さよならの代わりに その2

 膝が震えるばかりで上がらない。腕も体を支えるので精一杯だ。


 うめき声を出しながら2階へ向かう。


 神社の大掃除がなんとか終わった。


 物をどかされた棚のちりほこりを一段一段、丁寧に小さなほうきで床に落とす。


 そうして幾つもの棚をスクワットみたいに繰り返した。


 今度は大きな箒で集めてごみ箱に捨てたら、最後に昔ながらの雑巾ぞうきんがけ。


 きしむ階段を上りきって一息つく。


 引き戸を引いて畳へあお向けに倒れ込んだ。


 辺りに漂う蚊取り線香と畳のにおいが心地良い。


 ――――あはは、お疲れさま――――


 倒れた僕の頬を彼女が撫でた。


 疲れを言い訳にしてされるがままになる。


 胸の内がくすぐったい。


 きれいな彼女の頬に手を伸ばした。


 目を細めた彼女の唇がゆっくりと動く。




 天井に向けていた目を左に傾ける。


 キャンバスが壁に立て掛けられていた。


 起き上がって確かめると裏に紙切れが貼り付けてある。


 それを剥がして夕陽に照らした。


 何が透けて見えるわけでもない。


 「またね……か」

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