第2話:宣戦布告

 私は万が一にも失敗しないように、万全の準備を整えました。

 私が失敗して殺されることになったら、御姉様の復讐をする者がいなくなります。

 二重三重ではなく、十重二十重に私が殺された時の策を施しました。

 いえ、御姉様の看病をしながら、着々と準備をしていたのです。

 御姉様の側を離れられないので、確実簡単に殺してしまう方法でした。

 苦しめて苦しめて、殺してくれと泣き叫ぶまで追い詰めるという、私の願いとはかけ離れ過ぎた方法でしたが、犬猫が助けてくれるまではそれしか方法がなかった。


「途中入学者を紹介する、ルイジア公爵家のケイト嬢だ。

 先ごろ病気療養のために退学したユリアナ嬢の妹だ。

 普通なら一年に入学するところなんだが、抜群の成績を挙げて飛び級で三年生となる、皆も精進して負けないようにな」


 何も気が付いていない、担任だという愚かな男が、私の事を紹介する。

 やろうと思えば、身分を偽造して入学する事など簡単でした。

 そうして密かに一人づつ殺していくことも考えたが、それでは復讐にならない。

 御姉様の復讐をするために私がやって来た、その恐怖に震えてもらいます。

 御姉様の苦しみと同じ、いえ、何倍もの苦しみを味合わせるためには、正体を知らせて復讐するしかないのです。


「さあ、自己紹介と挨拶をしなさい」


 さあ、いよいよ宣戦布告です。

 万が一私が返り討ちにされた時には、御姉様のおられる離れだけは結界を張って、王都全てを紅蓮の炎で焼き滅ぼしてくれる。

 もしそれが防がれたとしても、王宮に疫病と毒薬を仕込んだ猛獣を放ってやる。

 それも防がれたら、王宮を奈落の底に落としてやる。

 他にも十七の攻撃を仕込んでいるから、安心して表に出て復讐ができる。


「はい、先生、今から自己紹介させていただきます。

 私は、ルイジア公爵家の次女ケイトと申します。

 先頃まで在学させていただいていたユリアナ御姉様は、皆様にとても御世話になったそうですので、その十倍は御恩返ししたいと思っております。

 特に元婚約者のガゼフ王太子殿下と、エリル侯爵家のルレリア嬢には、言葉に尽くし難い親切を頂いた事、よく知っておりますので、真心を込めて御恩返しさせていただきますので、お待ち願います」


 教室中が凍り付いていますが、それも当然でしょう。

 私が挨拶するまでは、壊れた御姉様に代わって公爵家を継ぐために、何も知らない私が飛び級を選んだと思っていたのでしょう。

 私が魔術気違いだというのは、社交界では常識ですから、御姉様の事は上手く言いくるめればすむと思っていたのでしょう。

 もしばれても、御姉様と同じように壊してしまえばいいと考えていたのでしょう。


「ああ、ケイト嬢の席は一番後ろだ」


 教室の異様な雰囲気に、愚かな担任がようやく気が付いたようで、とってつけたように席を知らせてきた。

 さて、定番の転校生いびりを今から始めますか?

 腐れ外道のガゼフ、尻軽根性悪のエリル。

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