第11話 巨竜の大口作戦 第2防衛ライン編


 合衆国対三国同盟軍との戦争は、合衆国の第2防衛ラインで激しさを増していた。白い髭を蓄えた老人が、戦場を眺めて違和感に混乱していた。


「一体どうなっている。押しているはずなのに、押し切れずにいる……」


 三国同盟軍の指揮官である、フラン連合王国・リヒャルド・ドーベルは焦っていた。

 見た事もない兵器の数々と獣人の特性を生かした戦略により、連合軍は多大な被害を受けていた。


「今回の戦争はおかしい。彼等は本当に、帝国の残党なのか? 余りにも違いすぎる」


 帝国兵は、獣人を迫害していた為に獣人を奴隷兵士にしていたが、士気はかなり低く弱かったので重要視していなかった。

 

 しかし、合衆国の兵士達は士気が高く、技の練度と連携により強敵になっていた。


「ハーピーやバードマンによる空からの爆撃とレッドキャブによる奇襲。ケンタウロス族が馬車を引き、ボウガンによる攻撃と怪我人の回収。こんな、軍隊聞いた事がない!」


 帝国がレジスタンスによって、攻撃を受けていた時代、レイの存在やレジスタンスの存在は帝国の弱点になると他国には隠されていた。

 

 噂程度は、伝わっていたが信憑性がなく三国同盟軍は知らなかった。レジスタンスは、強固な帝国と互角に渡り合っていたので、帝国に大敗していた三国同盟軍は合衆国に飜弄ほんろうされていた。


「リヒャルド殿」


「どうしましたか? マクベス殿」


 マクベス・ハイドマンはヨーロシアン聖王国てリーズ三世の右腕と呼ばれ、今回の戦争では聖王国代表で参戦していた。


「戦場の様子がおかしい……話し合いをしたいと考えています。キューブ殿も来るはずです」


「いやー、お待たせしました」


 キューブ・マクスウェルはマドリー共和国の第1王子で次期国王と呼ばれていた。


「今回の戦争はおかしすぎる。帝国とは思えない残党に、急に別人のようになった王様達……」


「マクベス殿! 滅多な事は言う物ではありませんぞ。王達の耳に入れば大変な事になる」


「まあまあ、落ち着いて下さい。リヒャルド殿の心配もわかりますが父上の様子がおかしいのも事実。なにかあるはず……」


 今回の進軍には各国の王が同行していたが、若い王ならまだしも、高齢の王全員が戦場に来る事はありえない。


 それに、ある次期を境に王達の性格が変わったので臣下の中には「魔物が王になりかわっているのでは?」とゆう噂が流れていた。


「魔導具で調べたが、魔物ではなかった。元気に成られたのは嬉しいが、父上が心配でならないのです」


「キューブ! なにをしている!」


 豪華な鎧に、王冠を着けた。かなり怒った高齢の男が近づいてきた。


「父上。お二人共に、今後の戦略を練っていたのです」


「馬鹿者! 憎き帝国の残党が目前にいるとゆうのに何をしている!」


「落ち着いて下さい。マドリー王、彼等は強敵。慎重に作戦を立て、戦わなければ……」


「マクベス殿! 我々は長い時を、帝国に煮湯を飲まされてきた。今こそ、全滅するチャンスなのだ! 行くぞキューブ」


 キューブを引きづりながらガニ股で帰る、マドリー王を見送りながら、昔のマドリー王は、戦を嫌う優しい王だったが今は別人になっていた。


「この戦は大丈夫なのだろうか……」


 リヒャルドの不安が消える事はなかった……



♢♢♢



 第2防衛ラインでレイ達は、三国同盟軍を押さえていた。


「魔道士達の魔法が来るぞ! 盾を構えよ! マジックシールド系を使える者は張るんだ! 時間が近い、オレも後退するが衛生兵の回復次第、全軍撤退を開始する」


 オレの叫び声と共にマジックシールド等の魔法を唱え、マジックアローやファイヤボルト等の遠距離魔法が掻き消える。


 魔法に混じり、矢も飛ばしてくるので盾に矢尻が当たり金属音と共に火花が散る。


「怪我人は一度、後退するんだ! 新しく衛生兵も作ったんだ! 遠慮なく回収するんだ!」


 レインの声に矢があった者や切りギズをした獣人が、後退する。


「は〜い、怪我をした人は並んで下さいね。重傷者優先ですよー」


「みんな、回復は順調なようだな」


「レイ! 順調だよー」


 ナースの格好をしたフェアリー等の回復が上手な妖精族が、仮設テントを飛び回っていた。


「ただいま、取ってきたよ」


 青い顔の集団がテントに入ってくる。


「ご苦労様。どうな調子だい?」


「楽勝だな」


「さすがだね! じゃあ、魔力ちょーだい」


 青い顔の集団は、ジン族で三国同盟軍に紛れ込みマジックドレインで魔力を奪い、衛生兵のフェアリー達に渡していた。


 レイは、多種多様な種族を多数スカウトして各エリアを回っていたおかげで、戦って怪我をする、回復、魔力を盗むのサイクルを完成させた。


「あっ、もう取って来なくていい。作戦の最終段階に入るから、今いる人を回復させたら撤退する様に、早まる時もあるから気を付けてくれ」


「わかった。護衛を兼ねて、一緒に帰る」


 ジン達は、意外と面倒見が良く、衛生兵のフェアリー達の護衛をする事が増えていた。


「そうか、ジン達が護衛をしてくれるなら安心だな。要望があればなるべく聞くから、気兼ねなく言ってくれ」


 ジンやフェアリー達に別れた時、通信機から朗報が入った。


『こちら、影。卵は巣に持ち帰った、繰り返す卵は巣に持ち帰った』


「全軍、撤退開始!」


 レイの叫び声が戦場に響いた。


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