第72話 侵略
出来た砦から兵士が侵略してきた。
俺は手っ取り早く精霊砲で方をつけたかったが、ランドルフが任せてくれというので任せる事にする。
精霊達を通じて戦闘の様子を見た。
「ファランクスだ。陣形を崩すな」
敵は密集した陣形で突撃してくるようだ。
前面に槍を寝かせ後方からは弓なりに矢を射ってくる。
これって側面を突かれたら崩れるよな。
ラクーの部隊なんかに遊撃させたら楽勝なのではないか。
「側面、防御魔法を展開」
おお、側面は魔法で守るのね。
バックアタックに対する備えもありそうだ。
対するピピデの民は散開して十字砲火するようだ。
銃魔法は健在だ。
「鉄条網魔法、展開」
「引き付けろよ」
うわ、えげつないな。
教えたのは俺だけど。
魔獣を退治する時に防御する魔法があればと思って教えたんだ。
ストーンウォールの変形で、体積が少ないので省エネでもある。
敵陣形が鉄条網に触れた。
「撃て」
銃魔法が火を吹く。
「茨の防御魔法が破れません」
「圧縮して強固になっているぞ」
「うわっ」
「ええい、怯むな。釘の恨みを忘れたか」
釘の恨みって何だ。
釘で拷問でもされたのか。
まさかランドルフがやったんじゃないよね。
鉄条網に引っかかり突撃出来なくなった密集体型は十字砲火の良い的だった。
程なくして敗走していった。
四日後、兵士は砦に逃げ込んだのを確認した。
はいはい、俺達の出番ね。
「目標、砦。精霊砲、撃てー」
「アースコントロール」
「ボム」
「ウインドコントロールや。狙いばっちし」
砦が崩れたのが確認できた。
さあ、ランドルフ達の歓迎の準備だ。
ランドルフ達がラクーの乗って一人も欠ける事無く帰り、ラクーの乳酒で宴会が始まった。
「飲んでるか」
ランドルフが少し赤い顔をしてやってきた。
「飲んでるよ。ところで釘の恨みってなんだ」
「気にするな。逆恨みだ」
そうか、逆恨みか。
なら仕方ないな。
「サバル国はどうするかな」
「形だけ謝って終わりだろう。こちらも砦を容認したしな。それに、抗議なしにいきなり攻撃した」
「容認? そんなつもりではなかったが。抗議もなにも、攻められたんだから仕方ないよな」
「そうだ。仕方ない」
この話はもう止めよう。
「ヒースレイ国を農業大国にする計画はどうなっている」
「順調に進んでるさ。聖水も輸出しているし、負の魔力が濃い所も浄化され始めている」
「畜産の方は」
「年老いたラクーしか食わないなように通達を出した。後三年もすれば輸出できるようになる。餌になる牧草は腐るほどあるしな」
「問題はあるか」
「水の問題が、ちょっとややこしい。井戸の数は限られているからな」
「それはどうにも。ため池を作って、エーヴリンに満たしてもらいたいところだ。他にも手としては。ホームセンターの木片に、水が湧き出る魔法を掛けてもらうとかかな」
「それはお勧めできないな。水魔法は空気中の水分をかき集める。大規模にやると雨が降らなくなるぞ」
「それはちょっとな」
やり過ぎは不味いって事だな。
土魔法で井戸を掘るのが無難そうだが。
「井戸ではだめなのか」
「ああ、数を掘り過ぎると井戸が枯れる。結局、同じ事だ」
「なるほど、河から水を引くのが一番だな」
「大草原中に水路を作るのか。壮大だな」
懇願力でなんとかなりそうだが。
細かい制御は難しいんだよな。
水路って勾配も考えないといけないからな。
「無理みたいだ」
「ラクーの数が増えると早晩、井戸が足りない」
「そこで畜産に影響がでるのか」
「ヒースレイ国でも同様だ。農地を増やすには水の問題をなんとかしないと」
頭が痛い問題だな。
際限なく空気中から水を集められれば良いんだが、そんな事はできないよな。
懇願力の創造はかなり力を消費すると思う。
試してはないがそんな気がする。
「考えてみるよ」
「まだ時間はある」
水路か。
材料をどうする。
セメントを使うか、魔法で土を固めるか。
どっちも可能だが敷設には時間と試行錯誤の手間が掛かる。
結局そこか。
ランドルフが死ぬまでに問題が解決しない可能性があるな。
俺の寿命は未知数だから、間に合うかもしれないが。
そんな気の長い事は言ってられない。
農家にこんな問題を振る事が間違っている。
こんな問題は忘れよう。
止めだ、止めだ。
Side:サバル国の元釘職人
俺達はピピデの奴らに鉄槌を下す為に砦に入った。
目に物見せてやる。
緑少ないサバル国を出て、緑溢れるピピデの国に足を踏み入れた。
ピピデの奴らが大人しく俺達の製品を買っていればこんな事にはならなかったんだ。
奴らの首都まで行って奪うんだ。
途中、待ち伏せされて、奴ら筒から鉛を打ち出す道具を使ってきやがった。
正直言って、手も足も出ない。
「撤退。撤退」
撤退を呼び掛ける声が戦場に響く。
砦だ。
砦に逃げ込んでそこで奴ら叩こう。
俺達は砦に向かって敗走した。
みじめだ。
負けるってのはこんなにも悔しいのか。
なんとか砦には逃げ込めた。
突如轟音と共に砦が崩れ落ちた。
何だよ。
何が起こった。
反則だろ。
こんな攻撃を持っているなんて知ってたら手を出さなかった。
しかし、正義は俺達にある。
そのはずなんだ。
それを知らしめしたい。
それの何が悪いんだ。
俺は失意のまま家に帰った。
「なあ、鍋屋の。俺はなにか間違っているか」
「変化ってのは常に起こっている。不条理だと思うだろ。なら、ピピデの国に苦情を言ったら良い。お前の間違いはそこだ。ますば話し合いでなんとかする。それが人間って物だ」
「俺、相手の国王に手紙を書くよ。あんたに迷惑を掛けられたってな。そして、聞いてくれないようだったら、また戦いに行く」
今度こそ、俺達の正義は通るはずだ。
そうに違いない。
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