第15話 女子トイレで……

 流石に中まで連れて行くわけにもいかないので、入り口まで運んで背中から降ろす。

 そしてその後は小倉七虹に肩を支えてもらい個室まで連れて行ってもらう。


 数分後。


 「な、なんじゃこりゃぁぁあっぁぁぁあ」


 とても逞しい種田恵の絶叫が廊下で待機している真白の元にまで届く。


 「ど、どうした。Gでも出たか?」

 真白は流石に入るわけにはいかない。

 声で確認を取ろうとする。

 

 「だ、大丈夫みたい、もう少し待ってて。」

 外で一緒に待ってた七虹が恵の元に行きそう答えた。


 それから数分。

 顔を真っ赤にした種田恵と同じくやや赤らめた小倉七虹がトイレから出てきた。


 「何があった?」


 「聞いてきたらぬっころす。」

 「後生だからこればかりは恵の味方するわ。」


 二人とも頑なに黙秘権を主張した。


 再びおぶるが、中々背中に乗ろうとしなかった。

 おぶるまでに実に10分はかかったのだがそこでも黙秘権を行使された。


 女が複雑なのか、種田恵が複雑なのか。



☆ ☆ ☆


 時は個室でブルマーとショーツを脱いだところに戻る。


 すーっとショーツを下ろすと、布と自分の身体との間に何やら透明な糸状のものが伝っているのが見えた。


 「な、なんじゃこりゃぁぁあっぁぁぁあ」


 そもそもトイレに行きたいと思ったのは、催してきたわけでもないのに股間に水分的な違和感を感じたからだ。


 種田恵も当然性知識は年相応に持っている。

 これが何を意味するのかも知らないわけではない。


 問題はなんで?こうなった?である。

 一つしかない。

 

 保健室に来る前に何があった?

 大体あの時姉はなんて言っていた? 

 「雌の匂いがするわね……」


 あれは揶揄でもなんでもなく、事実だったのか?

 姉の嗅覚おそるべし。


 「あんたも女だったってことね。」

 恵に聞こえないよう七虹が呟いた。


 「恥ずかしいから黙ってて。」

 恵の懇願に、七虹は仕方ないという表情で頷いた。


 ペーパーで拭き取りウォシュレットのビデを活用。


 少し真白を意識し始めた瞬間だった。

 正確にはもっと前からであるが、強く意識したのはこの日だった。


☆ ☆ ☆


 触れられている太腿に妙なこしょばゆい違和感を感じる。

 さっき保健室に運ばれた時は恥ずかしいだけだったけど。


 

 そしてグランドに戻ると案の定人だかりが出来ていた。

 怪我の具合の心配と、お姫様抱っこの感想とを求める声で溢れていた。



 先生がやってきて解散となったけど、周囲が気にしているのは伝わっていた。


 小倉七虹は荷物を置いたら自分のクラスに戻っていた。




 運動会の結果は……


 なんと同点だった。

 じゃんけんで決めるわけにもいかないので今年は引き分けという形で幕を閉じた。



 その日の恵は保健の先生である種田聖子の車で帰宅する。

 土日を挟むため、足の安静にはちょうどいい時間がある。


 そして月曜日。


 恵が登校すると教室に入るなり。


 「おはよう、種田さん。」

 と挨拶をしてくる女子生徒が増えていた。

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