閉話 ナターシャとレイと出会いの物語


「今日からわたくし、狩りに行きますわ!」


 ナターシャは、蛇種ナーガ族で真っ白の尻尾に、銀髪にルビーのような赤い瞳の少女。


 ナーガ族の中で、巫女の一族と呼ばれている。

 白いナーガは、神聖な証として村の中でも、アイドル的な存在だった。


 14歳になり槍の扱いと水と風魔法の扱いに慣れたので、家族から狩りの許可を得たのだ。


「ナターシャ、本当に大丈夫? 張り切るのはいいけど無茶はしないでよ!」


「大丈夫ですわ! アルやラケットには迷惑かけませんから!」


 アルとラケットは、ナターシャの幼馴染の女の子で、いつも3人で遊んでいた。

 ナーガ族は独自の民族衣装を、身につける羽衣のような衣装に、胸当てとスカートを着ている。


「本当かよ! この前だって無茶して、ナターシャのお母さんに私達まで怒られたんだぞ!」


「木の上のタマゴを、取ろうとしただけですわ! ジャイアントボアが突進してきて落ちたのは、わたくしのせいではありません!」


「まぁ、落ちたナターシャがボアの頭に当たって仕留めていたから本当だよ! ラケットちゃん」


 ラケットは、呆れるようにアルに言う。


「アルはナターシャに甘すぎだよ!」


 ナターシャとアルとラケットは、鹿を狩りに来ている。周りに注意しながら道を進んで行く。


「ナターシャいたよ」


 遠くに鹿の群が見える。3人は息を殺して鹿に近づく。


「今ですわ!」


 三人は同時に槍を投げ、アルとラケットの槍が鹿の背中に刺さり倒した。


「「「やったー!」」」


 三人はハイタッチをした後、槍を回収してからツルを見つけて、鹿を木にぶら下げて血を抜く。


「ナターシャ、外したな!」


 ラケットがナターシャをからかう。


「つ、次は大丈夫ですわ!」


「ラケットちゃん、ダメだよ! 意地悪したら!」


「は〜い」


 ラケットが空を見ると黒煙が見えた。


「あれ、なんだ?」


 ラケットは不思議そうに黒煙を指刺す。


「ねえ、ナターシャちゃんアッチは村の方じゃない?」


「!?」


「急いで帰りますわよ!」


 ナターシャは、村で何か異常があったとすぐに理解してみんなで急いで帰った。


♢♢♢


 村は帝国の兵士達が、攻めてきていた。

 村の戦士達は、魔法や槍で戦っていたが劣勢になり、1人また1人と戦士が倒される。


 ナターシャ達は、村に着くと大人達は家具や木材でバリケードを作り道を塞いでいた。

 ナターシャ達の、父親達がバリケードを押さえていた。


「「父さん!」」

「親父!」


「ナターシャ達か? 早く逃げろ! 敵が多すぎる!」


「お母さんは?」


「捕まったか殺されたかわからない! 無事なのはここにいる者だけだ!」


 ナターシャ達の、父親以外は7人しかいなかった。

 みんなナターシャ達と、同い年ぐらいの女の子だった。


「オレ達が時間を稼ぐお前達は逃げるんだ! いいな!」


「戦いますわ! 私達も戦いますわ!」


 ナターシャの父が、ナターシャを頬を叩く。


 ビシッ! 


「馬鹿を言うな! 親の言う事を聞け!!」


「父さん……」


 アルとラケットは、ナターシャを引っ張り連れて行く、他に残っていた7人も後に続いた。


「ナターシャ、急いで逃げなきゃ! 私達は生き残って行かなきゃ….…」


「ナターシャ、急ぐぞ! 逃げるんだ!」


 アルとラケットは、泣きながらナターシャを説得する。


「わかりましたわ! 急ぎましょう!」


 軍馬が徐々に近づいて来る、あっという間に軍馬が追いつき、ナターシャ達を囲む。


「やっと追いついたぞ! 蛇共め!」


「手間をかけさせやがる! 1匹2匹なら殺して構わないだろう!」


 1人の兵士が軍馬から降りて剣を抜く。

 ナターシャは身を挺して他のナーガを守ろうとしていた。


「死ねーー! ヘビがーー!」


 ナターシャに兵士が剣を振り下ろす瞬間ー


「死ぬのはお前だ!」


 金髪に青い瞳、黒い軍服の男と赤毛のキャットピープルを先頭に、10名の黒い軍服の戦士達がいた。


「動かない? なぜ、体が動かない? グッハ!」


 金髪の戦士が手を握ると、兵士が血を吐いて死んだ。


「抜刀! 戦士達よ! ナーガ族を守れ!」


 金髪の戦士の号令に、他の戦士が武器を取り出し、一斉に兵士達に切りかかる。


 ナターシャ達は、なにが起きているか分からず、唖然としていた。


「すまない。助けるのが遅れてしまった」


「わたくしは…」


 泣き出しそうな、金髪の戦士はナターシャを抱きしめた


「ありがとう、生きていてくれて!」


「えっ? あわ、あわわわわ!」


 突然の事に、慌てるナターシャ。


「レイ様!!」


「すまないアイカ、うれしくてね」


 顔の火照りが収まらず、混乱しているナターシャに金髪の戦士と赤毛のキャットピープルは、自己紹介を始める。


「オレは、レジスタンス・独立解放前線のリーダーをしているレイ・カトリックです」


「同じく独立解放前線のサブリーダーをしていますアイカです。みなさんの他に生存者はいませんか?」


「わたくし達の村に父さん達が! 父さん達が!」


「急ぐぞ! アイカ!」


「はい! レイ様!」


 村に攻め込み帝国の残党を倒したが、ナーガ族は全滅していた。


「父さん! 母さん!」


 親や兄弟の亡骸に泣く、ナターシャ達にレイが手を差し出す。

 

「信じてくれとは言わない、ただオレの手を握ってくれないか?」


 ナターシャ達は訳がわからず、レイの手を握る。

 ナターシャ達の前に、青白い光に包まれた家族が現れた。


「みんな……なんで……」


 戸惑うナターシャ達に優しくレイが語り掛ける。


「みんなはもうすぐ旅立つんだ! みんなにお別れを言ってあげてくれないか?」


 ナターシャ達は、泣きながら別れを叫ぶと村の人達は、光の輪に吸い込まれていく。

 レイの横顔を見た、ナターシャはレイが静かに涙を流しているのに気がついた。


♢♢♢


 翌日ーー


 亡くなったナーガ族の埋葬に、レジスタンスの全員が手伝ってくれた。

 いく当てがないナターシャ達に、レイ達は隠れ里があるから、そこで暮らすように勧めてくれる。


「レイさん、いいですか?」


「えーと、ナターシャさん! いいですよ」


「レイさん達は、わたくし達の村のような事が起きないように帝国と戦っているのですか?」


 笑顔だったレイは、真面目な顔になりナターシャの話に答える。


「はい。オレ達は帝国から迫害を受けている人を、救出して助けるのと。これ以上、帝国から被害を受ける人が出ないように活動しています」


 ナターシャは驚いていた、普通の人種はナーガ族の事を大抵は人間として見ない。


 ナーガ族をモンスターとして見る者さえいる。

 やはりレイの事は信用できると、ナターシャは確信していた。


「レイさん、私達をレジスタンスに入れて下さい。お願いします」


「えっ、ナターシャさん。よく考えて下さい! 他の皆さんと話し合った方がいいですよ!」


「昨日の夜、全員でたくさん話をしました。わたくし達はあんな光景は見たくありません! だから戦うと決めました!」


 ナターシャの真剣な目を見た、レイは彼女達の覚悟を認めて手を差し出す。


「わかりました。これからよろしく、ナターシャさん、いや。ナターシャ!」


「ええ! レイ!」


 ナターシャ達は、レジスタンスの一員になり、レイと共に数多くの人達を助ける事になる。

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