パンドラ

阿佐ヶ谷ピエロ

 謎の少年

由美は、その日も、遅刻した言い訳を走りながら考えていた。ただの寝坊である事だけは寝坊常習犯のプライドにかけて言いたくなかったからである。

それにしても、高校生はなぜ、こんなに眠いのだろう。と、つまらない疑問を考えながら、やはりお母さんが急に体調をくずして看病していました。これでいける。

すぐにばれる様な言い訳が、今の寝ぼけている由美には、最善に思えた。

そして、おそるおそる教室の後側のドアから入っていこうとしたところで、担任の小園に簡単に見つかってしまった。

「おい! 三田村!! 」

あちゃー。最悪。「は、はい!!」

「早く席に付け! おまえの言い訳は、あとで、ちゃんと聞いてやる!!」教室が、どっと沸いた。

「ええ、これで全員揃ったな。では、本日から、みんなの友達となる、松平裕也くんだ。では、松平、挨拶よろしく。」

「松平裕也です。よろしく。」

由美は、風向きを変えてくれた、この転校生に、単純に感謝した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る