第8話 竜神教会


 龍之介の衝撃的な発言に言葉を失っていたが我に返った。


「神同士の戦争ってそんな話、信じられるはずが……」


「レイ君、机や椅子をよく見るんだ! ここはまずい……」


 机や椅子、調度品に至るまで小さく、竜の二本の鍵爪に竜の翼が描かれていた。


「この紋章は、確かにまずい……神竜教会の紋章だなコレは……」


 神竜教会、神獣教会、海神教会は、獣人三大宗教と呼ばれていた。

 もし、神竜教会に攻撃をした場合、全世界の空を飛ぶ獣人を敵に回す事を意味している。


 かつて、神竜教会の聖域に攻撃を仕掛けた国があったが、一夜にして滅亡した話は有名で、誰でも知っている常識になっていた。


「ようやく気づいたか。教会に行っている人間なら聖域と聞いたら、どこかの教会だとすぐに気づくはずなんだが……君達は熱心ではないようだ」


「はい、私は教会に行った事がありません。どうやら助けられたのは私達のようですね、ありがとうございます」


 レインは隣で顔を青くして震えていた。どうやら聖域の常識を知らなかったようだ。

 オレも、子供の時は家から出なかったし、レジスタンスの時はそんな暇はなかった。合衆国になってからも暇はないから知らない。


「ここは、竜神教会の聖域。"聖竜のゆりかご“と呼ばれている。先程いたメイド達は全員、竜の巫女になる」


「では、叢雲殿は神父様ですか?」


「私は主神竜シャクナ・ドルアーク様の御使みつかいで神名は"シャクナの宝玉"と呼ばれている」


「御使?」


「君達は教会に行かないんだよね? 説明するよ」


 御使とは、神が地上における代弁者になり教会では全ての信者の上になる。わかりやすく言うと天使の扱いのようだ。


 話をしていると良い匂いがして、ハンバーグが運ばれて来た。


「これはまさに! ハンバーグだ!」


 鉄板の上にあるハンバーグからは、焼かれるデミグラスソースと美味しそうな油の匂いでヨダレが出てくる。


「リューネスト、すまないがココに食べさせてあげてくれ。良いだろレイ君」


「え! 良いんですか?」


「もちろんだ。ちゃんとフーフーと冷ましてから食べさせるんだ。いいね」


「はい! ココ様食べましょうね」


 凄く嬉しそうな感じのリューネストに違和感を感じていた。

 美味しそうにハンバーグを食べるココを見たら大丈夫だなと思った。


「彼女はかなり重要な人物になる。君はココについてどこまで知っている?」


「ココは私と幼馴染が2人で卵の時から育てた、娘のような存在です」


 胸を張り堂々と答えるが想像もしなかった答えが返ってきた。


「彼女は主神竜シャクナ・ドルアーク様の娘だ。位としては私より上になるお方だ」


「しゅ、主神の娘?」


「私は、彼女には何があっても攻撃が出来ない。出来るのは動きを封じる事と眠らす事の2つだけだ」


 大口を開けてハンバーグを食べるココが、神の娘をと言われても正直、信じられない。


 リューネストさんや他のメイドさん達もココの言う事を嬉しそうになんでも聞いていたので本当くさかった。


「せっかくのハンバーグが冷めてしまうよ。レイン殿も好きなだけ食べて下さい」


「はい、頂いてます。このハンバーグは驚く程、美味です!」


 レインは力強く答えながら、ハンバーグを食べる。ちゃんと話を聞いているのか疑問になる程だった。


「なぜ、主神竜の娘がオレの所にいるんだ?」


 思わず疑問を口にしたら龍之介が言った。


「それは、君が獣神教会の主神獣アルク・ガルス様の化身だからだよ」


「ブーー!」


 隣にいたレインが盛大に水を吹き出すと速やかにメイド達が綺麗に片付けて新しくハンバーグを用意していた。


「オレが神の化身?」


「どう言う事ですか? 叢雲殿、お聞かせ下さい」


「レイン殿、レイ君は自分で思っている以上に重要な人物とゆう事ですよ。他宗教の私が教えてあげられるのはここまでだ。あとは、君の神に聞きなさい。神に会える場所はわかるだろ?」


 神と会う場所なんて、すぐにわかる。


「ええ、神獣教会ですよね」


「そうだよ、教会だ。あと、シャクナ様とアルク様は仲がいいのは、もうわかるね」


「確かに自分の娘を預ける程、仲が良いとゆう訳ですか?」


「そう言う事です」


 昨日とは別人のように優しく悟す話し方に、違和感を感じながら食事を進めた。


「しかし、龍之介殿は昨日と別人のようですね」


 レインがオレも感じていた疑問をぶつけてくれた。


「ああ、あの仮面のせいです、私は神竜界に行く前の記憶か無いんです……次元を超えたら精神と魂にかなりの負担があるんです。あの仮面は擬似人格を作り、精神と魂を回復させる仮面なんですよ」


「別人だった……とゆう事ですか?」


「ええ、私はリハビリ中なんですよ」


「昨日の強さでリハビリ中? 笑えないな」


「体は動かさないと鈍るから良いんですよ。魂と精神の、回復には時間が掛かるんです」


 とても病人には見えないが、嘘を言っている感じもしない。

 隣では、たらふく食べたココがお腹をパンパンにして眠そうにしていた。


「眠い……ポケットで寝る」


 腕をスルスルと登ると大き目の内ポケットで寝始めている。神の娘と言われても正直、今までと対応を変える気は無い。


「そうやっていると本当に親子だな君達は……」


「ええ、娘ですから」


「君なら安心だな。あと、コレを渡しておこう」


 小さく豪華な箱をメイドが運んで来た。箱の中には、神竜教会の紋章が入った指輪があった。


「今後の話し合いは、神託で行おう。指輪を付けたまま眠ると私と繋がる。レイ君は明日中に教会に行って来れ、あまり余裕がない」


「わかりましたが、何かあるんですか?」


「ここに、ゴットアベンジャーが来る」


「まさか、奴らが来るのか! オレ達も協力する! 共に奴等を倒そう」


「イヤ、正直に言って足手まといだ」


 勢いで言ったが、即座に足手まといと言われるとは……


「ここには私の他に御使が三人いる。実力は全員、同じぐらいだ」


「何だと! 龍之介殿の他に強者が3人もいるのか?」


「ええ、かつて栄華を極めた国の英雄ですよ。彼等は……」


 オレ達を送ってくれた包帯男も英雄なのだろか? 英雄に見えない、ミイラ男の方が納得できる。


「君達は教会と例の作戦に集中してくれ。あの、作戦も予定に組み込まれている」


「なるほど、神は何でもお見通しか」


「食料調達の為に森に侵入する事は許可するが昨日、戦った場所以上はダメだよ。竜神教会の旗を渡すから、旗を掲げればもし間違えて入っても注意だけですむから気をつけてくれ」


 話を聞くと聖域の護衛は交代制らしく4人の御使が守っている。旗を見たら、まずは注意が共通のルールらしい。


 包帯男にまた森の入り口に送ってもらい、アラクネ達に竜神教会の聖域と伝えたら、全員が顔が真っ青にして震えていた。


 合衆国に戻り、全員に同じく報告した所、全員が顔を真っ青になり、ウォルとカインは泡を吹いて倒れた。








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