第3話 秘密作戦
ヨーロシアン聖王国20年前〜
帝国が猛威を振るっていた時代。
数多くの聖職者が処刑されていた。創造神を崇める聖王国では、一神教を信仰していた。
平和だった教会が、帝国兵によって突然襲われた。
数多くいた孤児や神父、シスターは抵抗する事が出来ずにいた。
「神よ、我らをお救い下さい」
「アマンダさん怖いよ」
シスターと子供は小さな物置に隠れていた。子供は涙を流しながらシスターに抱きついていたが、外では帝国兵の教会狩りが行われていた。
「どこだ! 邪教者共め!」
「邪教者共を燃やせ!」
「帝国に逆らう時点で奴らは邪教者だ!」
真夜中の暗闇の中で、怒鳴り声と共に教会に火が放たれ教会が焼かれていく。串刺しになった神父やシスターが教会の前に並べて建てられていく、地面には彼等の血溜まりが出来ていた。
「子供だけでも助けてくれ、私はどうなっても構わない。頼む……」
「神父様……怖いよ……」
帝国兵に子供が攫われそうになっていた時、1人の神父が身を盾にして庇っていた。
帝国兵は、神父を斬り倒してから笑いながら死体に語り掛ける。
「安心しろ、ガキ共にはお前達と違い使い道がある」
「行くぞ、ガキ……」
「嫌だ! 離して誰か助けて!」
「うるさい! 黙れクソガキがっ!」
子供を殴り、黙った後馬車に押し込み攫われていく。
「アスラ、貴方だけでも逃げなさい」
「ダメだよ、一緒に逃げなきゃ殺されちゃう」
小屋の隙間から外が見えるが、助かる見込みはなかった。沢山いた教会は居なくなり死体の山が出来ていた。生きたまま串刺しされるか焼かれるか、地獄の様な光景が広がっていた。
「1人も生かすな、必ず殺せ!」
燃え盛る炎に照らされる中で、兵士に混ざって1人だけ変わった男がいた。黒い包帯で顔をぐるぐる巻きにして見えないが、真っ赤な瞳だけは印象に残っていた。
「……」
包帯男が、大きな筒状の金属を地面に置くと何か筒に吸い込まれていく。
アマンダが小屋の穴からアスラを逃していたら、小屋の扉が開き黒い包帯がアマンダを包んで引っ張っていく。
「アマンダさん!」
「逃げなさいアスラ!」
後ろから叫び声と人々が焼かれる音を聴きながら復讐を誓った。優しかった神父やシスターに一緒に育った孤児の笑顔や笑い声、楽しかった日々が思い出すが、もう帰って来ない。
「帝国の奴らに必ず復讐してやる。1人残らず殺してやる」
少年は走る、涙と鼻水を流しながら、帝国に対する復讐を誓って……
♢♢♢
カトリック合衆国では、街の発展が急ピッチで行われていた。
道の整備と共に水路を作り、水辺で暮らす獣人が快適に暮らせる様になっている。
「なかなか難しいな、想定の半分もできていない訳か。現実は厳しいな……」
「普通に作っていたら出来ていましたが、仕掛けが色々付いているから仕方ありません」
「奴等がいつ来るか分からない、やれる事はやっておかないといけない」
レイとアイカは、街の工事を視察しながら現状の話をしていた。
周辺国三国から攻められ、秘密結社からもいつ攻撃が来るか分からない現状では、普通に国造りするだけでは全く足りない。
特に聖王国の攻撃が激しく、毎日どこかで戦闘が行われていた。
「オレ達は、帝国ではないんだけどな…… 理性では理解できても納得は出来ないだろうなぁ….」
「無くなっても迷惑な国ですね。帝国は……」
今まで憎しみの対象だった帝国が突然消えて、やり場のない怒りは、全てカトリック合衆国に向けられいた。完全に八つ当たりで、こちらの話を聞こうとしない……。
「せめて、話だけでも聴いてくれたら対処が出来るんだけどね」
「この作戦がうまくいけば、いやでも彼等は聞くはずです」
「そうだね、だから必ず今回の“巨竜の大口"作戦は成功させないと……」
目の前には、巨大な大穴が広がっていた。周りでは工事が続いている。
「オレ達の根本は、レジスタンスだ。国が出来たとしても何も変わらない」
「ええ、みんな理解しています。だからこの街が普通とは違うと新しく来た者達もわかっています」
「ああ、そうだね」
「情報部では、連合王国、共和国、聖王国が手を結び近々、合衆国に全面戦争を仕掛ける動きがあるそうです」
帝国と長年、戦い続けたレジスタンスが多くいる合衆国はかなりの戦力があり全ての敵に勝ち続けていた。3ヶ国にとって力押しで勝つつもりでいた。
「上手く行かないさ。これからもね……」
「ええ、今でもかなりの数のスパイが合衆国に入国していますが全て捕まえています」
個人を確認する為の認識票も魔法がかかっているので、すぐにわかるようになっていた。
「アイカ、情報はかなり集まって来ている。大規模作戦はもうすぐだ。仲間達を集めてくれ」
「わかりました。レイ様、いよいよですね」
「秘密結社を表舞台に引きずり出してやる!」
現場と地図を見ながら2人は作戦の成功を確信していた。
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