第103話 元から絶たなきゃ駄目
「うえーん」
「うわーん」
「びえーん」
子供達が泣き声の大合唱だ。
「おー、よしよし。泣かないで」
妻の一人であるマクシリアが子供達をあやす。
「どうしたんだと、聞くまでもないな。俺も朝から悪寒が止まらない。この感じは負の魔力だ。またゴースト爆弾が草原に持ち込まれたか」
「さあ、パパの出番よ。悪い物を退治してきてよ」
「よし、行って来る」
俺はピピデとエリーズの国境に飛んだ。
「戦況は?」
「大規模魔法を撃たれて手も足も出ません」
敵の力の源を探るとゴースト爆弾を更に凶悪にしたものが配備されている。
あれが全ての元凶か。
崩壊してゴーストを吐き出していないのには驚いた。
ゴースト爆弾を安定化させて魔力の源に使うとはな。
だが、大規模魔法を使うたびに大地は負の魔力で汚染されていく。
「テラファイヤーアロー」
俺が魔法を放つと敵の大規模魔法とぶつかり大爆発を起こした。
くそっ、埒が明かない。
撃ち負ける事はないが、勝てもしない。
サバル国からの救援の戦車が到着する。
戦車に敵魔法が当たるが、吸硬メタルの装甲はびくともしない。
砲が火を吹き、段々とこちらが優勢になった。
あの元凶の大型黒デンチに砲弾が当たる。
やばい、ゴーストが溢れるぞ。
「懇願力よ、浄化の結界を張れ」
浄化の結界が大型黒デンチを包む。
駄目だ、持ちこたえられない。
結界はひび割れ、ゴーストの竜巻が発生した。
「退避!!」
兵士は敵味方問わず逃げ出した。
大型黒デンチの崩壊は進み、辺りはゴーストが吹き荒れる嵐になった。
くそっ、厄介な物を作りやがって。
「懇願力よ、壊れた大型黒デンチをエリーズに送り返せ」
大型黒デンチがエリーズ国に転移する。
奴らが作った物なんだから、奴らに対処してもらおう。
「うわっ、草原が汚染されちまったな。後始末が大変だ」
早くゴースト爆弾や大型黒デンチに対抗する策を練らないと。
そう言えば、エリーズ国に偵察に行った事がないな。
敵を知り己を知れば百戦危うからずだったっけ。
俺はエリーズ国に飛んだ。
うひゃあ、負の魔力だらけだ。
不浄な者が至る所で湧いている。
荒野でサイロみたいな物を見つけた。
見なくても中に不浄の者が詰まっているのが良く分かった。
これが黒デンチの元だな。
どうやっているのかは分からないがそうに違いない。
じゃ、懇願力でエリーズ国を浄化すれば燃料不足に陥るんじゃないか。
俺は地面に手を置いて。
「懇願力よ、大地を浄化しろ」
ありったけの懇願力を込めて浄化した。
作ってある黒デンチなんかは浄化されないが、追加で黒デンチを作る事はできないはずだ。
俺は良い気分で家に帰った。
Side:女神
うそっ、4か国目がいきなり浄化された。
どうなってるの。
「見張りの天使きなさい。報告を」
「はい、お呼びですか」
「シゲルの監視の結果を報告しなさい?」
「シゲルは神力を使って浄化したようです」
「えっ、不味いわ。神は直接力を使ってはいけないのよ。あれっ? 私が使った訳ではないのでセーフなのかな」
「それとシゲルは民の祈りを神力に変えているようです」
「それじゃ、神と一緒じゃない。なんで? きー、悔しい。私にはほとんど力が集まらないのに」
「便利道具を作ってシゲルの名前を刻んでいるようです」
「ずるいわ。私も神器や召喚陣を作ってあげたのに、なんで神力が集まらないのよ」
「人気の差かと」
「人間に媚びろというの。そんなのごめんだわ。いざとなれば創造神様に、シゲルが神力を地上で好き放題使っているって、密告しましょう」
そうだわ。
神託を下しましょう。
ええと、文面は『争いを辞めて負の魔力の浄化に勤めよ。でなければ天罰が下るであろう。女神ファルティナの名を讃えよ』で良いわね。
シゲルの台頭は不味いわね。
人間の祈りの力も馬鹿にならないわ。
自然発生した神を殺したら、厳罰は免れない。
デュラ国の大地はそれほど汚染されていないから、もう用済みなんだけど、今は機会を窺うべきね。
何か手を考えないといけないわ。
どうしたらいいかしら。
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