第4話 仮面の戦士
水の流れる音が聞こえる……
自分がいつからいるかわからない……何処にいるかもわからない……
体が水中にいるのはわかる。下の方から泡が出ていて水の音色が聞こえる。不思議と安心できた。
(オレは、誰だ……)
記憶が無いのがわかる。名前も今まで何をしていたかも分からない。
優しい光に照らされて、体に重量を感じた。
「おはようございます。ご主人様、お目覚めをお待ちしておりました」
目の前には、竜の角が生えた金髪のメイド姿の女の子がいた。
「君は誰だ? 私は誰だ? 分からない」
黒髪に赤眼の青年は、巨大な大木の中にいたらしく木には穴が空いていた。
「貴方様は、
少女の後ろには、沢山の獣人が頭を下げて膝を地面に付けて待っていた。
「お前達は一体……」
「私達は、全員が貴方様の下僕でございます」
少女は龍之介に三つ目の仮面を渡すと他の者と同じように頭を下げた。
帝国崩壊の一年前の出来事になる……
♢♢♢
カトリック合衆国では工事が進んでいた。それは、元・帝国の市民の安全確保のおかげで労働力が確保されたおかげだった。
レジスタンス時代から行われてきた事なので、素早い対応と魔素研究が進み、迅速な連絡ができるようになった為だった。
合衆国に、何が足りないか会議が行われていた。
「人材の確保は大体終わったな、資材はどうなっていますか? ウォル兄さん」
「レイン殿とカインが地下にある資材置き場に確保してあるから大丈夫だ」
レジスタンスのメンバーは内政が苦手な者が多かったが、ウォルは内政にかなり特化して優秀で上手く国が動いていた。
「ただ問題があってだな、食材確保が上手く行っていない」
「何か問題があるんですか?」
「東にある魔獣の大森林に、仮面の戦士が現れた。幸い死者がいなかったが重症人が多数出た」
ウォルはため息を吐きながら、メガネを拭いていた。昔からの癖で困ったり、悩んだらメガネを無意識でいじる癖があったが本人は気づいていない。
「仮面の戦士は、なぜ攻撃を? 彼等はなんて言っていたんですが?」
「ここは、自分達の森だから勝手は許さないと言っていたらしい」
「魔獣の大森林に、部族が住んでいると聞いた事がある人はいますか?」
レインが真面目な顔で答える。
「大森林は人跡未踏エリアだから、誰も知らないよ」
「そうですか……では、仮面の謎の戦士に話を聞きに行きましょう」
「え! ちょと待ってほしい。レイくんに居なくなられたら困る」
「レインには、元冒険者の意見が欲しいので一緒に来てもらいます。カイン兄さんとアイカがいるから大丈夫ですよ」
「えーー! レイ様が、行くなら私も行きます」
涙目のアイカに、今は何でも知っている人物が必要だから残るように説教した。
渋々納得したが、戦いに行くわけでは無い。少数精鋭が上手く行く、現状は四面楚歌で敵だらけなのにこれ以上は増やしたくない。
「ライチさんにも来てもらいましょう。魔獣の大森林の近くに住んでいた、アラクネ族の意見あった方が交渉しやすくなる」
♢♢♢
魔獣の大森林には、レインとココにライチと数人のアラクネ族で来た。
友好な関係を結び仲間になってもらう為だ。ライチさんにも話を聞いたが、たまに見かけていて彼等の主人はかなり強いらしい。
「戦闘は絶対に避けて下さい。一度、主人殿と会った事がありますが、底知れぬ強さを感じました」
真剣な顔のライチに慎重に事を進めないと大変な事になると感じていた。
「しかし、アラクネ族は早いな」
「はや〜い、馬車なんか目じゃ無いよ」
服の中で、はしゃぐココ。
「我々は、崖や森の移動には慣れていますから、これくらいは簡単です」
糸での移動も早く、強靭な足に多大なスタミナで森を進んでいた。魔物が現れても着いて来れない程なので素晴らしい。残念ながら隠密には向いていない、足音がかなり大きく、うるさいのだ。
「話では、初めて彼等と遭遇したのが、この辺ですが……」
「何があったんだ……」
「凄い、めちゃくちゃになってる」
森の一部がまるで暴風にでもあったような感じに大木がなぎ倒されていた。よく見ると血や刃物の傷が、着いている。明らかに戦闘があったようだ。
「誰かに攻められ様だな……」
「ええ、レイン見てくれ様々な魔法の跡も見られる」
風魔法の塊でえぐられた大地、炎魔法で焦げた大木等、魔法の痕跡が見られていた。
「お前達また、来たのかーー! 今度は逃がさなん。覚悟してしろ!!」
話を聞きそうない、激怒の黒装束の三つ目の仮面が怒鳴りながら走って来た。
「待ってくれ! 私達は戦いに来たわけではない! 話を聞いてくれ!」
「黙れ!」
走りながら仮面の戦士が、投げた針が地面に刺さると、同時にアラクネ達とレインが、地面に倒れる。
「う、動けない……」
「レイ殿、妙な技を使います! 気をつけて下さい!」
動けなくなったレイン達に、仮面の戦士が当然のように言い放つ。
「フン、動けないよ! 忍びの技だからな!」
「危ない! キャャーーーー!」
仮面の戦士が刀を抜こうとした瞬間、ココが口から超音波を叩きつける。
「クソ! 厄介なヤツだ!」
ココとはあさっての方に何かを投げつけると、何かが割れる音が聞こえて超音波が消えた。
「消えた……何が」
「ずいぶん余裕だな、レイ・カトリックいや心開 明さんよ」
なぜか、仮面の戦士はオレの名前を知っていた。前世の名前までも……
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