第20話 種田恵のぽんこつ発揮。ヤンキーなんだけどね。
罰ゲーム、そういえば体育祭の時二人三脚で勝負していたのを真白は思い出した。
恵が勝てばアレを買って貰え、七虹が勝てば真白と恵でデートをする。七虹は後ろから付いていき確認をすると。
「そういえばそんな事言ってたな。」
まるで今思い出しましたと言っているのだけれど、七虹はそれを見越していた。
「とばっちりみたいなものだしね、忘れてても仕方ないけど。」
注がれた水を半分程飲むと七虹はすかさず水を注ぎ満タンにする。
「正直あんな結果だったし無効でも良いかな……」
真白が少し残念そうな表情をしたのを七虹は見逃さなかった。
「と、思っていたんだけどちゃんと守ってもらおうかにゃ。」
七虹も仕事に忠実だった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ああーーーーー。なんだよもう、もう一度って。もう一度って。」
休憩室で一人頭を抱えて首を振って悶絶している恵。
あれではお姫様抱っこをもう一度して欲しいとしか受け取られてないと思い一人悶絶している。
「もーーーー、私はどうしちまったんだーーーー。」
店内に聞こえない程度には大声で器用に悶絶している恵。
この場に誰かがいたら砂糖ばら撒かないでと言いそうである。
「本音は?」
その時小さな声が聞こえた気がした。
脳内でもう一人の自分が語り掛けるかのように。
「胸がきゅんっとした……ってはっ?」
ギギギと首をゆっくり回し、恵が後ろを振り返ると……
「にやにや。」
声に出してにやにやというメイド長カレンちゃんことオーナーがいた。
「ニャンドルルラギッタンディスニャー」
恵の顔が赤唐辛子のように真っ赤になる。
驚いた恵は硬直し動けなくなっていた。
「それはね、
どうやら先程の恵の言葉を直訳すると、「なんでここにいるんですかー?」であり、カレンはそれを翻訳出来たというわけである。
「めぐにゃん、純情だにゃん。」
カレンの声は恵に届いていない。悶えている恵にはまったく届いていなかった。
羞恥に塗れ、自分の気持ちにも周囲からの視線にも気付かない鈍感系ラノベヒロインのようであった。
「仕事に戻りますにゃ。」
悶えすぎて涙を浮かべている恵は、休憩もそこそこに休憩室を出て行った。
入れ替わりで休憩室に向かって来ていた七虹がすれ違い様に話しかけた。
「罰ゲーム。残酷かもしれないけど、忘れてないよね?」
「あーーーーーーーーーーー」
廊下に恵の声が響いた。幸い客席には聞こえていない。
両耳を塞いだ恵はさらなる羞恥に悶える事になった。
「これは?」
真白のテーブルにガトーショコラとメモ帳が添えて置かれた。
「読んどいてにゃ。」
唇を尖らせて真っ赤な表情の恵が、用件だけ済ませると離れて行った。
真白は不思議に思いながらもそのメモ帳を手に取り中を確認する。
(18時にバイトが終わるので駅前の電話ボックスの前で待っててくれ)
という内容のメモだった。
昨年の勉強の時も感じていたが、恵の書く字は綺麗だった。
急いで書いた事はうかがえるが、走り書きだと思われるがそれでも綺麗に整った字で書かれていた。
そしてご丁寧に名前まで書かれている。
変なところで真面目だなと真白は思った。
メモ帳にはこう追記されていた。
このガトーショコラはサービスだ。
保健室まで運んでくれたお礼だと思ってくれ。
恵は真白がチョコ系が好きな事知ってか知らずか、ピンポイントに捉えていた。
フォークを入れ口に運ぶ。
「あ、美味い。」
程よい甘さが口の中に広がっていく。
続けて飲んだコーヒーの酸味が、それらを調和して更なる旨味を引き出していた。
流石ブルーマウンテン1500にゃん……
余談ではあるが真白はモカが一番好きである。
真白は知らない。この店のケーキ類の半分は恵が作っている事を。
真白は知らない。種田恵が実はお菓子研究部の幽霊部員である事を。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます