第118話 最後の異変

「そりゃあショックだったんでしょ。ケイスケみたいな戦闘能力ゼロの後衛不遇職バッファーを狩ろうとしたら、滑って転んで頭打って失神とか、恥ずかしすぎてそりゃもう立ちあがれないじゃん? 穴があったら入りたい的な?」


「おいこらサクラ、俺を狩るとか言うんじゃない。さっきはマジで本当に死ぬかと思ったんだからな?」


「でも死ななかったわけでしょ? しかも塩のおかげだよ、塩の! 勝因は塩! 塩がゴーストに効果があって良かったね! ソルト・ストラッシュ!」


「おまえさっきから俺をおちょくってるだろ? 今のは間違いなく俺をおちょくってただろ?」


「心外だし、めっちゃ褒めてるし! ソルト・ストラッシュ!」


「言いながら、半笑いでにやついてるじゃねぇか……まぁ結果的に無事だったからいいけどさ」


 俺は大人の対応をした。


 それにサクラのこういう素直で子供っぽくてアホなところを、俺は実は高く評価してたりするんだよな。


 アイセル、シャーリー、俺と、どちらかというと真面目タイプが残りを占めるパーティ『アルケイン』にとって、いつでも能天気なサクラの存在は割と大切な要素だと思うから。


 パーティはいろんな個性が一つの目的のためにガッチリ噛み合って初めて、最大の力を発揮するんだと思う。


 だからなんでも思ったことをズケズケ言ってしまうパリピタイプのサクラの存在は、パーティ『アルケイン』にとって大きな意味があるはずなのだ。


 事実、パーティ『アルケイン』はとても上手く回っている。


 もちろん時々イラっとはするんだけどな。

 でもそこはパーティの実質リーダーとして大人の対応です。


 それはそれとして。


「つまりまとめると、傭兵王グレタのプライドがこれ以上戦うことを許さなかったってことかしら?」

 シャーリーの感想に、


「傭兵王グレタですか?」

 アイセルが「うん?」って感じで首をかしげた。


「ああ。傭兵王グレタっていうのは、傭兵から王さまにまで成りあがった昔の偉人だよ。黒い曲刀をつかう剣の達人でな。剣神って呼ばれてたんだ。多分だけどこのリヴィング・メイルはその傭兵王グレタだと思うんだ」


「そんなにすごい剣の使い手だったんですね……どうりで強いと思いました。攻撃は全部スッと変な方向に受け流されちゃうし、そもそも間合いを完全に支配されてたので攻撃するのも一苦労だし、もうこれどうしよう!?って思いましたから」


「そこまでだったのか……もはや現役最強フロントアタッカーとの呼び声も高いアイセルを手玉に取るとか、傭兵王グレタ恐るべし……」


「はい、わたしもまだまだなんだと心の底から痛感しました。もっともっと精進しようと思います」


「アイセルがここからさらにパワーアップするとなると、それほど頼もしいことはないな」


 とまぁそんな感じで和気あいあいと話をしながら、俺がいつにも増してやる気を見せるアイセルの頭を「えらいえらい」となでなでしていると、そこで最後の異変が発生した。


(仲間……絆……頼む……)


「なにっ、なになに!? 今なんか聞こえたんだけど!?」

「ケースケ様、今のって……?」

「なんとなくだけど、傭兵王グレタから聞こえたような……遺言かしら?」


「うん、俺も聞こえた。仲間、絆、頼むって言ってたような……」


 俺はリヴィング・グレタを見た。

 しかしすでに動かぬ屍となった傭兵王はもう何も伝えてはこない。


 ただ。

 がらん洞の目が、俺に何かを強く訴えかけているような気が、した。


 気が付くと、辺りは少しずつ白み始めていた。

 長い夜が明けようとしていた。


―――――――


【ケースケ(バッファー) レベル121】

・スキル

S級スキル『天使の加護――エンジェリック・レイヤー』


【アイセル(魔法戦士) レベル53→56】

・スキル

『光学迷彩』レベル28

『気配遮断』レベル28

『索敵』レベル35

『気配察知』レベル56

『追跡』レベル14

『暗視』レベル28

『鍵開け』レベル14

『自動回復』レベル35

『気絶回帰』レベル35

『状態異常耐性』レベル35

『徹夜耐性』レベル35

『耐熱』レベル35

『耐寒』レベル35

『平常心』レベル35

『疲労軽減』レベル56

『筋力強化』レベル56

『体力強化』レベル56

『武器強化』レベル56

『防具強化』レベル56

『居合』レベル56

『縮地』レベル56

『連撃』レベル56

『乱打』レベル56

『武器投擲とうてき』レベル56

『連撃乱舞』レベル56

『岩斬り』レベル56

『真剣白刃取り』レベル56

『打撃格闘』レベル56

『当身』レベル56

関節技サブミッション』レベル56

『受け流し』レベル56

『防御障壁』レベル35

『クイックステップ』レベル56

『空中ステップ』レベル56

視線誘導ミスディレクション』レベル35

『威圧』レベル49

『集中』レベル56

『見切り』レベル56

『直感』レベル56

『心眼』レベル56

『弱点看破』レベル35

『武器破壊』レベル35

『ツボ押し』レベル56

『質量のある残像』レベル35

『火事場の馬鹿力』レベル35

『潜水』レベル28

『《紫電一閃しでんいっせん》』レベル56(『会心の一撃』から進化)

『剣気帯刃・オーラブレード』レベル28


【サクラ(バーサーカー) レベル47→51】

・スキル

『狂乱』レベル--

『自己再生』レベル--

『疲労軽減』レベル--

『筋力強化』レベル--

『体力強化』レベル--

『会心の一撃』レベル--

『武器投擲とうてき』レベル--

『精霊攻撃』レベル--


(注:バーサーカーの戦闘スキルは全て怒りの精霊『フラストレ』の力を借りるため、通常のスキルレベルとは完全に切り離されています)


【シャーリー(魔法使い) レベル108→109】

・スキル

『魔法』レベル105

『魔力変換』レベル105

『集中』レベル105

『疲労軽減』レベル35

『体力強化』レベル35

『筋力強化』レベル35

『武器強化』レベル35

『防具強化』レベル35

『自動回復』レベル35

『徹夜耐性』レベル35

『杖術』レベル35


・作中で使用した魔法

『極光殲滅魔法、オーロラ・ボルテクス・エクスキューション』

『装備魔法、ライトニング・クロス』

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