第71話 虐殺


 国王との話が終わった俺は虐殺に戻った。


 既に戦意喪失してようが関係ない。

 剣を捨てて手を上げようが、頭を下げていようが関係ない。


 手を上げて抵抗しないのなら心臓を貫く。

 頭を下げていれば踏み潰す。


 『死』以外は許さない。

 このクズ共を全員殺したとしても俺の気持ちが晴れるとは限らない。

 それでも、取り敢えず全員殺してから解消方法を考えよう。


 何とか抵抗しようと、剣や槍、魔法で対抗して来たが、二、三十程度のレベルの攻撃が俺に通用することはなかった。


 有益だったのは、風魔法を使ってくる騎士がいたおかげで風魔法を覚えることが出来た。


 攻撃力としては水より強いが火よりは下という感じだ。

 室内で使うに火よりも使い勝手が良かった。

 城内を火事にする予定は無いからな。


 抵抗しても降伏しても命が無いと分かると、逃げ出そうとするが、そんなことを許すはずがない。


 ヴンディルの采配で出入り口は全て封鎖してある。

 王族やその直属の護衛しかしらないような抜け道も全て対処済みだ。


 全員殺すまで終わらない。

 ゆっくりと楽しもうじゃないか。



 長い時間ゆっくりと城内のゴミを消していった。


 城の中にもう残って居なさそうなので、外に出ると、日が沈もうとしている時間だった。

 裏庭でアインス、フィーア、ヴンディルと合流した。


 俺を視界に捉えると、全員我先にと跪いた。

 一位はアインスで、ビリはヴンディルだ。


「掃除は終わったか?」


「はい、魔王様が第三騎士団長を捕らえていただいたおかげで問題なく終えました」


「死体となった者達を集めて処分している最中でございます」


「そうか。ヴンディルもよくやった取り逃した奴は一匹もいないだろうな」


「はい。問題ありません。捕らえた者達はどういたしましょうか?」


「あなたは何を言ってるの?」


 フィーアがヴンディルを睨む。


「魔王様は『皆殺し』と命令されたのですよ。捕らえるのでは無く殺すべきでしょ」


 ヴンディルは言い返そうとしたが、その前に声を発したのは後ろからだった。


「そうですよヴンディル。魔王様の御言葉は全て正しいのです。殺せと命令されたのであればその相手は殺されなければならないのです」


 シューネフラウだ。

 血の匂いが漂っているが、気にした様子も無く優雅に歩いていた。


 アインス達より前に跪いた。

 フィーアが何か言いたそうだが、俺の前ということで我慢していた。


「ですが魔王様。ヴンディルも考えあってのこと。捕らえた彼らは丁度第四騎士団の残りなのです。彼らには使い道があると思います」


「使い道か……そうか、なるほどそう言う事か」


「はい。彼らにはピッタリの役目だと思います」


「殺すことばかりに考えていっていて思いつかなかった。ヴンディル、良くやったな」


「え、あ、お褒めに預かり光栄でございます」


 ヴンディルは二人の会話のないようが理解出来なかったが、怒りを買わなかったことに安堵した。


「アインス、フィーア、後の片付けはお前達に任せる」


「よろしいのですか?」


「奴等を殺して多少は気持ちが晴れたが、こんなものかという感じでな。これ以上俺が殺しても晴れることはないだろう」


「かしこまりました。雑事は私達にお任せください」


「魔王様はこれからどちらへ行かれるのですか?」


「俺はこれからフラウと二人で話し合うことがある。フラウの部屋で話すから誰も近づけるなよ」


「そうですか……お供は必要ありませんか?」


「いらない。邪魔なだけだ」


「失礼しました」


 アインスは残念そうだ。

 こいつらとの時間はいつか作ってやるが、今は我慢してもらおう。


「行くぞ」


 俺はフラウを両手で抱えた。

 一般的にお姫様抱っこと言われている。

 フラウの顔は真っ赤だが気にせず、俺は光魔法で飛んだ。




 向かった先はフラウの部屋だ。

 特に荒らされた形跡は無かった。

 流石に命がかかっている間際で不埒を働こうなどと考える奴はいなかったみたいだ。


 俺はいつも通り豪華そうな椅子に腰掛けた。

 フラウはその前に跪いた。


「以前に伝えた舞台の準備にはどれくらいかかりそうだ?」


「すみません。今回の事態は宰相達の動きを予測出来ずに起きたことなので、多少の変更を余儀なくされました。準備が完了するまで最低でも三日は掛かってしまうでしょう」


「そうか、こうなってしまっては仕方ないが、発表は急いだ方がいいだろ」


「そうですね。急ぎ準備を進めます」


「だが、今夜は少し疲れた。休むから手伝え」


 俺はフラウの手を引くとベッドに横になった。


「そのまま大人しくしていろ。やはり男の心を癒すには女の肌が一番だ」


 俺は目を瞑り、全身の力を抜いていった。

 フラウがどんな顔をしているか知らないが、言われた通りに大人しくしていてくれている。


 身体を密着させているので、その柔らかさや暖かさが全身に伝わって来る。

 少しして俺の意識は眠りについた。

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