ヒトヒラを編む ─140字SS集─

藤咲 沙久

昨夜の嘘


──好きだよ。

 嘘だと知っていて、その言葉に溺れた。今宵限りの夢とは気づかない振りをした。

「……嘘つき」

 だからこれは自分に向けた独り言だ。嘘でもいいなんて嘘をついて、錯覚の愛を得ようとした自分への。

 一人分空いたシーツはすでに冷たい。ずっと、夜が明けなければよかったのに。




【お題:朝】

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