09 Final Phase.

「お。来た来た」


「なぜ。なぜここにマンハントが」


「僕が呼んだもの。連絡しました」


 たじろぐ、警視庁の担当者。そして、盗人。


「いつ。いつからだ」


「最初からだな」


「うん。君が予算を盗んだ直後から」


 逃げようとする担当者盗人。マンハントに足を引っ掛けられて、転ぶ。


「これは参ったな。まさかマンハントとヒューマンドローンが組んでるとは」


「組んでいたわけではない」


「利害が一致してただけ、だね。それに、ふたりでバトルしてたのは事実」


「省庁間の連絡を引き裂く策も、バトルの一環ってことか?」


「お前がまさかヒューマンドローンのところに直接行くとは思わなかったけどな」


「五分五分ってところだね。それにしても、存在しない組織をでっち上げるなんてさすがだね。たのしかった」


「俺もだ。逃げ道を用意して自分のところに来させるとは思わなかったな」


 担当者盗人。地面に転がっている。


「さて。おまえは、マンハントとヒューマンドローンを同時に利用して、国家予算を倍増させようと企んだ。そうだな?」


「そうだ。マンハントが逃げきれば予算は丸々手に入るし、失敗してもヒューマンドローンが元本を回収できる。どっちに転んでも損のない資金洗浄になったはずなのに」


「おまえは、ばかだな」


「うん。この担当者はばかだよ」


 顔を朱らめる担当者盗人


 ふたりから、手をさしのべられる。


「俺とお前なら」


「僕と君なら」


「予算は二倍じゃない。四倍にできる」


 担当者盗人。さしのべられた手を掴んで、その状態でびっくりして固まる。


「四倍?」


「僕、マンハント、担当者であり盗人の君、そして元本。これで四倍。できるよね、マンハント?」


「ああ。そのために俺は来た」


「うそ。うそだ。国家予算を四倍なんて。そんなことが」


「やるぞヒューマンドローン」


「行くよマンハント」


『人工知能。起動します。無線機動独立警察走査ヒューマンドローンを開始』


「おっ。かっこいいな、それ。俺も何か名前付けようかな」


首狩マンハント、とか?」


「なんか語感が微妙だ。やっぱり名前をつけるのはやめとこう」


「あはは」

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