子供心

 ここは田舎。


 毎年来ているから特に感慨は無い。


 玄関前で出迎えてくれた祖父母に精一杯の愛嬌を浮かべて挨拶。


 別に嫌いじゃない。ただ、素で接するというのはもやもやするから困る。



 近くの農家までお使いを頼まれたが、書いてある量が明らかに多い。


 1人で持てるかどうか。


 あの、と近くを通るおばあちゃんに場所を訪ねた。



 ……やはり多かった。


 重くて少し移動しただけで腕が痛くなる。


 これは小学生に持たせる量じゃ……ない。


 痛みに堪えかね袋を地面に置いて腕を休ませる。


 ついでのストレッチで上を見ると、木の枝に座っている女の子が居た。


 彼女の髪は風に吹かれ舞い踊っている。


 視線に気付いたのか彼女が振り返った。


 数秒見つめ合うと彼女がスルリと木から降りてくる。


 僕と荷物を交互に見た後、持とうかと彼女は言った。


 それを僕はどこか呆然とした風に頷く。


 彼女と並んで歩く帰り道。


 僕は初めての感覚に囚われていた。


 爆発しそうな程心臓がドキドキしている。

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