第7話 流転者狩り
「おいおい、ちょっと待ってくれよ。どういうこった? これは」
先ほど村の柵門に居た門番の男の前に、十数名もの騎士達が轡を並べていた。
「あれが調査騎士団か」
文鬼は窓からその様子を見ている。
「あの紋章は、間違いないね」
ノルンが傍らでそう答える。
文鬼はノルンへ視線をやった。
「以前、あそこの国で魔術顧問をやってたのさ。
調査騎士団の面々の事もそれなりに知ってる」
――なるほど。それで詳しいわけか。
外ではリーダーの傍らにいた騎士が進み出て、兜を脱いだ。
女騎士である。
「我々は《プロヴィデンスの目》所属の調査騎士団です。
女騎士は、よく通る声で門番の男に述べた。
「あんな事いってるけど……どうする?」
カティが文鬼を見る。
文鬼の答えはシンプルである。
「出よう」
「でも……」
手勢の数からして、ただならぬ雰囲気である。
「別に逃げる理由も無い。
このままでは村に迷惑も掛かろう」
既に入り口のドアへ向かう文鬼。
そこへノルンが声をかけた。
「だね。だが先にまず私に話をさせておくれ」
「それは構わぬが」
「なあに、悪いようにはしないよ」
文鬼、カティ、ノルンの三名の姿を認めると、女騎士は律儀にも再度あの長い宣言を始めようとした。
「我々は――」
「ああ、そちらの素性と目的は分かってるよ、お嬢ちゃん」
「おじょ!?」
威厳を示そうとした所に思いがけない呼び方をされて、女騎士の顔が引きつる。
それをよそに、
「マスター・ノルン師とお見受けする」
ノルンの顔を見て、リーダーの騎士が馬上から声をかけた。
「おや、そっちの子は私を知ってるようだね」
騎士は馬から降りて、兜を取った。
金髪碧眼の端正な顔立ちだが、ひ弱な印象は受けない。
美丈夫、といった顔立ちの男だった。
「アンタは……」
その顔を見て、ノルンは若干驚いたようだった。
「まさか団長に上り詰めてるとはね」
「いえ、まだ副団長です。
団長はもう一方に当たっておりますので」
「もう一方?」
「おっと、ご存知ありませんでしたか。では忘れて下さい。
関係のないことですから」
「……」
「師匠、この人と知り合い?」
カティが横からノルンに尋ねる。
「顔を知ってる程度さ。
調査騎士団の中でも特に強硬派として知られた男でね。
この男が調査に赴いた
それで付いたあだ名が――"
「たまたま危険度の高い
それより――」
と、リーダーの騎士――クラウスは、文鬼へ視線を移した。
「
「ああ、
「ようこそ我らが世界へ。先ずはその兜を取って頂こうか」
やや間をおいて、文鬼は兜を取った。
周囲がざわめく。
ノルンも低く声を上げた。
「これは驚いた。人間ではなく
「
「人間から
やはり今回の
それでは、ご同行願えますかな?」
「どこへ連れて行く?」
「我らが騎士団の本部、
「そこでどうなる?」
「さあ?
我々の任務は身柄の安全な確保なので。
管理局に引き渡して後のことは
「拘束と調査さ」
そこへ、ノルンが口を挟んだ。
「さっき家の中で話したように、
「……」
クラウスはノルンの言葉を否定しなかった。
「では断る」
「……誤解があるようですが、これは
本来なら問答無用で排除される立場なのですから」
「保護は必要ない」
そう言い捨てる文鬼に、先程の女騎士が詰め寄る。
「これは西方都市国家同盟の第一種権限による命令です。
拒否は認められません」
「知らぬ」
「し、知らぬって……」
「いや、いい」
そこで、クラウスが問答を遮った。
「
そして、クラウスは文鬼へと向き直り、宣言する。
「
「ちっ……やはりそうくるかい」
ノルンが呟く。
しかし文鬼はやはり、動じてはいない。
「構わぬ」
「なんだって?」
「この世界の魔物とはもう
今度は人間の騎士がどれほどのものか、試そう」
そう言って、文鬼は兜を被り直し、騎士の前へ進み出た。
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