男の経緯
フラフラした足取りで家に帰ってきた。祖母は駆け寄り
「また始まったのかい?薬は?飲んだのかい?」
「ああ、大丈夫だ。副作用でバランスがとれないだけだ。もう横になるよ。心配かけたな。ありがとう。」
そう言うと自分の部屋の襖を開け、布団に倒れこんだ。
男は病んでいた。身体的には異常がないが心を病んでいた。
病名なんかよりこのぐちゃぐちゃな感情をなんとかしてほしかった。
耳鳴りがひどい。医者によるとストレスを感じると幻聴が聞こえるようになる。
それが特定のことであればなおさらだ。男は剣道を学生時代に習っていた。筋がよく、高校も推薦で入学を許されるほどであった。しかし、男の剣が通用するのは中学までだった。自分ができる努力はした。しかし、「才能」というあまりにも大きなものにぶつかってしまった。それは、男の心をへし折るには十分すぎる理由だった。
男は、だんだんと病んでいき、高校生活もまともに送れず、誰とも関われずに過ごすようになった。勉強で大学に進学にしたものの、親に病院を受診するよう言われ、精神科にいきつ
き、統合失調症であることがわかった。入院が必要なまでのことだった。大学を休学していたが、やむなく途中退学となった。
今となっては、話ができるくらいまで回復したが就職にも苦労した。
就職は東京まで出て行って、心機一転させようとしたが、またも病気が発病し半年で辞めてしまった。さらに男の不幸は続く。両親の他界である。交通事故だった。
心は、ぼろぼろだった。そんな俺を祖母は優しく迎えてくれた。
以来、俺は祖母のいる香川県に住むようになった。
「ばぁちゃんしんぱいしていたなぁ。」
俺は布団に横たわってボソッと呟くとそのまま眠りに落ちてしまった。
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