あなたの青春相談、お受けいたします。
@kouchan0910
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平成から令和へと年号が変り、誰もが『令和』という文字に慣れた世間。昔の学校とは違い、今の学校事情は問題が山積みであった。生徒の間でのネットも含めたいじめ、先生の体罰問題、不登校……などなど『現代の問題』として、もはや大人では解決できなくなってきているというか、解決をしようとしなかなっている。立場の問題やで大人は自分の身を守ることしかできない『無能』に成り下がっていた。そんな問題を解決するには、自分で解決するしかない。だが、そんな簡単に自分で解決できたら苦労しない。他の方法として、赤の他人に相談する。だが、これでも赤の他人に相談を受けて解決しようとは思わない。むしろ、見捨てるだろう。面倒事に巻き込まれたくない人が大半だ。しかし、そんな人達の中でも相談を受けてくれる人がいるのなら……。
赤石(しゃくせき)高校では、ある噂が流れていた。その噂とは、生徒が見れる学校掲示板のどこかに書かれている電話番号をかけるとどんな相談に乗ってくれる部活があると。その部活の名は『補填部(ほてんぶ)』。先生の間ではそんな部活は無いとはっきり言っているのだが、生徒の間では存在すると矛盾が起こっている。そんな補填部に繋がる情報は、電話番号が学校掲示板に書かれているというだけ。しかも、その情報が本当に正しいのかは自分の目で探さないと分からないらしい。こぞって、その番号を探す人もいるが中々見つからず電話番号なんて書かれていないのではと疑う人たちもいる。そんな秘密の部活『補填部(ほてんぶ)』を立ち上げた俺、橘川康太朗(きっかわこうたろう)はこの部活に入っているということを隠しながら、密かに学校生活を送っていた。これは、俺が青春を謳歌する物語……ではなく、青春したい学生を手助けする物語である。
朝の6時半ー。そんな早くに着いた俺は自分の教室の鍵を開けて、荷物を自分の席に置くき、早速体操服に着替える。今日の依頼は『自分がいるクラスの教室を綺麗にして欲しい』との依頼。クラスは1年5組。職員室に行く時に取り出した鍵を使って5組の教室を開ける。
「全く……よくもまぁ、こんな汚く。」
教室内では独特の悪臭が蔓延していた。マスクをしていても匂うということはマスクを外したら相当臭いだろう。しっかし……。
「誰だよ、ここでお盛んなことをした野郎は。」
真ん中の机の上、そしてその周りにはゴムみたいな避妊具があちらこちらにばら撒いていた。臭い原因はこの落ちてるやつからだ。……ったく、お盛んだなぁ。
「まずは換気だ!臭すぎる!」
全ての窓を真ん中になるように端と端に空気の通り道を作る。それを終えたあと、大きなビニール袋を取り出してまず目に見えるゴミを装着した軍手を使って取っていく。多少、水を触る感覚がするがいちいち気にしてたら拉致が開かないので素早く済ませる。その間、俺の自己紹介をしておこう。名前は先程言った橘川康太朗身長は178cmで、体重は56kgと少し。趣味はゲームと人助け。特技はどんなスポーツでもできることだ。人並みに。外見は、地味黒髪に地味な顔だ。まぁ、スクールカーストでは下の方の分類にいる人だと思ってくれればいい。
「ゴミを取り除いたら匂いはだいぶ落ちたが……くっせ!」
イカ臭いのと酸っぱい臭いのが交わってそりゃ…もう、すごい。後は、至って放課後にやっている清掃と同じ。机を後ろに送り、ほうきで埃などのごみも取り除いて、雑巾を使って拭いていく。朝から清掃はほんと心もスッキリする。
「それ……と。机を。」
机を前に送って、後ろを掃除して雑巾掛けをする。これを全て終わると元通りに机を戻して整える。そして、最後にこれは依頼者からいただいた置き型ファ◯リーズと消臭スプレーを吹き、掃除を完了する。
「はぁ。ようやく終わり……。時間は……ん。7時半余裕だな。」
それと同時に教室のドアを開く。男性の方が少し申し訳なさそうにこちらを見ている。
「あ……ありがとうございました。」
「あ、依頼主の方。」
そう、今回の掃除の依頼はこの男性。体つきが良くて、スポーツをやっていそうな体だ。坊主からして野球部だろう。
「すいません……わざわざこんな朝早くから。」
俺は、水筒のお茶を一口含みごくんと音を立ててのむ。
「いいえ。これが、『補填部』の活動ですから。それと、あんまり学校でのいかがわしいのはやめてくださいね。」
「すいません……本当にやってみたかったって彼女が……。」
彼は彼女持ちでお互い性欲がとても強いとか。なので、子供はみちゃダメな漫画のシーンをやってみたいことがきっかけで俺のところに依頼をしてきた。まぁ……お盛んだなぁ。
「一応、すべては片付けましたがやはり匂いが消えているかどうかは分かりません。」
「そうですか……。」
「ですが、
「え?どうして言い切れるんですか?」
「……学校は公共の場。こんな臭い匂いなんてもんは日常茶飯事……って考えるからですかね。実際、僕もそうだと錯覚します。」
「は、はぁ……。」
心配な顔をするならここでやるなよ……って言いたいが赤の他人にそこまで言う義理はない。
