第523話 万年Gランクの冒険者(だったはずだよね?)

ヤッチマ 「みんな、騙されねぇようにしたほうがいいぜ? このリューは、万年Gランクの薬草取り専門冒険者だったんだ」


男A 「Gランク? ランクはFが一番下じゃないのか?」


男B 「いや、確か、最低ランクはHだったはず。まぁHランクってのは街ん中での雑用しか受けられない未成年者用のランクだったはずだが」


ヤッチマ 「ああ、そして、基本、冒険者はFランクからスタートって事になってる。つまりGってのはありえねぇはずなんだ。だがコイツは、スキルも無し、職能クラスも無し、魔力も無しの三無しだったもんだから、ギルマスの判断で、この街のギルド初のGランクと認定されたんだよ」


エリザベータ 「そんな昔の話を持ち出してなんだっていうの? アナタ達だって新人だった時があるはずでしょう? 昔弱かったとしても、その後、成長したなら立派じゃない」


ヤッチマ 「ああ、驚いたよ。どうせすぐ死ぬだろうと思ってた無能のガキが、まさか今まで生き延びているとはな。だから……


どれほど成長したのかと、【鑑定】させてもらったんだよ。


ふふん、どうしたリュー? 顔色が変わったな?」


リュー 「いや別に、変わってないぞ?」


ヤッチマ 「驚異の鑑定結果だった、俺は驚いたぜぇ?」


男A 「どうだったんだ?」


ヤッチマ 「なんと、コイツは未だにレベルがは1のままだったんだよ!」」


男B 「ぶわっはっはっは何だそりゃぁ? レベル1のSランク様ってか!」


エリザベータ 「当たり前じゃない、あなた達、何か勘違いしてるみたいだけど―」


竜人のレベルが人間のそれとはまったく違うので比較にならない事を説明しようとしたエリザベータであったが、それを何故かリューが手で制した。


リュー 「別に、レベル1であっても実力さえあればギルドがSランクを認定する事はありえるだろう?」


男A 「あるわけねぇだろ!」


ヤッチマ 「まぁ待て。本当にSランクかも知れん。だから、俺達が確かめてやろうじゃないか? 衛兵に突き出すのはその後でもいい。無様に泣きながら自白させてからでな……」


リュー 「能書きはもういい、時間の無駄だ。訓練場へ行こう。俺も試したい事がある」




  * * * * *




訓練場に移動したリューとヤッチマ達。


ぞろぞろと野次馬の冒険者達も集まってくる。


男A 「一応名前を聞いといてやろう、俺はサムだ」


リュー 「リュージーンだ。お前らみたいなクズに名乗る意味があるかどうか分からんがな」


男B 「その舐めた口、二度ときけねぇようにしてやる」


サム 「この場に来てまだ煽ってくるとは……度胸はあるようだな」


ヤッチマ 「ハッタリだよ!」


リュー 「で、やるのはこの二人だけか? ヤッチマ、お前も当然やるよな? 全員同時で構わんぞ?」


ヤッチマ 「……俺はAランクだぞ? 殺されたいのか?」


リュー 「俺はSランクだが? 殺さないよう努力してやるよ」


ヤッチマ 「舐めやがって……」


怒気をはらんだ表情でリューを取り囲むサムとヤッチマと男B。


ヤッチマ 「ルールはなんでもあり、どちらかが戦闘不能になったら終了、って事でいいな」


リュー 「なんでもいいよ。ちなみに、サムとそっちのB男のランクは?」


男B 「B男ってなんだ? 俺はボブってんだ!」


リュー 「ボブとサムね。で、ランクは?」


サム 「俺はC、ボブはDだ」


リュー 「CとDかよ…相当手加減しないとまずいか。じゃぁ俺は素手でやってやろう」


サム 「お前、歴戦のベテラン冒険者三人に囲まれて、その余裕は……


…まさか…本当にSランクなのか……?」


リュー 「いつでもいいぞ」


ボブ 「死ねやぁぁぁりゃあああ!」


サム 「あ、おい待て!」


リューの落ち着き払った態度にサムは少し慎重になったが、ボブが雄叫びとともにリューに打ちかかって行ってしまった。


時空魔法のスキルを失ったリューであったが、全ての能力を失ったわけではない。竜人としての種族的な強さはそのままである。さらに、竜人レベル上昇の能力も残っている。


それだけではない。これまでリューがまったく使用していなかった竜人固有の力と技をリューは身につけていた。そのために、ここ一ヶ月、エリザベータから竜人の能力について教わってきたのだ。


リュー 「戦闘能力初披露、『シン・リュージーン』ってところだな」


(もちろん、旅の途中で魔物相手には試してきたが、人間の冒険者相手に使うのは初めてとなる。)


リューはそれを試したかったので、わざと挑発に乗って模擬戦に持ち込んだのだ。


リュー 「竜鱗鎧ドラゴンスケイル


リューの体が瞬時に頑強な鎧で覆われる。


ボブの木剣が振り下ろされたが、リューの鎧に当たった木剣は折れてしまう。鎧には傷一つ付いていない。そして、次の瞬間、リューのボディブローがボブの腹部に突き刺さっていた。ボブがくの字に折れ曲がる。


本当に強い攻撃の場合、その威力は突き抜けてしまうため、相手の体が後ろに吹き飛んだりはせずに体が折れ曲がる。


くの字になったボブは、血反吐を吐きながら倒れ、うめき声を上げるだけで身動きひとつできなくなっていた。リューのパンチで内臓が破裂してしまったのだ。


リュー 「すぐに治療してやれ、ほっとくと死ぬぞ?」


それを聞いたサムが慌ててポーションを取り出してボブに飲ませようとする。だが、血を吐いており、飲める状態ではない。サムは仕方なくボブの腹部にポーションを掛ける事にした。飲むより効果は落ちるが仕方がない。


だが、ボブの腹部は内臓破裂による出血で腫れ上がってはいたが、“外傷” がなかった。ポーションは傷に直接掛ければ飲んだのと同じ様に効果を発揮するが、傷がないとかなり効果が薄い。


サム 「くそ、どうすれば……」


リュー 「ドラゴンクロウ」


リューが小さく腕を振ると、見えない “気” の斬撃が飛び、ボブの腹部へと吸い込まれる。次の瞬間、ボブの腹部は裂け、血しぶきが上がった。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


「待ってくれ! 悪かった! 謝る! 取り消す!」


乞うご期待!



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