クラス
『クラス獲得クエストを開始しますか?』
毎度の事ながら、ノーヒントで色々と言ってくるのは止めて欲しい。だがクエスト、つまり何かをしなければ手に入れられない物だとするのならば、少しでも強さを求めるのなら、それに挑まない選択肢はない。
それに、RPGを趣味にしている俺から言わせてもらえば、クラスという物にもある程度察しが付く。ようるに、戦闘に関しての成長の方向性。職業やジョブと呼ばれる物と言われる物だ。
「開始する」
そう呟くだけで、ウィンドウは消え、俺の目の前に広がっていた雪景色が全く別の場所へと入れ替わる。
これは、神殿か?
『クラス獲得クエストを開始します』
『クリア条件:大魔術師リヒトの死亡』
『失敗条件:プレイヤーの死亡』
北欧風の神殿に現れたのは、どう見ても人間の姿なんて取っていないが、ただ腕と脚が二本である事だけが、それが元々人間であった事を指示していた。
アンデット。骨だけの見た目だが、羽織ったローブと装備している杖からはかなりの量の魔力を感じる。どうみてもその二つは魔道具。しかも、本体の魔力量も桁が違う。
「大魔術師ねぇ……」
儂より上か、試してみようか。
「
それはただの炎息吹じゃない。
それは本来なら100弱の魔力で発動できる魔法に、1000という莫大な魔力を宿した今までの炎息吹とは比べ物にならない威力を有した魔法。
炎がその身を包む。これだけの魔力を込めたその魔法の熱量は既に鉄が溶けるようなレベルだ。
ただの、アンデットが耐えられるはずも無い。
「カカカ」
骨を鳴らしながら、首を斜めに捻ったような表情で、その骸骨は炎の中から姿を現した。
無傷……だと……?
「カ!!」
骸骨の持った杖が発行する。
放たれたのは炎を球状に固めた魔法。
「ッチ、意趣返しのつもりか?
その魔法があるのなら。
俺のスピードの方がお前の魔法よりも。
速い。
「
炎がダメなら氷と雷で攻撃する。
降り注ぐ雷と、凍てつく冷気を浴びせても、その骸骨は無傷で笑みを浮かべている。
「舐めてんのか? 笑ってんじゃねえぞ」
今ので、こいつが炎に対してだけ大きな耐性を持っている訳ではない事が分かった。
だが、俺の魔法が効かない理由はまだ分からない。
それでも。
魔法が通用しない程度で、俺は負けない。
最初から思っていた。一対一なら、魔法よりもこっちの方が強いってな。
「
それは、俺の脚力を飛躍的に向上させる付与魔法。
そして、身体強化まで入った今の俺の身体能力なら。
急接近からの、腕を引く動作をコンパクトに最速でそれを放つために、今までの戦いは俺に最適なタイミングを経験と言う知識を元に教えてくれる。
パァン!
破裂音に近いその音が、俺の拳と骸骨の顔面の接触によって起こる。
「どうした? これは防げないのか?」
今確信した。
こいつの無効か能力は、魔力に対してしか有効じゃない。
しかも、身体強化はそれに含まれないみたいだ。
なら、
「
小太刀と短刀を出現させる。
「
龍爪は、武器の切れ味を上げる魔法。
そして固定によって、その刃は絶対に折れなくなる。
魔力が結構ヤバいな。
決めに行く。
「カカ!」
また炎か、芸の無い奴だ。
今の俺にとって、その魔法は遅すぎる。
魔法を紙一重に回避する。
そうする事で、俺の速度を保てるから。
走れば、数十m吹き飛んだ骸骨の前の前まで、数秒で移動できる。
もう一発、貰っとくか?
拳を握りこみ、そのどてっ腹に突き入れる。
今の俺の腕力なら、その骨だけの軽い身体を吹き飛ばす事など難しい事じゃない。
「カキ……!?」
吐しゃ物なんてない癖に、何か吐き出しそうな雰囲気で吹き飛んで行く。
剣要らなかったかもな。
「はあ?」
壁まで吹き飛ばした骸骨は直ぐに立ち上がる。
驚くべきは、肋骨を粉砕したはずなのにそのダメージが徐々に修復されて逝っている事だ。
「自己回復かよ」
だけど、その能力は例えば一撃で殺されても発動するのか?
一歩踏み込み、地面が抉れるほどの脚力で、跳躍とすら呼べる速度で飛来する。
「カカカ」
それに合わせて、大魔術師は今までのファイアーボールではなく、それを軽く超える規模の火炎魔法を発動した。
俺の視界が炎で包まれる。
跳躍中の俺にそれを回避する術は、
「悪いな」
第一六魔術、
「
背後へ一瞬で移動した俺の短剣がその背を切り付ける。
「カッ!」
まだ終わってないぞ。
二つ目の刃が、その首へ迫る。
キィン!!
その瞬間、骸骨と俺の短剣との間にバリアのような何かが出現した。
どれだけ力を込めて押しても、そのバリアは突破できそうもない。
「儂の魔法を防いでいたカラクリはそれかあ!?」
だったら、魔法が全く気ない訳じゃないのなら。
俺は脚の裏を床へ叩き付ける。
「第四二術式、
石でできた槍が、足元から一気に骸骨の身体をつきぬいていく。
「まだまだだ。
更に、石を足に纏わりつけて、移動を完全に封じる。
「お化け役だけじゃなくて、驚かされる役もしてみろよ。
俺の身体を包んだ魔法は、全ての方向からその色を完全に透過させ、音を消した。
お前のバリアがオートで発動するような代物だったなら、拳も短剣も防げたはずだ。
だが、現実は違う。
つまり、お前の意思でその防御が行われるんだろ?
なら、相手が見えず聞こえなければ、お前は何処にそれを展開するんだろうな?
「カカカカカカ」
バリアが幾つも展開されるが、俺の速度はその全てを掻い潜り、そして、
「貰ってくよ」
その声によって展開を止めた骸骨の、首を刎ね飛ばした。
「まだ、蘇ったりしないだろうな?」
それだと少し面倒だ。細切れにしないといけなくなるからな。
『クラス獲得クエストを終了します』
『以下のクラスから一つを選択してください』
・魔法使い
・賢者
・再現術師
・空間術師
・呪術師
・龍術師
・錬金術師
・重力使い
・暗殺者
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