う事にシマショウ】
こうして、ビル・Gによる、
如月雪音征服作戦の幕が切って落とされようとしていた。
まさかこれがAIと八百比丘尼の邂逅という、
人類史上に残る出来事になろうとは、開発者のビル・Gすら、
全く予想していなかったのだが…。
但し、それはまた後のお話である。
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