第4話 夜自宅
生徒会室の誓い?で、僕と会長は秘密を共有することになった。
続きはまた、明日ということで外に出るとすっかり夜になっており、
自宅に帰ると、すでにミルルがいた。
「ユウ君おかえり」
「はい、ただいま……じゃなくてどうしているの!」
ミルルはびくっと身体を震わせてこわごわと言った。
「だ、だって……ユウ君にお、お料理作りたかったんだもん、お、お腹空かせてるって思って……」
「ご、ごめん……その……大きいな声だして」
「ううん、私が勝手にやったことだから」
ミルルはまだ震えていた。こんな時、どうしてほしいか……僕は知っている。
「ごめん」
なにもできずに、ただ謝ることしかできなかった。
もし、本物のユウだったら抱きしめるられたのにな。
だから代わりに「いただきます」をした。
目の前にあるご飯をかっくらった、勢いよく、笑顔で
「美味しい美味しい」
何度も、何度も、言いながら平らげた。
「ユウ君、ありがとう、おいしかった?」
涙声でミルルは言った。僕のせいで泣かせてしまったのにね。
ミルルの料理はどれも美味しかった、
「ミルルの様な優しい味に包まれた感じがしてた」
自分でいうのは少し格好つけすぎかな。ミルルの顔を見ることができなかった。
「えへへ、ちょっと恥ずかしいかな。じゃあ全部食べてくれた御礼しなきゃね」
ミルルから衣擦れの音がしたことはわかった。
「ミ、ルル」
彼女は下着姿になっていた。下着が白かったせいかもしれないけど、肌も白くて、眩しく綺麗に見えた。豊かな乳とくびれた腰と、自己主張を忘れないお尻に僕は興奮した。
「どう、かな。こんなこと初めてなんだけど、なんでかな、ユウ君の前で脱ぎたくなっちゃった」
ミルルは恥ずかしいのか、足を小刻みに揺らすことで胸も大きく揺らしていた。
それが堪らなくエッチで、足元に視線をそらしてしまう。
「ど、どうっていわれても」
「じゃあ少しでも私のこと、どうにかしたくなる?」
迷いながら、うんと言ってしまいそうになって、ふと思い返した。
会長がミルルに羞恥心に関する魔法を懸けたのではないかと。
いやでも、朝からの行動を考えたら、ミルルがこんなことしてくるのもおかしくはないなんてすぐわかるはずだったけど、その時の僕のほうがミルルより恥ずかしくて、家から飛び出してしまった。
そして、明日、会長にこのことを聞いてうとおもった。
「ミルルさんのことが昨日の魔法と関係があることはまずないな。そもそも、私達は、おそらく遺伝子レベルで性的行為に関心を失いつつある、娯楽が世に溢れてるし、この学園を自由登校にした結果、半数以上の生徒が自由登校を選んでいる」
「それでは、ミルルが僕に襲うようなことをしてきたのはどうしてでしょう」
少し自分で口にしてて恥ずかしいけど、重要なことかもしれないので我慢した。
「私たちは、異性を見ても興奮はしない、けど好意を持つことはできる。そういうことだ」
そうやってきくと、嬉しいんだか小っ恥ずかしいんだが顔が熱くなる。
ミルルが俺にそんな気持ちを持ってくれたなんて。
あの前世界では、性欲を持つのは当たり前で。シたいから好きなのか、好きだからシたいのかわからなくなることがある。
だが、この世界では、性欲はなくとも好きになることはできる。
つまり純粋にミルルは僕を好き、ということになる。
拘束魔法さえなければ、ミルルと純愛ラブストーリー『ビューティフルピュアラブ』と名打たれるようなストーリー展開があったかもしれないけど、僕は今、会長に拘束魔法をかけられている。どっちかっていうと『ストーキングオブラブ』のような感じなんだろうなあ。
異世界に転生してもいいことばかりとは限らないなあ。
「君はさっきから、顔の変化が目まぐるしいけど大丈夫か? 顔の表情を操る魔法の重ねがけはやめたほうがいいぞ」
「ち、違います。というか途中で声かけてくださいよ」
「ふふふ、ユウ書記を見てると楽しくてな。いろんな事を忘れてしまうんだよ」
「からかわないでくださいよ」
「揶揄うつもりはないんだけどね、どうにも君がいると、いい意味で自分が自分でいられなくなる」
「じゃあ手掛かりにはなりませんね」
「こればっかりは、焦っても仕方ない。昨日やっと、羞恥心がヒントだとわかっただけなんだ。それに安易に魔法で解決しようとすれば、かえって人類は滅びかねない」
「じゃあ地道に実験するしかないってことですね」
「その為の拘束魔法さ、今日はどんなことがしたい? ユウ君に選ばせてあげよう」
会長はソファーに深く腰をかけ、白く長い右足を高くあげ、挑発してくる。
美人会長からの夢のようなお願いに僕の身体も色々大変です。
「そのエッチな動きはなんですか」
「古代の本に載っていたんだよ、こうすれば男は興奮するらしい。それに私もなんだか変な気分になってくる、それとも……ユウは私に興奮しないのか」
「そりゃしますよ! 会長はお綺麗な方で僕なんかとても……」
これ以上きかれたくないので話題をそらしたい。
「そ、そういえば会長はよく古代語知ってますよね。まるで古代人みたいだ」
「ほう、古代人みたいか。ユウ書記は面白いこと言うんだな。それで君はどうしたい?」
「あ、い、いえ。じゃあ。上着を脱いで欲しいです」
「そうだな、まずは脱がないことには触ることもできないしな」
「さ、触る!?」
会長は、ゆっくりゆっくりボタンを外し、脱いだその先は白いシャツで、会長の胸の線がはっきり出てくる。
「どうだ、羞恥心はでてくるか」
「か、会長はどうなんですか」
「私に、そんなこと、を言わせるの、か」
会長の頬は桃のようにピンクに染まっていた。それが可愛らしく見えて、
色気も含んだ彼女の声もあって、僕の身体は滾ったかもしれない。
しかし、こんな卑猥な空気も生徒会室の扉のギィイイイという老朽化した金具の音と共に雲散霧消していった。
「おはようございます!会長!ユウさん!」
快活な声が室内に響き渡る。顔を見なくともこの声でヒカリとわかる。生徒会広報担当ヒカリ。地獄耳の異名を持ち、校内の情報を隅々まで掌握している。その行動とは裏腹に容姿は童顔、身長も低く、髪を二つ結び。前世界のロリコン共は大喜びに違いない。お願いだ!できれば変なことに気づかないでくれ!やばいよやばいよ!
