第28話 めっちゃモテたーい♪打法


 「なぁ、お前昨日スイミングスクールで鬼コーチと一緒にいただろ。あとガストにも一緒に行ってたよな。」

 教室に入り荷物を置いたところでモモタロウに声を掛けられた。


 「ん?お前あの場にいたの?」

 真白は何喰わぬ態度でモモタロウへ返答していた。

 「え?逢引きデートとかじゃないの?」


 「は?そんなわけないだろう。プールは監督に言われて主に肩甲骨の使い方の特訓だし。鬼コーチが一緒だったのは普段一緒に特訓していた八百が都合つかないから代わりに手伝ってもらっただけだし。」

 「ガストに居たのはその手伝い賃みたいなものだしな。」

 

 あの時の様子を見ていたモモタロウにはそれだけの関係には見えなかったようだけれど、これ以上何かを言っても進展はないなと悟った。

 しかし通常水着に着替える特訓をそう簡単に引き受けるものかと、モモタロウの疑念は晴れなかった。


 「う~んこのニブチンめ。」



 この日登校してきた種田恵はというと……


 「おう、おはよう。明日は試合だな。勝利の鬼神と女神も見てるからな。」

 平常運転だった。その様子からモモタロウは先程の疑念がもう何を意味するものかわからなくなっていた。

 これまでの態度や昨日の光景から見れば恵が真白を意識しているのは明白なんだがな……とモモタロウは睨んでいたのだけれど。

 その疑問が解けず期末テストよりも頭を悩ます事となった。





 試合前日なので1時間の軽い練習で部活動は終了する。

 スターティングメンバ―は1回戦から変わらない。

 流石に無名校であってもここまで残ってるチームへの偵察はされるもの。

 グラウンドの外には見慣れない生徒がちらほら姿を現していた。


 前日ではあるけれど、今日も真白は恵と一緒にスイミングスクールで件の特訓を行った。

 先日のようなラッキースケベハプニングもなく、何これ美味しいの?というような時間だった。

 やはり同じようにモモタロウに見られていたのだけれど、二人は特に気付く事はなかった。


 気になるのならこの場で声をかければ良いのに。

 ちなみにモモタロウがスイミングスクールに通ってる理由は夏モテたいためである。

 泳げないとナンパ出来ないし、ひょろい身体じゃ抑ダサイじゃんと思っての事だった。

 実は5月から通い始めているのでそこそこは上達しているのだが、果たして披露する機会があるかどうか。




 準々決勝は山田ー卯月ー柊のリレーで相手を抑え4-2で勝利する事が出来た。

 鬼神と女神が睨みを聞かせている桜高校は未だ快進撃を続けている。



 1日開けて翌々日、準決勝が始まる。

 相手は、近年は甲子園から遠ざかってるけれどかつては甲子園準優勝したことのある……


 共〇との対戦。競泳水着を着ていたあのヒロコさんの母校だった。

 

 古豪というには古い学校ではないけれど最後の甲子園は15年程前のためここまで残った今年は特に力を入れている。



 中盤6回を終わって1-0とリード。八百のタイムリーで先制している。

 7回から山田がライトに回って卯月がマウンドに上がった。

 僅差であり、山田が好投しているので替え所としては難しい所ではあるけれど、、これまで通り継投策をとった。


 しかし変わった卯月には合っていたのか7回に3点を取られ逆転を許してしまった。


 相手も7回から投手を変えてきていたが苗字に聞き覚えがあった。

 あのヒロコさんと同じ苗字だった。


 あぁもしかしたら息子さんか?だとしたら先日会った時は20代に見えたけど、実は30代もしくは40代という事になる。


 しかし現実は非情で、桜高校4番新一年生壇之浦の一発で同点。

 美味しい所で再び柊真白の出番である。

 ラブコメの神様には愛されているか微妙だが、スポ根の神様には期待されているようだ。

 チャンスで回ってくる事が多い。


 2球目、甘く入った外角高めの真っ直ぐを、落合よろしく見事な流し打ちが綺麗な放物線を描き、見事にライトポールにぶち当たった。

 

 奇しくもブラスバンド部が演奏していた曲は「お願い〇ッスル」だった。

 めっちゃモテたーいのタイミングで振ったらジャストミートした。

 そんな感じで打ったと言ったら非難浴びるだろうなとダイヤモンドを回っている時に真白は考えていた。


 8回は立ち直った卯月がしっかりと抑え、9回やっぱり真白が1イニング限定で抑えの役割を果たしてゲームセット。

 4-3で共〇を下し、創部どころか開校以来初の決勝進出を決めた。

 決勝の相手はこの後行われる試合の勝者。

 朝倉澪と部長はこのまま残って偵察をするという事だ。


 その言葉を聞いたら全員で試合を見ようという事になった。

 参考になるかはわからないけど無策で勝てる程決勝戦は甘くない。


 ちなみに決勝アーチということで今日もインタビューを受けた。

 これが主人公補正というものだろうか。いつも良い場面で回って来て結果を残すのは出来過ぎている喜来がある。


 学校の新聞部には素直に答えた。

 「お願い〇ッスルのめっちゃモテたーいのたーい」の部分でフルスイングしたら飛んでったと。

 新聞部員は呆れた顔をしてボイスレコーダーとペンを落としていた。

 


 翌日の校内新聞の一面には「柊選手、彼女募集中!」とでかでかと書かれていた。

 追記として俺も俺もと他の部員達も騒いでいたと書かれていた。

 変に気負わない事が良い結果に繋がったのでは?と記者は補足していた。


 そして運命の決勝戦。

 県営球場で行われる。   

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