第2話 お願い潮風

チップスターの袋を剃刀で切ると骨まで刃が食い込んで少し困る。台湾ティーと塩が舌を焼くから梟の首をとっ捕まえて捻ったらねちゃりと音を立ててねじ切れた。一体どうすればよかったのか分からなくなって硝煙を子宮の奥に押し込んだ。割れたCDケースの中身が違う。手が湿って何故か無性に腹が立った。



眠たい目をこすって暑い苦しい鰓が欲しい鰭が欲しい人魚になりたいといえど水の中の酸素だけでは足りないくらいに強欲に醜くできている四肢は服が濡れるのを恐れて一つずつしか塩温いそこへ浸からないけれど遠くでごろごろと鳴る入道雲が淡くライチみたいに光るからしょうがないじゃないですか、先輩。



ごつごつとした岩の上はがくがくの僕らの足を受け入れなかったし先輩は横に倒れふしててる幼稚な学生共だけどそれよりラムネの瓶がプラスチックになったことの方が僕らは気に食わなくてもう鳴らなくなった蝉の声がゲリラ豪雨のお知らせだなんて言わないでね哀しいじゃない雷に撃たれてこれきりだなんて



死体だと思ってた蝉をサッカーボールにして遊んで手痛い反撃を受けた話は初耳だけど貴方が甘いものが好きなことは何となく知ってたよでも何度も言うけど生クリームは苦手なんだ一人でよく食べたね待ってよ海に先に貴方が入っちゃうから僕入れないじゃないタオルを引っ張り出して足を吹く人が必要でしょ



証明写真機を二人で挟んでることに気づかず先輩どこにいるとチャットを打って七時間後私バスの中でフリーWiFi噛みちぎって眠ってるよ三本目のサイダーは塩辛くて温くて一番美味しかったけど私本当に900円のうどんセットじゃなくて古い自動販売機のカップラーメン先輩と食べたかったんだ変わらないでね



今少し泣きそうなのは先輩が水族館の鮪の大きな水槽の前で首を此方に擡げたせいで実はマスクと注意書きがあってよかったように思うな見つけた水鉄砲買ったらもう終わりだもん日本で二番目に高い空の上に行かせてくれたのは先輩だから僕は脳を齧る蝉の音が貴方の言葉を邪魔する案内アナウンスが嫌いだよ



ひっくり返ったシャワーや生返事に疲れていることは分かってるけど僕もだいぶ疲れてるんだ寝てもいいよ楽しいとこだと置いていって不安にさせちゃうかもしれないけど今は喫茶店の自動販売機も硝子玉欲しさに割られた硝子のラムネ瓶も二度とないから今この時を楽しみたいんだ50円以上のお釣りがくるから



水族館の周りを大きく回って歩き損した後も思ったより小さな向日葵を見た後も貴方は笑ってたから言わなかったけど二度とこんなに楽しいことは無いからまた外に出たくないなって思ってたんだでも一番最初に取り逃した蟹を今度こそ捕まえに行く貴方を秋頃に見るのも悪くないように思えてきたんだバスの中



痛いなと一人お風呂場を眺めて靴下を脱ぎ塩と水に漬かり溶けた拇の爪に若干納得する人魚にはなれないし泡にもなれない最新鋭のごろごろ鳴る不躾な夏を飲み干しておかわり二回お財布の中小銭が顔を見せなくなってもチケット自分の分買わせて貰えなくて不服な顔と苦笑い眼鏡の男は駄目なんだ今思い出した



炎天下溶けた頭じゃ直ぐ記憶が消えてく待ってまだ夏休みは終わってないから磯の香りと数枚の写真だけ残して消えてかないで声を覚える為に塞いだイヤホンの充電が切れるのが温度のせいなら全部殺して海へ沈めて小瓶みたいに思い出せるようにしたいな消えた望遠鏡に入れる筈だった100円玉どこ行くのねぇ




急に動いて消えたかと思えば先輩ってば水槽の中に脳を容れようとする僕の後ろでソファに座ってたり眠ったりするんだ夢じゃないよ僕隣にいるよだから僕の肩つかんでよろけてそんな瞳で僕見ないでよ少し笑っちゃうじゃんか鮪より止まれないなら僕が酸素あげるから寝てていいけどとりあえずまだ死なないで



地図を見ないで歩く貴方の後ろを歩くのもいいけど隣にいるのは多分貴方が態とらしく首を傾けて耳を支えるのを怒ってみせたいからで別に私お金払いたい訳じゃないのどうしてそんな面白いことするの私の顔位の大きなパンケーキ押し込んで蟹を取ろうとしてずっこけて後先考えず海に入っていかないでってば



観覧車に乗るのに写真を撮られて僕写真撮られるの嫌いだって言ったけど先輩の前で写真より腐ってく僕を見られたくなくて声は忘れても汗かかないように見える僕の匂いマスクで知らないから声憶えないとだね僕自信ないやでも雨に降られないまま帰ってこれたよ晴れ男の先輩のお陰だよ蝉後暫く生きてけるね



機械的に今回の反省を考えてみてあなたは触れてくれたのにわたしはどうして何も思わなかったのかわたしは本当にあいしていくべきなのか考えたのだけどこいなのかは分からなくてもあいであるのは分かるのでとりあえずはこのままでいいしまだ少なくとも捨て置けるものだと舐めてかかってはや月三ヶ月経つ




酔ってるんだけどどれに酔っているか分からないから僕は君が嫌いだよ気持ち悪いんだ吐きそうで頭痛薬は少し怖いけど多分平気ただ早く家に帰りたいと思うのは飲みすぎた飲み物のせいなのは分かってるよバスの窓から覗く夜景は好きだな僕の髪の毛と頭と他なにかをしっちゃかめっちゃかにしていかないから




コンビニで一目散にトイレに入って出てきてもしあの人が殺された時にアリバイを証明する為にこの駅の近くのコンビニにって言おうと思ったのだけど直前まで食べていた甘いあれが腹の奥でどうにも気持ちが悪くて吐きそうになったのくしゃみする隣に座った美形の青年を見ても止まらないのでいい加減にして

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