恵のお酒デビュー

冴えないオタク

    

「今日が恵のお酒デビューかぁ」

「倫也くんが飲めるようになるのはだいぶ先

だし、一足先にね」

「なんか自分達がそう年齢にもうなったんだって改めて感じるよなぁ」

「だよね、大人になれたとはまだ思えないけど、今まで出来なかったことが出来るようになるって言うのは大きいよね」

そんな話をしながら向かっている先はお台場。

恵が、せっかく初めてお酒を飲むなら夜景でも見ながらと言うことでここに決まった。

夜景を見る為にいつもより少し遅めの時間に集合、近くのショッピングモールで時間を潰し辺りが暗くなって来たことを確認しお店に移動した。

もちろん実物大ユニコーンガンダムの変形を見ることも忘れなかった。


今日の店は夜景が見れて、お酒がメインではなくて、大学生でも払えるくらいの価格設定でと言うふうに二人で決めた。

「実際味ってどんな感じなんだ?」

「意外と飲みやすいかなぁ。始めは普通にジュースみたいで後味にアルコール感と果物感があるみたいな。これで分かる?」

「まあなんとなくは分かった」

「あぁでも、夜景効果か分からないけど、美味しい」

「あんまり飲み過ぎるなよ」

「だよねぇ、二日酔いになったら大変らしいしこれで終わりにしとく」

そんなこんなで恵ははじめての体験に満足してくれたみたいだった。









お腹が満たされた俺達が次に来たのは思い出の場所で、恵とゲームを良いものにしようと誓った場所。

昔来た時にはリア充爆発しろなんて言っていたが、今ならカップルで夜景を見に行く気持ちが分かってしまう。夜景も綺麗だけれど、それ以上にその光に照らされる恵が何より綺麗で魅力的だった。

景色を見て感嘆の声を上げている彼女の横顔を見続けていると、流石に気付かれてしまった。

「夜景見なくていいの?」

「恵の方が綺麗だしいいよ」

「私の顔なんていくらでも見られるんだし、今は一緒に見ようよう」

「わかった」

「でも、その前にね」

いつもの行為であったけれど、少しいつもと違う香りだった。甘い果実とアルコールの匂い、それが恵の口を通して鼻を抜ける感覚。

そうして俺達は最後にカップルな時間を過ごした。







のだけど、そろそろ帰ろうと駅に向かう途中で恵の様子が変わった。

足取りがふらふらとして来て、はっきり言って酔っているようだった。

「ねぇー倫也くん、きょーは楽しかったねー、けれどこれからもっといろんなことが出来て、もっと楽しいことが出来るようになると思うんだ。だからさこれからもよろしくね。

そして辛いことも、楽しいことも二人一緒でやっていこうね。

なんて、くさいかなぁ、お酒のせいで恥ずかしいこと言ってないかなぁ」

こんな普段なら絶対に言ってくれないような、聞いてるこっちも恥ずかしくて悶えてしまうようなことを言ってくれるなんて、背伸びして頑張って良かったと思う。

それに、恵がちょっといつもとテンションの違うことを言ってしまうのは、本当に楽しい時だと知っているから、あの時をつい思い出して懐かしさと嬉しさで溢れてしまう。

「全然恥ずかしくなんてないよ、俺も同じ気持ちだから」

「うーん、なら良かった。と言うことで私を倫也くん家に連れて行ってね」

「ってここから俺ん家までは遠過ぎるからもうちょっと頑張ってくれよ!」

そんな俺の大きな声が、不似合いな夜景に響き渡った。






ちなみに時間差で酔いが回ることは本当にあるみたいです。実は書いた後にあれ辻褄が合わなくないか?って焦りながら調べたら出たので助かった...



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