意地悪王子はストーカー?
KANA
悪夢の始まり?
「詩織この前のテストの結果どうだった?」
学食で食事を終えそろそろ片付けをしようと立ち上がった時、親友の有希が私の元へ駆け寄ってきた。
有希は小学校からの友人で、学部は違うが大学生になった今でも親しくしている。
「ん、まぁまぁかな。有希はどうだったの?」
「私はギリギリだったよぉ」
食器を片付けながら有希と先週行われたテスト結果を話しているだけで周りの視線が集まる。
視線の中心は目の前にいる彼女、杉山有希だ。
彼女は小学生の頃から可愛らしかった。くりくりの大きな瞳に栗毛のストレートの長い髪が特徴的でスタイルも良い。しかも性格が良い。
なんと言っても私、深山詩織とも仲良くしてくれるからだ。
私は昔からいじめられっ子の部類に入る。視力が悪く分厚いレンズの眼鏡と、いくら手入れしてもボサボサの髪。人とのコミュニケーションが苦手で人との会話が続かない。
周りから空気が読めない、陰キャと言われ続けてきたが、目の前にいる彼女はそんな私にも優しく接してくれる。
一緒に遊んだり、修学旅行の班を決める時も私を誘ってくれた。
「テスト終わったし、今度どこか行こうよ」
「予定確認しておくね」
そんな会話聞いた周囲の視線が自分に集まるのを感じ、私は有希に別れを告げ速足で研究室に向かった。
パタンと研究室の扉が勢いよく閉まる。
音をたててしまった事にハッとしたが、研究室には誰もいなかった。
詩織は上がった息を整えると教授に頼まれていた書類の整理を始める事にした。
就職も決まり卒論も最終段階に入った事を知った教授は詩織に研究室の掃除を頼んでいた。
研究室は埃っぽく窓を開ける。夏もそろそろ終わりに近づき時々吹く風は心地よかった。
「私、嫌な感じだったかも……」
先ほどの有希に対する態度に罪悪感を覚えた。周りの視線が気になり会話もそこそこに逃げ出してしまった。
周りは私を見ている訳ではない。有希を見ているのだ。邪魔者の私に対する視線が昔から苦手だった。悪意ある物も含まれたからだ。
小学生の頃は有希と遊ぶ事を妬んだクラスメートが私をトイレに閉じ込めたり、中学の頃は上から水が落ちてきたり、高校の頃は私の名前と電話番号を使い援助交際をするサイトに登録されたりと色々あった。
現在は男子から悪口を言われたりする位なので問題ない。昔に比べればなんて事はなかった。
「お前なんて大嫌いだ」
ふと、ある男の子に言われた言葉を思い出した。
彼は有希の親戚子で体の小さな男の子だった。
4歳年下の彼はいつも有希と一緒に付いてきて付いてきて良く遊んていた。
何故そんな事を言われたのか思い出だせないが、あの大嫌いと言われた後から、仲良く遊んでいた事が嘘のように冷たくされた。
ブス、デブ色々言われた。沢山意地悪もされた。あの頃は悲しくて悲しくてどうしたら良いのか分からなかったが、大人になって考えてみると原因は私にあったのかもしれないと思った。
「お前なんて大嫌いだ」
私はあの子に何をしてしまったのだろうか。
嫌いと言われて数年後、彼は突然いなくなってしまった。
留学するとかで、嫌われた理由を教えて貰えないままーーーーーー
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