心の中で叫ぶ。
「あれれ? 会長さんどうしたんですか、上着なんか脱いで。今日そんな暑いですか」
「ああ、ある意味暑かったよ」
会長も何答えてるんですか!
「そうですか、何か怪しいですね、ユウさんも顔赤いですし」
ヒカリは訝しげな顔で僕をじぃっと見つめる。
「怪しい? そ、そんなことないって。ですよね? 会長」
僕が何か言うとボロが出てしまいそうなので会長に話題を振る。
「ふ、もちろんだよ。ユウ書記が間違いなど起こすはずがあるまい」
「……そうですか」
ヒカリは納得しない顔をして広報部の席にバスンと音をたてて座った。
もしばれたら、やばいかった。いくら、この世界が性的話題に無関心とはいえ、スキャンダルの具合によっては、失職どころか、羞恥に関する研究に不自由が生じるだけでなく、この羞恥心による人間を繁殖させる計画も終わってしまう。
「ところでヒカリ広報、ユウ書記が倒したナバーゾがどうなったか知らないか?」
「いいえ、それは私の情報網でもわかりません。ただ、ナパーゾは人間じゃないらしいです。あー! 何か面白いこと起きないですかね。マジカルチューブのネタも限界がきましたよ。直近なんて『飛行アクロバットダンスで踊り狂おう』ですよ、一周まわってきました、再生回数は聞かないでくださいね」
ヒカリは、広報で録画担当だけに飽き足らず、マジカルネットを使ったマジカルチューブの配信者でもある。どこまでこいつは目立ちたがりなのか。この行動力がないと生徒会の広報は勤まらないのか、理解に苦しむ。
「いや、ダンスも悪くないぞ、交流が深まるじゃないか」
「そうなんですけどね、世間的に、いちいち集まるのが面倒だとか、時間が拘束されるのが面倒だとか、何をするにも面倒と言われてしまうのです」
僕は会長に拘束魔法かけられてますけどね、と心でつぶやく。
「嘆かわしいことだよ、皆、自分の事しか考えていない。魔法が発展しすぎてしまったことに尽きるな」
「私もそう思います、皆で何かやるから楽しいのに、最近お友達が減る一方なんですよ。魔法でパペットを友達に見立ててもなんか虚しいです!」
「確かに……パペットが人の心を持っていても何か違うかもね、
ヒカリは、騒げれば幸せな楽観魔法遣いではなかったんだね」
「ユウさんひどいです、私は皆が明るく幸せな世界を生きれる様に、明るく接してるんですよ! ハイテンション系楽観主義魔法遣いならそもそも学校きませんよ!」
「そ、そっか。それは素晴らしいね」
ヒカリは小型の太陽でも燃料してるのか、こいつが元気じゃなかったところを見たことがない。「そうです、だから、私の配信には是非ともご協力ください」
そういって、僕に顔を近づけてくる。
その勢いにたまらず間の抜けた相槌しかできなかった。
「き、機会があれば」
「では私は、情報集めにいってきます」
そういうと、短いスカートを翻して生徒会室から出て行った。
その直前に黄色いパンツが見えるのを僕は逃さなかった。
「ふふふ、後輩からも迫られて気分は悪くないだろう?」
「茶化さないでくださいよ、結局、ヒカリは何しに生徒会室にきたんですか」
「あの子もうっかりさんの様だね。そういえば、昨日あれから考えていたんだ。
それで、まずは校内の生徒陣に羞恥心を植え付けさせようと思っている」
「はい……ってさらっといいますけど、それ難しくないですか?
校内全体に魔法でもかけるんで?」
「まだそこまで、羞恥心のことを解っていない。まだまだ、実験が必要だ。その為には、ユウ君や私だけじゃだめだ。他にも協力者が必要だ」
「っていいますけどそんな都合よく協力してくれる人いるんですか」
「なあに、アテならあるよ、それも君の近くにね」
「まさかクラスメイトですか?」
「ああ、うってつけの子がいる、安心してくれ。君は私の指示通りにしていればいい」
「いや!指示って拘束魔法ですよね! もっと穏便にいきませんか!」
会長はそう言って、拘束魔法を唱え始めると僕と会長を繋ぐ魔法の鎖が浮かび上がる。
「大丈夫、優しくするから力を抜くんだ」
「か、会長、それ何か別の意味にきこえますよ!」
「いいから、私を受け入れるんだ」
会長は、僕を優しく抱きしめて、呪文を唱え始める。
僕と会長を繋ぐ鎖が赫く、一瞬だけ光った。
その状態よりも、会長と密着しているというだけで、緊張してしょうがない。
女性の柔らかさと匂いのほうが僕にとっては重要なのかもしれない。
「これ、何か起きたんですか」
「ああ、これで君は教室に戻ればいい。いけばわかるさ」
「わ、わかりました」
名残惜しくも僕は会長から離れ、教室へ向かった。
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