第3話 僕の名はカカカ

 おかしいのは部屋だけじゃない。


 なんでおれは、裸眼でこんなに見えてるんだろう。これって考えられるのは、当たり前すぎるけど、夢の中?


 そうなると、やってみる事は一つ。そう「ほほをつねる」これしかない。


 ほほをつねった。痛い。当たり前か。でも夢は醒めなかった。


 痛みが足りないのかもしれない。机の引き出しにカッターナイフがあったはずだ。


 引き出しを開けてみたが、中は空っぽ。じゃあ、どうする? 机の角に頭を打ちつけてみるか。


 机の角を正面にして、ひざをつく。サッカーでヘディングするように、身体からだをうしろに反らした。


 いやいや、待て! これ、ただの自傷行為じゃないか? ちょっと落ち着こう。


 ……しばらく、座ったまま固まった。PCではない。おれが。


 これって、あれか? ラノベなんかでは、おなじみの転生ってやつ? 「転生したらスライムだった件」とか、有名なやつと一緒?


 部屋を見まわす。家具の配置は現実と同じ。手のひらを見た。手相も同じだ。この場合、転生したらおれだった、ってこと?


 それじゃ意味ないやーん!


 目の前を一匹のハエが飛んだ。本棚に止まる。


「アバダケダブラ!」


 指を差してさけんでみた。ハエはプーンと飛び去った。


 異世界に転生したのなら、魔法とかいけるかと思った。だが魔法も出ないらしい。


 いやいや、その前にハリーポッターの即死呪文を試してみるって、どうなんだ。おれの性格に問題ありだ。気をつけよう。


 さて、自分の情報は、どうやって見るんだろう。ゲームの世界なら、自分の数値があるはずなんだが。そう思った途端、視界の右下に小窓が開いた。


  名前:カカカ

  職業:勇者


 な、名前が! やっちまった。


 初期設定を打ち込んでいる時に、おれは「デーモン閣下」と入れたつもりだ。いやその、とっさに思いついたから。24時までに間に合わそうと適当だった。その最後の「閣下」と打ち込んだ所だけが入って、それも「カカカ」になってしまったか。


 それに職業選択も選ばず、最初に出てくる「勇者」のままだ。これでもし、おれが伝説となったら、こうなるわけだ。


「勇者カカカの伝説」


 ダセー! 思いっきりダセー!

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