第12話 女王様作戦虚しく
結局ミラの作戦やるんかいって?
やってやるわよ!!
「ねぇ?ノアさん何か私に言うことはないのかしら?」
言えっ!愛してるとか言えっ!!
「えっ!?あっ…私の料理が不味かったですか?」
「そんなわけないわよ!美味しいわよ!間違ったからくすぐるわ!」
と脇をこしょこしょくすぐると
「あはは!お、おやめください!脇は!!」
何とか椅子体勢をキープしているがプルプルしている。
「もう!椅子なんだからしっかりしてよ!」
と身をよじると
「あっ…はっ…はい!!」
と赤くなっているようだ。
「ちょっと!私で変な妄想しないで!」
ペチリとお尻を叩くと
「うっ…」
とまた震えたからまた2、3発叩くとだんだんはぁはぁしてくる変態執事。くっ!変態ぶりじゃなくて何とか言いなさいよっ!!
「ほら!他に言うことはないの!?」
「えっ!ええと…あっ!すみません!お嬢様の髪を洗う特別な石鹸をつい私もこっそり使ってしまったことですか?疲れていてつい!申し訳ありません!」
「なっ!何ですってええ!」
ぎにゃーー!!いらない情報が出てきた!!
私はまたくすぐった。
「あははっ!だから脇ダメですって!」
「くっ!それじゃないの!!」
「ええっ!?……そんな…まさかでは私が以前食べ残したお嬢様のお食事をこっそり食べたことおおおお!?」
もはや話してる最中でくすぐった!!何で人の食べ残し食べてんのよこの変態!次から次へと私に隠れて何してんのよ!!
「はぁはぁ…」
と息を切らすノアさん。
なんとあっという間に30分経った…。
くっ!
と私は立ち上がり指を刺して高圧的に
「ふん!このお仕置きによく耐えたわね!流石だわ!この変態!」
と言い捨てて、ツカツカと部屋に戻った!
「……お仕置きというかやはりご褒美ですが…」
とボソリと彼が顔を赤らめ言っていたのは知らない。
*
旅行まで日にちも少なく、お嬢様ともそれが終わればこの夢のような生活も終わるだろう。私は悪事を通報され魔法省に逮捕監禁刑で一生出られないかもしれないし。
魔法省に押収されるのが嫌で子供の頃から描いていたお嬢様の絵を壁や天井から引き剥がしマジックポケットの奥に隠した。(私しか取り出せないようにした)
殺風景になった部屋で仕事をしていたりしたがお嬢様がまた変です。
いつからか不機嫌さ全開で私を睨みつけてゾクゾクするのも反対に何か気に障ることをしただろうか?と考えるも思い当たる節が多すぎてどれかバレたのかと嫌われる変態要素を調べるが判らない!どれでしょうか?
そのうちにお嬢様が四つん這いになれと申されるので私は驚きつつも従った。まさか鞭打ちか!?お嬢様の手で?
あの竜人族に打たれた時は何の快感も無かったのだが…お嬢様にやられるのとでは全然違うだろうと期待に胸を膨らませたが、あろうことかお嬢様が私を人間椅子にして背中に座られるではないか!!?
一体これは何のご褒美なんでしょうか!?お嬢様の形の良いお尻が私の背中に乗ってるなんて!もうもう私は快感で死にそうなんですけど!!
おまけに何か言いたいことがあるでしょう?言いなさいと言うので、ああ…やはり日々の私の変態行為の一部がとうとうバレたのかと白状していくと違うと言い、くすぐられたりする!脇はやめてくださいお嬢様!人間椅子が崩れ落ちます!
何とか耐えて次の失態を暴露すると今度はペチリとお嬢様の可愛い手が私のお尻をーーー!!
…もうダメです。私はなんとか気力を保ちつつも昂る何かが爆発しそうです。しっかりするんだノア!自我を!理性を失ってはいけない!!
すると30分経ったのかご褒美タイムが終了してお嬢様は捨て台詞みたいなのを残して部屋に入った。
一体何の時間だ!?
「……お仕置きというかやはりご褒美ですが…」
出来ることならもっとお仕置きされたいと興奮冷めやらぬ中、先程のお嬢様を思い出して赤くなった。
*
それから仕事から帰るとお嬢様は腕を組んで待っていた。どうもまだ何か機嫌が悪いようだ?
「お嬢様…ただ今帰りました。直ぐにお食事を…」
とキッチンに向かおうとする私を…
「ノアさん!旅行に着ていく服が普段と同じとか嫌なんだけど!?貴方ってほんと気が利かないわ!」
と捲し立てられた!
