俺が転生したのは横スクロールのクソゲーだった!

飛鳥休暇

ネタバレするとしたら1-1

 関西人の俺は、なんやかんやトラックにかれ、なんやかんや美人な女神に召喚されて、なんやかんやチートな能力をあげるから、なんやかんや世界を救えと言われて転生を果たした。


 しかし、俺が転生したのは横スクロールの世界だった――!!


 (ジャッジャーン!!)(派手な効果音)(タイトルロゴバーン!)(オープニングわちゃわちゃアニメ流れー!)


「いや、なんやこれ!!」


『このゲームをクリアすれば元の世界に戻してあげるわ。さぁ! 行くのです! 勇者よ!』


 頭の中に女神の声が聞こえる。


「いや、行けって言われても」


 俺は周りを見渡そうとするが上手く首が回らない。

 遠くに見える風景は何故かのっぺりとしている。


 すると突然、俺の膝丈ほどのタコみたいな気持ちの悪い化け物が現れ、こちらに近づいてくるではないか!


「うわ、なんやこいつ、気持ちわる!」


 俺は近づいてくる化け物を避けようとするが、よく見ると足元の地面は幅5センチほどしかなく、左右に避けようにも動きようがない!


 そんなことを考えているうちに化け物はどんどんと近づいて来て、ついには俺のすねに衝突した。


 ――その瞬間。


「ぐぁぁぁぁぁぁーーー!!」


 信じられない激痛が全身を襲ったかと思うと、目の前が真っ暗になった。




【――YOUユー AREアー DEADデッド】 



 気が付くとまた同じ風景が広がっていた。


「な、なんやねんこれ」


 動揺しているうちにまたあの化け物が近づいてくる。


「いや、ちょ、まっ! ぐぁぁぁぁぁぁーーー!!」




【――YOU ARE DEAD】




 気が付くと(以下略)


「と、とにかく化け物をなんとかしないと!」


 必死に身体を動かそうとするが、俺の身体は謎のファイティングポーズを取ったまま動かない。


「まずいまずいまずい!! あーーーー!!」




【――YOU ARE DEAD】



  気が(以下略)


「おい! 女神!」


 俺は空に向かって呼びかける。


『はい。呼びました?』


「はい、呼びました? じゃねーよ! これどうすればいいんだよ!」


 言い争いしている間にも化け物が迫ってくる。


『はぁ、仕方ないですねぇ。ここはゲームの世界なんですよ? とりあえず、心のBボタンを押してみてください』


「……はぁ?」


 何言ってんだこいt――



【――YOU ARE DEAD】




 気(以下略)


