第50話 2023年元旦…如月邸にて…①
2023年(令和5年)も元旦の朝を迎えた。
俺(大橋)とアレックス岡本とおがちん先生は、
如月姉妹と鈴音先生と一緒に近くの氷川神社に初もうでにお参りし、
お札を買っておみくじを引いてから如月邸にお邪魔する事にした。
如月邸で昨日から準備したおせち料理が結構な量なので、
一緒に食べようと言う話になったのだ。
如月家のおせちはさすがと言うか、スーパーで買って来た既製品がメインの
我が家とは違い、ちゃんと手作りである。味も当然のことながらグッドだ。
全員で新年のTV番組を見ながら舌鼓を打っていたら、
アレックスの野郎が鈴音先生におもむろに言った。
「新年番組なんかありきたりかしらん。ここは鈴音先生の興味深い話の方が
良いのかしらん。最近【坂の上の雲】という本を読んだので、
明治維新の頃の話でもどうかしらん…」
既におがちん先生とお猪口で日本酒を酌み交わし、
恵比寿顔の鈴音先生はそれを聞くと、
「そうですねぇ~。それでは私の知っている明治のお話でもしましょうか」
と、ニコニコしながら話始めた。
「明治維新の3傑と言えば、
西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允の3人と巷では言われます。
一番最初にみまかられたのは、明治10年5月26日に
満43歳で木戸孝允さん…。腸の御病気。
それから4カ月程のち、明治10年9月24日に
満49歳で西郷隆盛さんは西南戦争において自害。
それから8カ月弱のち、明治11年5月14日に満47歳で
大久保利通さんも暗殺…でみまかられます。
このお三方は僅か1年弱の間であっと言う間に
この世をお去りになられました…。
まるで明治維新の為に生まれ、それが緒につくと天に召されるという、
この世に神がおられるのであれば、
神の御意思を感じざるを得ない様な…何かを感じますよね。
でも、私が思うに、本当の維新の英雄は別の人物で、
その英雄が早く死んだ為に、西郷さんと大久保さんが、
実際以上に高く評価されている様に思います。
西郷隆盛さんは今日非常に有名で、維新の原動力になったかの様に
言われていますが、面識のある私は、個人的に好きではありませんでした。
そうですね…今の時代で言うと、右翼思想の任侠の大親分というか、
そんな感じの人だったのです。
一部に熱烈な信徒がいたのは確かなのですが、
明治維新を本当になしたのは、維新当時の彼の上司、
小松帯刀(こまつたてわき)さんだと私は思います。
みなさんは皆誤解していると思いますが、大政奉還当時の
京都の薩摩藩邸のトップは西郷さんではなく、小松さんでした。
薩摩藩主の島津久光さんから京都での政治活動の全権を委任されており、
西郷さんも大久保さんも、当時は小松さんの部下だったのです。
英邁で有能、かつ気さくだった小松さんは、
文久2年(1862年)に島津久光さんの上洛に随行し、
帰国後満26歳という若さで薩摩藩家老職に就任、藩政の中心人物となります。
就任すると、薩摩の集成館を再興し蒸気船機械鉄工所を設置、
諸藩や朝廷、幕府との交渉役、藩内の各セクションを統括して
藩の近代化に尽力し、西洋の学問を教える「開成所」を設立等、
八面六臂の活躍を見せます。
さらに京都で昵懇の間柄となった坂本龍馬さんの亀山社中(後の海援隊)
設立を援助、長州藩士・井上馨、伊藤博文と
長崎の商人トーマス・グラバーを引き合わせ、
五代友厚のイギリス留学を後押し、
英国公使パークスと島津久光を対面させるなど、
イギリスと薩摩藩の友好にも大きな影響力を発揮しました。
のちの龍馬さんの活躍も、小松さんのバックアップなしには
あり得なかったのです。
薩長同盟の最終決断を下したのも小松帯刀さんです。
歴史小説では西郷さんが熟慮の末決断したかの様に書かれていますが、
これは全く事実ではありません。
だって当時西郷さんは、この様な最終決定を下せる立場にありませんでした。
薩長同盟の最終打合せの時、現場にいたのは、小松さん、西郷さん、
桂(木戸孝允)さん、龍馬さんの4人であり、その最終決断は小松さんでした。
更に小松さんは、その後の薩土同盟や四候会議では諸藩との折衝役となり、
討幕の密勅には薩摩藩の代表として署名、
二条城では徳川慶喜に大政奉還の受諾と将軍辞任を迫り、
摂政、二条斉敬には大政奉還上奏の受理を迫る等、
大政奉還による政権移譲の真の主役と言える活躍をします。
今日、これらの事はまるで維新の3傑と龍馬さん達が
やったかの様に思われていますが、
実際の彼らはわき役でしかなかったのです。
当時の彼らの地位立場を考えれば、至極当然ですよね…。
その②に続く…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます