第8話 ダブルブリッツ作戦 処刑場編


 銀翼の捕縛は、レジスタンスに衝撃を与えた。

 なぜなら、今まで善良なA級冒険者はギルドが守り、捕まらなかったからだ。


 すぐさま、レジスタンスの情報部は素早く動き、多くの情報を手に入れた。



「多くの冒険者が帝都に集められている。公開処刑は5日後だ。レインとウィンドラ、説明をしてくれ」


「レジスタンスを部隊を2つに分け処刑場と刑務所を同時に襲撃して冒険者を助ける」


「ボクから細かい詳細を説明するよ! 処刑場は、恐らく罠がある。ハーピー隊が上空から偵察をして、地上部隊に合図を送るから攻撃を仕掛けて」


「私とスタンリーとナターシャの3部隊が刑務所を襲撃する」


 レイが立ち上がりメンバーに叫ぶ。


「オレとアイカ、カインの部隊が処刑場を襲撃する。ハーピー偵察隊は部隊は、隊を分け同時に襲撃を開始。作戦名は、ダブルブリッツとする。解散」


「処刑場襲撃班はボクから追加情報がある残って後で、刑務所襲撃班にも追加説明するからね」


 刑務所襲撃班が別室に移動したあと、説明が始まった。


「帝国は大部隊を配置して奇襲をする可能性が高い。噂だと将軍クラスが配置されるだろう」


「誰かわかるか?」


「武芸に強いガスラ将軍じゃないかな?後は、組織から、死の商人と奴隷商人が表に出てくる」


 ガスラは、槍の名人で武神ガスラの二つ名を持つ将軍。


「死の商人と奴隷商人は、組織のメンバーなんですか?」


「恐らく違う、ラッキースターが見出したようだね。1人は元奴隷って情報が入っているよ」


「後は、伝えるべきか悩んだけどウォルが処刑メンバーに入っている」


「「「なっ!」」」


 まさかの情報にレイ達は固まっていた。どれだけ探してもわからなかったウォルがこんな形で見つかったからだ。


「その情報は本当か?」


「カイン兄さん落ち着いて、今までにないチャンスだ。成功すれば銀翼とウォル兄さんを同時に助ける事ができる」


「確かに……失敗は許さないな」


 その場のメンバーは、冷や汗を流していた。成功か失敗か、今後のレジスタンスの運命を大きく変える戦いになる……



♢♢♢



 処刑場には、大部隊が配置されていた。屋根には魔道士と弓兵が配置され完全に包囲されていた。


大袈裟おおげさな大軍を連れてきよってたかが有象無象うぞうむぞうに……馬鹿共がっ!」


 ガスラは面白くなかった武神とまで言われた戦士である自分を侮辱行為に当たる大軍だからだ。


「ガスラ殿、奴らを甘く見ると痛い目にあいます」


 腰は曲がり、杖をついた老人がいた。


「奴隷商人がどんな気まぐれだ?ローグ?」


「私だけではありません」


 白のスーツを着たグレイブが姿をみせる。


「ほう、死の商人のグレイブまでが……組織は本気か? それとも裏切った兄の最後を見に来たかな?」


「我々はただボスの為に動くのみ……将軍も頼みますよ」


「ボスか……」


 ガスラはボスを知らない。正体不明の存在に帝国の人間は恐れていた。


♢♢♢


 処刑の時間になり銀翼とウォルと目つきの鋭い老人が拘束されたまま連れてきた。


「これより、大罪人5名の処刑を結構する」


 暴れる銀翼のメンバーと対象的にウォルと老人は暴れない。

 覆面を付けた大男が巨大な斧を持って現れた。


「離せ、オレ達は何もやってない!」


「うるさい!処刑人は速やかに処刑を開始せよ」


 ガスラが大声が叫ぶ。巨大な斧を振りかざそうとした時ーー



ドッサ、ドッサーー



 煙り玉と共に屋根にいた。魔道士や弓兵が落とされて死んだ。


「なんだ、何が起きている」


 焦るガスラに処刑人の野太い断末魔が響く。


「グアァァァァーーーー!」


 大鳥の羽根音の後、誰かが叫んだ。


「確保ーー! 攻撃を開始せよーー!」


 煙りが晴れた時、遠くの空に5人のハーピーが囚人を足で掴み逃げていた。


「やられた。クソっ!」


 憤慨ふんがいするガスラは気がつかなかった。レイ達レジスタンスが直ぐ近くにいた事に……


「抜刀! 戦え! 敵を襲撃せよ!」


 レイの号令にレジスタンスが一斉に帝国兵に攻撃を開始したーー



 カインは、処刑場でグレイブと戦っていた。


「なぜ、カトリック家を裏切った。グレイブ!」


 キィンーー


 叫びながら斬りかかるカインにグレイブは攻撃を受け流しながら答える。


「フンッ、お前とウォルは知らなかっただろう。オレとスタングが父さんからなんと言われて生きてきたかー!」


「なんの事だ」


「お前達は、カトリック家の恥と言われ続けた。お前やウォルの失敗作となー!」


 グレイブは、怒りと悲しみの表情でカインを睨む。


「お前にわかるか? 母から産まなければよかったと、泣きながら殴られる日々がーー! お前にわかるか? 級友から帝国の裏切り者と石を投げられる日々がーー!」


 カインは、何も知らなかった、父は優しく。グレイブ達の母は、気難しい人だったがいい人だった。


「そんな時、ボスが……いや、リリーナが現れた。オレ達はすぐに理解し合えた。初めて認めてもらった気がした。カトリック家のせいでオレ達の人生はめちゃくちゃだ。だから、協力したんだよ」



 ギィィンーー


 

 斬りかかるグレイブの斬撃を受け、吹き飛ぶカイン。


「お前とウォルは必ず殺す、死ねーー! 奥義・風牙旋風斬ふうがせんぷうぎり」


「グレイブーー!」


 剣がぶつかり火花が散る中でカインは心の中で謝った。「気づいてやれず、ごめんなグレイブ」


「奥義・鳳凰炸裂斬ほうおうさくれつざん


 熱風を纏いながらグレイブを切り裂く。

 剣で受けようとしたグレイブは剣ごと切られ倒れた。


「グハッ! ハァハァハァ……カイン。お前達はまだ知らない、組織の本当の力を……絶望しろ!」


 注射器を取り出しグレイブは自分に打つ。

 肉体が変貌して巨大化を果たす。


「組織で開発された薬だよ、本番はこれからだ」


 巨大化した肉体から放つ右ストレートがカインを襲う。


プシューー


 かわしたはずの腕が拳圧で裂ける。


「ウインドボム!」


 突撃してくるグレイブの足元に風魔法の爆弾を設置する。


バーーンーー


 グレイブの足が破裂して血が飛び散るがみるみるうちに治っていく。


「グハッ!」


 グレイブの突撃で壁に当たり口から血を吐き出した。


「はぁはぁ、なんだその薬は?」


「寿命と引き替えに高速で肉体の再生させる薬だよ」


「ウインドスラッシュ! ウインドスラッシュ!」


 足を切り裂き、血が飛び散るがたちまち再生する。


「無駄だ、この程度で倒せるはずがないだろう?」


「ウインドボム、ウインドスラッシュ!」


「無駄だと言っただろう!」


 高くジャンプして殴りかかるグレイブにカインは剣を下から上に回転しながら切り上げる。


「奥義・鳳凰螺旋昇ほうおうらせんしょう!」



ドッシャャーーーーパリン


 技に耐えられず剣が砕けた。


「悪いなグレイブ、この技は高く飛んでいる敵専用なんだ」


 グレイブの体は、大きく切り裂かれかろうじて繋がっていた。

 亡くなったグレイブの見開いた目を閉じてカインは行く。まだ作戦は終わっていない。

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