「おい! 心のBボタンってなんだよ!!」


『心のBボタンは心のBボタンですよ。……ほら、きちゃいますよ』


 もうすぐそばに化け物が迫っていた。


「ええい、ままよ!」


 俺は祈るような気持ちで心のBボタンを押した。



 ――ぷぃぃーーん



 気の抜けるアホみたいな効果音と共に、気が付くと俺は真上にジャンプをしていた。


 そしてそのまま足元まで来ていた化け物を踏みつぶす。


「……おお!」


『そう、それが心のBボタンです』


「だからなんやねんそれ」


 ともかく、俺はジャンプする方法を覚えた。


 続けざまに来たもう一匹の化け物もジャンプで踏みつぶす。


「なんとかなりそうやな」


 しかし、ジャンプは覚えたものの、身体は未だに動かない。


「おい! 女神!」


『はいはい』


「なんでちょっとめんどくさそうやねん。身体動かすにはどうしたらええんや?」


『そんなの心の右ボタンを押すだけでしょう?』


「皆さんご存知の、みたいに言うなや。心の右ボタンやな?」


 俺は心の中で右ボタンを押す。

 ちなみに、この段階で心に思い描いていたのは初期のファミコンのコントローラーだ。


 心の中で右ボタンを押すと、確かに身体が前に進んだ。


「おお! これでええんやな!」


 しかし、少し進むと今度は目の前に大きな穴が現れた。


「ジャンプで越えればいいんやな」


 ゲームで良く見る光景だったので、俺は軽く心の右ボタンと心のBボタンを同時に押した。


 だが、身体は向こう側には届かず、そのまま奈落の底に落ちて行ってしまった。


「うわぁぁぁぁーーー!!」



【――YOU ARE DEAD】




「おい! 女神!」


『なによ、もう』


「あの穴ジャンプで越えられへんやんけ!」


『当然でしょ? Xボタンでジャンプの距離延長をしていないんですもの』


「Xボタンだぁ? 先に教えろやそういうことは」


 言い争いをしつつ、ジャンプをしてタコの化け物を踏みつぶす。


 そして俺は心のコントローラーをスーファミのものへとアップグレードさせた。


「おい! とりあえず確認するぞ! 左右で移動、Bボタンでジャンプ、で、Xは?」


『ジャンプの距離がちょっとだけ伸びるわ』


「クソみたいな操作性やな! じゃあAボタンは?」


『パンチが放てるわよ』


 言われた通りAボタンを押してみると、確かにパンチを繰り出すことが出来た。


「おお! これで攻撃するわけやな!」


『いいえ。この世界にアナタのパンチで倒せる敵はいないわ』


「ほな、なんやねんこれ!」


『ちなみに、Yボタンは挑発よ』


「一番いらんわ! なんでヘナチョコパンチしか打てんやつが挑発すんねん!」


『そうだ! この世界はゲームだと言ったわよね?』


「おう、それがどうした?」


『ステータスオープン! って言ってみて!』


「おお! それ聞いたことあるやつやんけ! うし、いくぞ。――ステータス、オープン!」


 ――しかし何も起こらない。


「なんも表示されへんぞ?」


『そう、この世界にはステータスという概念はないの』


「ほなら言わせんなやっ!!」


『あ! そうそう! アナタにチート能力の話をしないといけないわね!』


「それや! なんか便利な能力があるんやろ?」


『アナタのチート能力は【無限残機FRe:なんやかんや生き返る】よ!』


「Re:って言うな。あと残機FざんきえふっていうのもストⅡみたいでややこしいねん」


『つまり、何度死んでもやり直せる最強の能力なの!』


「最悪やんけ」


 確かに何度死んでもやり直しは出来る。しかし、死ぬ間際の苦痛はそれこそ死ぬほど痛いのだ。

 あれを何度も経験すると思うと、俺は目の前が真っ暗になった。



【――YOU ARE DEAD】




「いや、今ので!?」


『気をしっかり持って! アナタの耐久は【トランスフォーマー―コンボイの謎―】並みなんだから!』


「クソゲーやんけ!!」



 ここから、作者都合めんどくさくなったによりダイジェストでお送りします。




 ・コンマ単位で調整しないと避けれない火の玉に苦戦する。

 ・隠し落とし穴とかいう初見殺しに苦戦する。

 ・アイテムを取らないと倒せない敵がいるのにそのアイテムが初期位置からちょっと下がった所に隠されている。

 ・集中力が切れて何でもない雑魚で死ぬ。





「はぁ、はぁ。なんやかんやあったけど、死に戻りのお陰でようやくボスまで来たぞ」


 もはや隠そうともせず死に戻りとか言っているがそんなことはどうでもいい。


 俺はついにボスの間まで辿り着いたのだ。


『がんばって! あと少しよ!』


「おう! ここまで来たらやってやるぜ!」


 目の前にはデカイ亀のような化け物がいた。


 唐突に火の玉を吐いてきたが、ここまでクソゲーを続けてきた俺には想定内の攻撃だった。


 ――そして。



「でやぁぁぁぁーー!!」


 大きくジャンプをした俺はボスの頭を踏みつけた。



 ――ピィウンピィウンピィウン。



 安っぽい効果音と共に、ボスの身体が弾け飛んだ。




「……やった。……やったぞー!!」



 大きく叫んだ俺の頭上に「STAGE CLEAR!」という文字が浮かんでいた。


 背景には何発もの花火が炸裂している。


「やった。これで元の世界に帰れr――」


 安堵した俺の目の前が暗転し、再び何かの文字が浮かんできた。





 【1-2 START】


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

俺が転生したのは横スクロールのクソゲーだった! 飛鳥休暇 @asuka-kyuka

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