第159話 アイセル&サクラSIDE(1)

~幕間~


 話は一週間ほど巻き戻る。


 サクラとアイセル。

 絶賛売り出し中のSランクパーティ『アルケイン』が誇る2枚看板の前衛コンビは、拠点にしている屋敷から少し行ったところにある岩場で、連携攻撃の練習を行っていた。


「行きますよサクラ! コンビネーション・アルファです!」


「りょうかーい! うぉりゃあぁぁぁっ!」


 サクラが裂帛の気合とともに、ウンディーネに貰った新武器・ガングニルアックス――神槍ガングニルを作った時の余った金属であるガングニウム合金で作られた神話級の両刃の斧だ――をフルスイングすると、厚さ10メートルを超える巨大な岩に打ち込んだ。


 ガギャギャギン!


 硬い物同士がぶつかって砕け割れる音とともに、ガングニルアックスが巨岩にめり込むようにして抉っていく。

 そのまま半分ほどめり込んだところで、サクラは今度は強引な力任せでガングニルアックスを引き抜きながら己の身体も引いた。


「はあぁっっ!」


 そしてそこにアイセルが間髪入れずに飛び込むと、サクラが攻撃した所と寸分たがわず同じ所に強烈な一撃を叩き込む――!


 ズン――!


 ピンポイント連続攻撃によって厚さ数メートルはある巨岩はスパンと真っ二つにされ、上半分が地面へと転がり落ち、もうもうと土煙をあげた。


「ナイスアイセルさん! タイミングバッチリじゃん!」


「サクラが2撃目を入れるためのスペースをしっかり空けてくれましたからね。2人の息がぴったり合うことで1+1が3にも4にもなる。これぞまさに連携攻撃です」


「だね!」


「本番ではサクラが精霊攻撃を、わたしが《紫電一閃しでんいっせん》を放つことで、古代のゴーレムの装甲や世界最硬とも言われるドラゴンの鱗であっても一撃で粉砕できるはずです」


「うんうん、どんな相手でもアイセルさんとのコンビアタックでぼっこぼこにしてやるんだから!」


 サクラがシュバババババ!とガングニルアックスをカッコよく振り回す。

 ちなみに特に意味はない。

 カッコいいからやっているだけだ。

 しいて言うなら巨大武器のガングニルアックスを高速で振り回すことで、牽制の意味くらいはあるかもしれない。


 ともあれ、その後も2人はいくつかのコンビネーション技を、実戦形式で繰り返し練習した。


 …………

 ……


 そうして予定していた連携戦闘の練習を終えたアイセルとサクラは、軽く反省会をしてからそのまま流れで世間話を始めた。


 最初にコンビ―ネーション・アルファによって斬り飛ばした大岩に、2人で仲良く腰かけている。


「将来わたしは自伝を書こうと思っているんですよ」


「いいと思う! 南部諸国連合中にその名が知れ渡る勇者アイセルさんの自伝なら、読みたい人は絶対多いし! 冒険者ギルドにも教育文献として置いてもらえるよ、きっと」


 サクラは読んだことはないのだが、例えばシャーリーのお父さんの若かりし頃の自伝なんかはどこの冒険者ギルドにもだいたい置いてあって、教育文献として無料で貸し出されているのだ。


「そしてそこに、ケースケ様のことを──わたしを1から育ててくれた偉大なSランクバッファーのことを書こうと思っているんです」


「あ、それもいいんじゃない? 勇者アイセルの裏話的な感じで結構需要あると思うよ」


 サクラはそう何気なく言ったのだが――、


「やっぱりそうですよね! ではその時が来たら、それはもう全身全霊を込めてケースケ様がいかに素晴らしく、理知的かつ理性的で、優しくて頼りがいがあって、人を育てるのが上手で、ケースケ様あってこその勇者アイセルであるのだということを、これでもかと書き記すとしましょう」


 アイセルは我が意を得たとばかりに早口でまくし立ててきたのだ。


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