「すみません、お嬢様…明日の帰りに買って参ります!!」
これはうっかりしていた!確かに旅行に行くのに買っていなかったではないか!女性だし、いろいろ入用の物もあるだろう。
あのヤリ●●野郎の仕事がこっちに多く回ってくるので最近は捌くのが大変で新人を雇ったのだが、その新人がドジ過ぎて何回も同じことを教えるのに疲れ果てていたのだ。
「他にご入用のものがあれば…」
と言うとお嬢様が私をキッと睨みつけ
「今日もお仕置きだわ!!」
「え?」
思わずゾクっとした。
「腹立つから今日は貴方メイドに女装してお料理作りなさいよ!!」
と命令される。
「えっ!?メイド…ですか?」
「そ、そうよ!私の言うことが聞けないってことはあれなんでしょ?」
「は?あれ?」
「とっ!とにかくメイドになりなさいよおおお!」
と言うので
「判りました。変身魔法でメイドになりましょう」
「へ?」
ポカンとしたお嬢様。私は変身魔法で女になりメイドになった姿を見せたら、お嬢様は驚いて私を見た!!そして怒った!!
「なっななな!何なのよ…それ…」
「お嬢様??」
「にゃはははっ!!従者超美少女メイドにゃ!乳もご主人よりデカイにゃ!!こりゃご主人負けたにゃ!!」
「うるさいのよっ!ちょっと!その服私にも貸してよ!!」
とお嬢様がせがむので私はお嬢様の服を魔法でメイド服に替えてやると卒倒しそうなくらいの美少女メイドが目の前にいて気付いたら私は鼻血が出ていた。
「鼻血じゃなくて言うことあるでしょおおおおおー?」
と聞こえたが、あまりの可愛さに一瞬気絶した。
ともあれ、お嬢様が私に何か吐かせたいものがあるということは何となく察した。
どれだ!?
どれだ!?
この前洗濯の時にお嬢様の部屋のシーツを抱きしめて嗅いだことか!?私の下着と一緒にお嬢様の下着も洗濯してしまったこと!?お嬢様の髪の毛を拾い集めてコレクションしていること?それともアレとかアレとかアレか!?
それらを人間椅子になりながら今日も白状して行くとお嬢様は青くなったり赤くなったりしている!ひょっとして知らなかったか…。
くっ!?なら何なのだろうか?
「お嬢様…一体私に何を言わせたいのですか?思いつく限り私の悪行を白状したのですが!!」
もう明後日は旅行だしこのような険悪なままでは気分も晴れないだろう?せめて楽しい思い出を作ってからお嬢様を自由にして差し上げたい…。
なんとか機嫌を治してくれないだろうか?
「お嬢様…至らないところがあるなら言ってください!!」
「何でなのよ!最初はよく言ってたのに!……ノアさんはやっぱりさっさと私をポイしたいのよ!!」
は?ポイ?
「くっ!!ノアさんなんか!!嫌いよっ!!」
と言われてショックの雷が私に走る。
そして泣きながらポカポカとあんまり痛くない叩かれ方をする。困惑した。
「お嬢様…泣かないでください、私が悪いのなら謝りますから…」
と膝をつくと
「きーっ!!何で謝るのよ!!」
とドンと押されて私は床に転がった。
その上をお嬢様が跨りポカポカとまた叩いた。
い、一体どうしたんだ!?お嬢様は!?あんまり放っておいたから暇で怒ってしまわれたのかもしれない!?
それならチェスでもトランプでもお相手をするのに…。
「ううっ!わ、私の絵も全部外してるでしょ!?」
それに驚いた。え?何故絵を外したことを?だが、何故それでお嬢様が怒るのかさっぱり判らなかった。
「えっ…あっ…あれはその…」
お嬢様は震える声で
「もっ…もう私なんか興味なくなったのね!」
と言う。そんな…バカな!お嬢様にどれだけ私が執着していると思うのか!?あんな変態行動まで白状させられて興味がないわけないでしょう?と言おうとしたが思わず止まった。
涙に潤んだ翡翠の目が合い、お嬢様の漆黒の黒髪が顔にかかった。
瞬間お嬢様の両手が私の頰を包み込みその可愛い唇が私の唇に触れてしばし時間が停止してしまった…。
*
「何か…言うことはあるかしら?」
と唇を離して恥ずかしくなり言った。
…ええ、結局ミラの言う通りキスをすればイチコロと言うのを実行してみたわ!!
流石に靴を舐めろとは言えなかった。
「……………や…」
「や?」
「柔らかいです…」
と赤くなりノアさんは少し目線を逸らした。
おー…違ーう、感触とかいいんだよ!欲しいのは言葉だ!!はよ言え!!!言わんかい!!
