第102話 ゴースト爆弾

 サバル国の騒動は完全に落ち着いた。

 サバル国ではエリーズ許すまじとの声が上がっている。

 実際、戦車をヒースレイ国に派遣したぐらいだ。


 俺は暇になったので鳥さん達とリザの下にドライヤーのカデンを持っていく事にした。


「いらっしゃい、鳥さん。シゲルも来てたのね」

「酷いなドライヤーを持って来てやったのに」

「ありがと」


 次の瞬間、空気が震えて、大地が泣き叫ぶ声が聞こえたような気がした。


「なにかありましたの」

「ごめん、用ができた。鳥さんは置いていくから、遊んでもらえ」

「ならいいわ」


 俺は空に舞い上がり、現場を目指した。

 現場の戦場では戦車とヒースレイの兵士が逃げていた。

 何があるんだ。

 負の魔力が物凄く濃い。


 ゴーストの大群が戦車と兵士を追いかけて行く。

 いかん。


「懇願力よ、ゴーストを浄化しろ」


 ゴーストが溶けるように消えて行く。

 負の魔力の中心に行くとあの黒デンチの大型の物が壊れてあった。


 破裂するとこうなるのか。

 周りには生気を吸い取られて死んだ亡骸が幾つもある。

 黒デンチの大型からは今もゴーストが絶え間なく湧いている。


 これはゴーストを出し切ってからでないと対処できないな。

 仕方ない。

 ゴーストを消す為に懇願力で浄化の結界を作る。


 物凄く大地が汚染されているのが分かる。

 酷い事しやがって。


 一時間ほどでゴーストは打ち止めになった。

 大地を浄化して後片付けをする。

 大型デンチはゴースト爆弾だったんだな。

 厄介な物を作りやがって。


Side:女神


「うるさーい。せっかくいい気持ちで寝てたのに。誰よ起こしたのは」


 騒音の発生源を探る。

 物凄く汚い物があった。

 うわっ、なんて物を見せるのよ。

 あー、やだやだ。


「あれっ、浄化された。大精霊が近くにいたのかしら」


 あれは、あの男じゃない。

 何だっけ、シゲル・リョクテだったような。

 ふふふ、計画通り精霊になったのね。

 でも、精霊力はそれほど感じられない。

 浄化して弱ったのかしら。

 あれっ、給与が物凄く高い。

 天使が勝手にボーナスでも出した?


 ええと、神器の2個目が奉納されてるだけね。

 何でしょ、おかしいわ。

 うそっ、神が勝手に生まれている。

 シゲル神ってなんなのよ。

 シゲル神ってシゲル・リョクテの事よね。


 どうしてこんな事に。

 こういう分からない事態になった時は、上司である創造神に相談だったわよね。


 不味い、それは不味いわ。

 さぼっていたのがばれてしまう。

 怒られるのならともかく人間に堕とされる罰を食らうかも。

 隠蔽しないと。

 下界の生き物を直接殺すと、規則違反で洒落にならない事になる。

 シゲルは今、3国を支配下に置いているのよね。

 おまけに3国は大地の浄化済み。


 なら統一した時に排除すれば良いわ。

 そうしましょ。


「誰か」

「はい、女神様。御用ですか」


 天使が一人現れてかしずく。


「神が発生しているけど、理由について心当たりは?」

「分かりません。神の発生は今、聞きました」

「大地の浄化はどうやってなされたのかしら」


「監視はしておりませんでしたので、分かりません」

「使えないわね」


 シゲルを観察する。

 あれっ、精霊力は使ってない。

 消費しているのは魔力だけだわ。

 ひょっとして魔力だけで浄化した。

 そんな馬鹿な。

 魔力量は人としては多いけど精霊としては少ないわ。


 推測したが、結論は出ない。

 嫌な予感がするのよね。


「シゲルを監視しなさい。何か変わった事があったら報告するように」

「はい、かしこまりました」


 シゲル、あんな奴を神だと認めたくないわ。

 人間なのに私と同列なんて、絶対に認めない。

 認めてなるものですか。

 だけど、統一させる駒としては使える。

 異世界人で国を手に入れた人間はいないわ。

 それも3国も。

 必要悪ってところね。

 まるで負の魔力みたいな。


 私が清浄な魔力であいつが負の魔力。

 やだやだ、対等じゃないのよ。

 こんな想像は、やめやめ。

 あいつは道端の糞で私は空の雲。

 これなら良いわ。

 最後は雨を降らして洗い流してしまいましょ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る