手持ち花火

 朝顔咲いた朝

 薄ぼんやりな陽射し

 つけたままのエアコンが

 少し肌寒くさえあった

 タオルケットに丸まる

 至福のとき


 まだ休みだ

 終わりが近づく焦燥




 夜には花火の約束

 友と囲うろうそく


 手には花火

 点火の瞬間

 息を呑む

 ドキドキドキン

 待ちわび高鳴る

 夜空を彩る派手さはないが

 とくとくとくん

 手持ち花火に見惚れる

 あなたの横顔をそっと見つめる


 誰かがねずみ花火を取り出して

 一気に騒がしくなった

 はしゃぐ時間

 まだ終わらないで

 まだ去らないで


 煙と笑い声

 パチパチパチン

 弾けた光りと火薬の匂いと

 恋心


 夏は過ぎるのが早く寂しい

 来年の夏にはあなたのそばに

 誰がいる?


 咲き終わり手持ち花火

 バケツに入れたら

 ジュッと音をたて

 瞬間一度きりあたりに鳴った


 花火

 花火

 まだあるからね


 誰かの声にホッとする


 終わらないで

 この時間


 友がいてあなたがいる夏


 手に持つ花火

 かすかに震えてる




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