千珠咲
1
「今回は僕の認証で通ることになるから君は荷物と同じ扱い。わずかでも離れればセキュリティの壁が僕と君の間に出現する。その後、君は生物としてではなく取り残された無機物として扱われるから、それが嫌なら絶対に離れないようにね」
少々きつい口調で言われ、
入り口に入った瞬間、壁自体がぼんやりと明るくなって辺りを照らした。
壁に切れ目を入れたように開いた通路は人が一人通れば良いだけの幅しかなく、その代わりどこに天井があるか分からないほど上には暗闇が広がっている。
道は緩やかな下り。
ウォールが通過すると自然と裂け目は引っ付いて、そこに道が存在していたのが嘘のような壁が出来上がった。
(離れて歩けば壁の一部になっちゃうかもしれないのね)
壁に塗りこめられるなんてごめんだと、
ウォールの一歩は
はじめこそ黙っていた
「離れずについて来いというのなら、もう少し足の長さを考えて歩いてくれませんか?」
「長さが足りないんだったらその分稼動させて補えば良いんじゃない?」
「それが出来ればついて行っています。出来ないから言ってるんです」
「仕方ない、それじゃ速度を少し落とすか。のんびり何も無い空間を行くのは好きじゃないんだよね、面白くなくて」
ほんのわずかだけ歩幅を小さくしたウォールが面白くないと溜息をついたのを見た
「ちょっと気になってることがあるんです」
先ほどまでは黙ってひたすらついてきていた
「気になるって、さっきの壁の仕掛けの事?」
「あぁ、それも気にはなりますけど、そうじゃなくって
一体何が気になるのか全く分からないウォールは首をかしげて「何が? 」と聞き返した。
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