服装

 スーツに穴が開いていた。

 普段使わないからと奥にしまって置いたらこれだ。裁縫などできるはずもなし、だいたいスーツに糸を通していいのかも分からん。仕方なく、近所の量販店へ買いに行く覚悟を決める。


 しかし一着何万もする服を買うというのは何とも気が進まない。しかも年に何度も袖を通す事のないものだ。どうしてあんな服がフォーマルなスタイルとして浸透したのだろうか。採用した奴を恨まざるを得ない。


 スーツを買う金があれば、酒と肴が買えるなと、ふと思った。


 俺は開いた穴と引っ張り出してきた裁縫道具を見比べ、何とかならんかと思案するも結局諦め、酒を飲んで寝るのであった。

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