「じゃ、俺はここで。」
「はい、ありがとうございました。」
「それと、俺のことは口外にはしないようにお願いします。」
「わ、分かりました。」
ゴミ袋を持って、依頼者にこんな言葉をかける。
「あなたの相談、お受け致しました。」
補填部を結束させてから、依頼者に対していつもの言葉をかける。そのあと、教室を後にする。……早く、ゴミ捨てよ。
「ぐへっ………。」
ゴミ箱を学校の指定されたゴミ捨てに捨てた後、俺はぐでーっと机にひれ伏す。早朝に掃除という、とても重労働をやったのだ。誰もいない間こうして、だらだらとしたい……。
「おっはー、康太朗!」
勢いよく教室に入ってきたのは親友の小渕琢磨(こぶちたくま)だ。サッカー部のエースで、茶髪のイケメン男性。スクールカーストでは上位の方にいるのだが、下の方にいる俺に周りを気にせずに話しかけてくる。
「……相変わらずうるせぇ。」
「んだよ、朝からつれないこと言うなよ!」
「ぐへっ!」
背中を思いっきり叩かれ、むせる。ったく、労働終わりの人にちょっとは親切にしやがれ……。
「また補填部の依頼か?」
伏せていた体をあげて周りを確認する。
「……デリカシーのない野郎だな。クラスメイトが聞かれてたらどうすんだよ。」
「いないからこうして言えるんだろう。」
「はいはい。そうですよ。」
つい、怒ってしまったが俺は冷静になる。俺が補填部を秘密にしている理由は『裏から支える』というのを目標にしているから。そりぁ、表沙汰になってしまったら『補填部』が存在している理由がない。それと……何故こいつが知っているのか……単純にバレたからだ。ある女の子から『告白がしたいから小渕君が私のことが好きなの確認して欲しい。』という依頼で小渕に接近したが、『お前……怪しい。』と疑ってきたので諦めて自供……って感じ。それでバレた。まぁ、親友だからバレても良かったけどなぁ……。言いそうな陽キャだからバレたら困ると思ってたんだが、性格上秘密のことは絶対守ってくれるから安心だ。
「何の依頼?」
「掃除。他の生徒が来るまでやっといてっていう依頼。」
「はへぇ。しんどくないのか?」
「清掃活動は基本だ。慣れたものだ。」
「補填部を作ってから1人で頑張ってんなぁ。他の部員とか集めなくていいのか?」
「集めるも何も、1人でやるからこそ意味がある。他のやつを勧誘する気はない。お前以外。」
「まぁ……俺は人数調整のためだっけ?」
「そう。部活成立は最低でも2人でないと成り立たないからな。」
この学校の部活は、部員の2人の生徒と顧問の先生の合計3人によって初めて部が作れる。誰でも部活が作れるのだが、中々簡単に作れるわけがない。部の活動内容や、学校への貢献度……その他もろもろ。その内容を校長に提出して初めて部活動が成立する。だが、秘密裏にやりたい俺にとっては嫌な条件だ。そこで、俺は部活動を『ボランティア部』として提出して、『名前に基づいて活動している。』と言うことになっている。だから、先生も『補填部という部活は存在しない。』と言えるのだ。まぁ、何が言いたいかというと見た目では『ボランティア部』という部活動だけど実際は『補填部』として活動してるよって話。
「俺も入ろうかなー。補填部。」
「辞めてくれ……俺の唯一の生きがいが……。」
そんな話をしてると他のクラスメイトがドアを開けて入ってきた。あまり話したことはないのでどういった人物か知らない。
「じゃ、今日も1日頑張るか。」
「そうだな。単位取得のためにな。」
まぁ、ほとんどの授業は寝るけど。これが俺流の日常だ。
4限目の授業がなんだかんだ終わり、昼休みに入る。この時間が最高に楽しい時間だ。まぁ、ずっと寝てたから少し体が疲れる。背伸びをして体を少しほぐす。
「お前……授業中に寝てたから、結構注意されたのに無視してるとかすごいな……。」
お弁当を持って、俺の席の前の椅子に座る。他にも友達がいるのに昼ご飯の時は絶対、俺と食べている。まぁ、親友だからとかの理由だろう。
「ここの先生の授業クオリティ低すぎて逆に頭に入らないんだよ。」
「すげー、毒舌。でも、お前相変わらずテストはいいからな。」
そう。授業を聞いていないのに、テストではいい点数を取れる。その理由は家に帰って、こいつのノートを見ながら独学してるってのもあるけど、なんせ通信制の塾を受けて、先の先の勉強をしているから。そのおかげで、学校の授業はいわば復習。頭にもすんなりと残りやすい。
「テスト制度とか廃止して欲しいしな。」
「なんで?」
「点数つけて、差別するってのが嫌。」
「俺は別になんとも思わないけどな……。」
テストのことで話を盛り上がっていると、右ポケットに入ったガラケーが鳴る。音は出ず、マナーモードにしているのでバイブレーションが右太腿に伝わる。
「依頼だ。こんな時間に珍しい。」
「珍しいのか?」
「あぁ。放課後とか夜とかに電話が来るのだが……。」
「なんか事情があるのかもな。出るなら出たほうがいいだろ?」
「ちょっと席はずすわ。」
教室を出て人目のつかない屋上へと向かった。
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