第100話 災害

「大変な事が起こったぞ。間者からの報せでは、黒デンチから不浄の者が湧いたようだ」


 ランドルフが駆け込んで来た。

 やっぱりな。

 そんな事だと思ったよ。


「修正パッチを沢山作っておいて良かったな」

「もう、ピピデの代理店には配ってある。シゲルラジオで通達を出せば使われるはずだ」

「ひとっ飛びして、状況を見て来るよ」


 俺はサバル国まで飛んだ。

 街に行くと街はゴーストで溢れかえっていた。

 寄るな、うっとうしい。

 修正パッチをかざすと浄化されゴーストが溶けるように居なくなった。


 浄化しながら発生源を探る。

 発生源はある家のリビングだった。

 カデンが置いてあり、動力として黒デンチが入っている。

 その黒デンチからゴーストが湧き出ていた。

 修正パッチを黒デンチに触れさせると黒デンチは浄化され魔力がない状態になった。


 通りに戻るとゴーストの数は相変わらず減っていない。

 発生源は至る所にあるらしい。


「きゃー、寄って来ないで」


 女の人がゴーストに集られていたので、助け出す。


「ピピデ製品の代理店を知りませんか」

「それならすぐそこよ」

「じゃ、俺はこれで」


 代理店を訪ねる。

 代理店の中はさながら戦場だった。


「ゴーストが多すぎて修正パッチが足りない」

「ゴーストに触られると負の魔力に汚染されるぞ」

「平気さ。修正パッチを体に当てれば元通りだよ」


「何でもいいから修正パッチを探して来い。倉庫の隅にまだあるかも知れない」

「はい」

「とにかくゴーストを消しまくるんだ」


 修正パッチには負の魔力を浄化する機能を持たせたが、万能だな。

 売り物にしても良いぐらいだ。


 修正パッチに入っている清浄な魔力も無限じゃないから、いずれ効力がなくなる。

 これは修正パッチをもっと作らないといけないかもな。


「いらっしゃい。店はご覧の有り様なんで、申し訳ないが出直してくれ」


 店員が応対に出て来た。


「シゲルだ。修正パッチをこの場で作る」


「あなたがあのシゲル神ですか」

「挨拶は後だ。人員を集めろ」

「はい、只今」


 人が集められた。

 地球のホームセンターの木の板が適当な大きさに切り分けられる。

 それに魔力インクをつけた魔法陣の判子を押していく。

 こんな事もあろうかと、判子は日本の判子を作ってくれる会社に、発注しておいたのだ。

 生産ラインが安定したので、魔力インクを召喚。


 一瓶、手元に来たので次の街に飛んで行く。

 そこの代理店でも同じことをした。


 主要な街は回ったが手が足りない。

 仕方ない、対策を練る事にしよう。


「どうだった?」


 作戦室でランドルフが状況を聞いて来た。


「酷いもんだ。強力な不浄な者は沸いてないが、どこもゴーストだらけだ」

「修正パッチは順次送っているが、馬車で運ぶのは時間が掛かる」

「修正パッチの現地生産してきたが、街が多すぎる。とても回り切れない。農村に至ってはどれだけあるか。こうなったら国全体を浄化しちまおうか」

「できるのか?」

「やってみるしかない」


 サバル国に飛び、地面に手を置いて。


「懇願力よ。この国の全てを浄化したまえ」


 感覚では大地の浄化は成功した。

 しかし、空中にいるゴーストと黒デンチは無理だった。

 なんと言ったらいいのか、黒デンチは雑草のような物だった。

 除草剤を撒いたが表面しか枯れないみたいな感じだ。

 しつこく繰り返せば、浄化はできるが、懇願力が足りない。

 大地の浄化だけですっからかんだ。


 当分、ホームセンターの木も出せない。

 と思ったら、凄い勢いで懇願力が増えていく。

 国全体を浄化するには足りないが、木の板ぐらいは好きなだけ出せる。

 浄化の結果を報告しないと。


「浄化は駄目だった」

「そうか」

「一つ一つ潰していかないと。そうだ修正パッチには索敵機能がついてない。負の魔力センサーが作れないか」

「魔力の探知は昔から盛んに行われている。可能だが。あらゆる負の魔力に反応するのしか作れん」

「人なんかにも反応しちゃうのか」

「そうだな。魔力の強い物に反応する」


「それでも良いさ。マップに点が出るようなのを作れるか?」

「作れるな」


 負の魔力センサーの開発はすぐに済んだ。

 既存の技術だからな。

 マップに表示するのは常時魔法を展開しないといけないので、魔力を馬鹿みたいに食う。

 魔力デンチが無ければ無理な話だった。

 幸い、魔力デンチの材料の木の板はいくらでも出せる。

 配備も滞りなく終わった。

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