第1回戦 『祈り』

「おっと、最初の選手は朝斗まな選手の『祈り』だ!」


「現在の異世界物に対するアンチテーゼとして書かれたようですね。なので、異世界転生の作品でありながら主人公は強い状態でスタートするわけでもなく、ハーレムもなければ、スキルなどのゲーム的要素は排しています」


「それでは、試合開始のゴングが鳴った!」



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 今回、読ませていただいたのは朝斗まなさんの『祈り』です。キャッチコピーで分かりますが、作者様はなろう系、異世界転生系があふれている現在を憂いて、この作品を書かれたようです。ですので、そういった要素をなるべく排除して純粋な、そしてご都合主義のない異世界転生系などうなるか? と言った内容がこの作品で少しずつ描かれていきます。


 まず、ご都合主義が無いとどうなるかを簡単に紹介すると、


 ①主人公は言語が異世界人とすぐに通じない


 ②剣を使ったことがないのでうまく扱えない


 ③スキルなどの主人公を助ける要素はない。


ということですね。


 なので、現在異世界系でよく使用される設定がそのまま流用できないので、作者様がご自身でそうした設定を考えておられます。そのため、どういった世界か読者に理解させる必要もありますが、文中で程よく説明がされるのでそうした疑問に詰まることなくスラスラ読めるのではないでしょうか。説明臭くなく、説明不足にもならないこの塩梅は作者様の文章力と構成力あってではないでしょうかね。


 そして、物語としてですが主人公が異世界に飛ばされたらどうなるかと並行して、主人公が過去のトラウマと向き合うそうしたお話が盛り込まれています。設定としてのテーマと、物語としてのメッセージその両方がうまく共存している作品だと私は思います。


 これ以上、お話するとネタバレになってしまいますので、拳はこの辺で!

今異世界系に思うところがある人は一見の価値ありです。そして、私個人としては冒険が進むにつれて明らかになる主人公のトラウマとそれに対する主人公の心境の変化に注目してほしいです。


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「ここで試合終了のゴングが鳴った!結果は……」

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