第16話 月曜日(恵side)
「おはよう、種田さん。」
恵が教室に入るとその姿を見た女子生徒が話しかけてくる。
「お、おう、おはよ。」
ぎこちなく返す恵。
普段殆ど会話をしない相手であるため、どのように接していいのか正直戸惑っていた。
「足の具合はどう?」
足の心配をしてくれるあたり良い子なのだろうと恵は位置付けた。
「ん、まぁ。歩く分には大丈夫だけど。」
恵はクラスメイトとほとんど日常から会話をしていないため、そこで止まってしまう。
しかし今回は違った。足が大事に至っていないのであれば彼女からすれば聞きたい事があるのだから放ってはおかないだろう。
「じゃぁ、聞きたいことがあるんだけど、あのお姫様抱っこされた時ってどんな感じだった……かな?」
恵はビクッとしたのを悟られないように周囲を確認すると、少し顔を赤らめて……
「にゃ、何も?あの時は足が痛くてそれどころじゃなかったし。運ばれてるなぁって感覚しか。」
それは当然嘘であるし、周りもきっと嘘に気付いてる。
ただ、自分が逆の立場だったら本心を言えるか?と言われたら同じように誤魔化していただろうという結論に達し、それ以上突っ込んでは聞かなかった。
「でもまぁ、ある意味お姫様抱っこは浪漫だし夢だしね。種田さんもラッキーだったんじゃないかなって。」
同じような質問が飛び交い、同じような回答を繰り返す。
その日一日の恵は疲れていた。
そして女子トイレの個室にて。
「やっぱりあれは……そういうことだよなぁ。」
先日救護室、そして保健室までの出来事。
ブラをし忘れるという通常ありえない事があったにしても。
こすれて変な気分になってしまったなどど……思い出すと切なくなってくる。
これまで恋愛はおろか、男女の事に関して深く考えてこなかったからこそ。
学校や周囲から漏れ聞こえてくる知識しかないとはいえ、あの時から異性について、真白について深く考えてしまうようになっていた。
昨年勉強を教えて貰った時とは違う、別の感情。
あの時はちょっと気になるアイツという感じだった。
それすらも周囲が見れば恋心じゃない?と言われそうなものであるが。
「ドキドキしてた……なんて言えないわ。」
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