虹の軌跡

第１章 出会い

第1話 新生活

「…さて、と」

虹太郎は辺りを見回し、忘れ物が無いか確認する。

今日から峰応(ほうおう)学園の１年生、高校生活の第一歩を踏み出すのだ。

既に制服に身を包み、あらかじめ用意したカバンには必要な書類や筆記用具が整頓されて入っていた。

あらかじめ用意を済ませながらも改めて確認する。

早起きしたにも関わらず、何度も確認するせいで、気付けば家を出る時間が迫っていた。

ガチャ

「お兄ちゃん、準備出来た？そろそろ時間だよ」

部屋の扉が開くと、赤いポニーテールの女の子が顔を覗かせた。

「茜(あかね)、ノックしてくれって言ってるだろ」

「もう３０分経つんだよ？早く行こうよ。お姉ちゃん先に行っちゃったよ」

茜と呼ばれた少女は虹太郎の小言には耳を貸さず、時計を見ながらイライラしている。

虹太郎「わかったよ。確認もしたし、そろそろ出ようか」

茜「うん。これからは一緒に登校出来るね」

虹太郎「これからは、って中等部の頃から一緒だったろ？」

茜「いや、前はお姉ちゃんも一緒だったでしょ。今年からお姉ちゃん、生徒会長になったから早く出ないとだし、１人で登校するのは寂しいでしょ？」

虹太郎「中３にもなって何言ってんだ。今年受験なんだからしっかりしろよ」

茜「むー。わかってるよぅ」

ふくれ面をしながらふて腐れる茜と共に、虹太郎は部屋を出た