するとノアさんは私の頰に両手で触れた。
今、お互いがお互いの頰を掴んでいた。
至近距離で蒼い瞳に囚われ流石に私も恥ずかしくなり赤くなる。
「も…」
「も?」
ノアさんは真っ赤な顔でゴクリと喉が鳴り
「も…もっと…お嬢様をか…感じたいです…」
と凄く恥ずかしいことを言われて、ドキドキした。ち、違うし!い、言って欲しいのそれじゃなくて…。
貴方が好きとか愛してるとか言わないとこっちもその後養ってください!お願いします!!お金も家事もできないんです!とか頭下げれないじゃない!!
と思ってる間にもノアさんが顔を引き寄せる。
ああ、ダメ!こ、このままじゃ…。でも高鳴る胸が止められずにいる。も、もうこのままヤラれてもいいかも…。
と凄いいいところで何かが結界に当たった。
グシャリ!パアアアン!!
という何かの潰れた音や弾けた音がしてギギギっと首を窓に向けると結界に当たった動物か何かの血がスプラッタモザイクもので飛び散り私は
「ひぎゃ!!」
と思わず飛び退いた。
そして暗闇から白い髪の毛で赤と金のオッドアイが現れ、背中に翼の生えたあのオッサン美少年王子が怒りの形相で手にはこれまた動物の生首…もはやモザイク処理したものを持ってこちらを睨んでいた!!
ノアさんは立ち上がり
「やれやれ…以前の位置から丁度裏側の地点まで移動したというのに、転移魔法も使わずによくここまで追いかけて来たものです。竜人族の魔力とは恐ろしい…」
いや、お前もだよ!!裏側に移動って!!
するとオッサン美少年は結界をいとも容易く割り、玄関を打ち破り入ってきて…
「姫!ようやく言葉を話せる魔法を習得したぞ!!」
と今度はなんと言葉が解る!!
「えっ…」
「ああ!やはり姫の言葉が解る!名はなんと?僕はラディム・オーケ・ヴェンネルバリだ!地下に隠れて棲む竜人族の王族であり王太子だ!姫を連れ戻しに参った!」
「つ、連れ戻しにって…あ、あの…私は」
「姫、名を教えていただけないか!?」
とオッドアイが私を真っ直ぐ見つめてくる!
「お嬢様!こんな色情魔に教えてはなりませんよ!」
ノアさんが庇うように前に出た。
「その男は何なのだ!?ただの貴方の従者ではないな!?先程キスをしていたのが見えたぞ!?どういうことだ?僕というものがありながら!プロポーズも受けてくれたのに!」
「は、はあ!?私はだから受けた覚えはないんですけど!言葉も判らなかったし!」
「だが、姫はあの時笑ってくれたではないか!!
あれは竜人族では了承の意だ!もはや私と姫は婚約したも同じだ!」
ひいいいいい!!そんなことになってるとか知らないいいいい!!
「何度も言ったが王子!貴方の勘違いです!お嬢様は貴方にただ拐われただけです!」
「お前は何なんだ!?何故姫とキスをしていた!?姫は私の婚約者だ!」
「私はお嬢様の忠実な犬だ!キスはお嬢様からの寵愛だから…お前に関係ない!」
睨み合う美形と美少年!
ひええええ!このままじゃダメだ!大惨事だ!!ここで暴れるのはやめて!!
「姫!何故こんな男にキスを!?理由を述べよ!」
ひっ!凄い怖い!!
てか私オッサン美少年王子の嫁でもこの変態執事の嫁でもどちらでもなくない!?
しかもキスした理由を述べよとか!!恥ずかしくて言えるわけないでしょ!大体さっさとノアさんが好きとか言ってくれればこんなことには…。
「私の愛するお嬢様に近寄ると言うのなら殺しますよ!?いくら希少種の竜人族と言えども!」
いっ…今ああああ!?今【私の愛するお嬢様】とか言ったよおおおお!!何てタイミングが悪いの!!?こんな殺伐とした中じゃ養ってください計画は無理だわ!!
そもそもこの小屋の損壊が目に浮かぶ!!
そこで救世主が現れた。
白い毛玉をふさふささせながらその猫は堂々と言った!
「いい加減に煩いにゃ!!お前は何にゃ!!そこの従者に手当てを受けていたのにお礼も言わずに敵意剥き出しとは失礼にゃ!ご主人では丁寧な処置はしてくれないにゃよ!この見た目に騙されてはいけないにゃ!ご主人は中身ズボラの塊にゃ!」
ズボラの塊は余計だし、あんた私のこともう主人じゃないくせに…。
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