5分後に始まる純恋愛

西宮ユウ

憂鬱な朝

家からの通学路、道路側に咲いていたサクラも散り、段々と夏へと変わっていくのを物語る。

私は、中学卒業後、地元の高校ではなく、電車で通う距離の高校に入学した。

電車で約20分。最寄駅から学校近くの駅まで4駅。1駅辺り、5分で到着する。

朝の電車は、出勤する人や通学する人で溢れかえり、毎日満員電車だ。

そんな毎日に私は、憂鬱感ゆううつかんを覚えている。

地元の高校を選ばなかったのは私ではあるけれど、朝の満員電車がこんなにも辛いなんて思ってもいなかった。

正直後悔している。


しかし、そんな朝の満員電車にも1つ楽しみがある。


ある人を見つける事。


「今日も多いね」

「ほんとに。どうにかならないものなのかね」

この子は、入学式の時に友達になった薫子かおるこ


「あと一駅だから、もう少しだね」

「この20分が長いんだよね、ほんと」


学校近くの駅のひとつ前の駅に電車が停車し、半数の人が降車する。

そして、うちの高校の生徒が何人か電車に乗ってくる。


私の言うある人とは、この駅で電車に乗ってくる、一人の男子生徒の事である。


「実咲?ボーとしてどうしたの?」

「い、いや。何でもないよ」


私は彼の事を知らない。

同じ学校で、同じ学年という事は分かるけれど、クラスも、名前も知らない。

接点は何一つないのだ。


「実咲?着いたよ?」

「あ、うん!」


ひとつ前の駅から、学校近くの駅まで約5分。

そのたった5分が、私の楽しみなのだ。

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