再会してそれから

 その後も二人は頻繁に会うようになった。

 再会した日こそお互いに名字で呼びあっていたが、すぐに打ち解けて名前を呼ぶようになり、敬語も使わなくなった。


 二人は気が合った。


 明里は、栞が話すことの一つ一つに感心し、納得し、心動かされ考え込む様子を見せた。笑う時には大輪の花が咲くようだった。

 興味を持ってくれるのが嬉しくて、ますます栞は明里に自分のこと、日々感じることについて話すのだった。

 昔ひどいいじめに遭ったことや親と不仲なことまで、気がつくと打ち明けてしまっていた。彼女は安っぽい同情の言葉を吐くことなく、ただ静かに聞いて手を握ってくれた。

 明里は積極的に栞の話を聞きたがった。同じ映画を観たり音楽を聴いて、どう思うかを質問してきては、栞の答えが自分と違う視点だと感動していた。

 栞にとって、自分に興味を持ち、丁寧に向き合って肯定してくれるのは、明里が初めてだった。

 それまでは、栞が話すことは大抵遮られるか無視されるか、嘲笑されるかだった。


 誰にも顧みられることのなかった栞が明里にのめり込むのに、時間はかからなかった。

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