第507話 ランスロット 「生徒達に襲われました」

ジャカール 「……はっ、エイミが危ない!」


カザームを取り逃がしてしまった。つまり、裏切った事がバレたわけで、そうなると妹のエイミに対して報復指令が実行される可能性がある。


ジャカールは慌ててエイミの居る教室に走った。


リュー 「あ、おい! エイミには護衛をつけてあるぞ…」


実はエイミにはスケルトン部隊の護衛をつけてあった。


護衛についているのはランスロットと選りすぐりのスケルトン兵士達である。(もちろん亜空間に待機しているので教室の生徒達にはまったく見えないが。)


色々忙しそうなランスロットだったが、手が空いたというので任せた。


それはジャカールにも伝えてあったはずなのだが、姿の見えない護衛がついていると言われてもジャカールには今一つ信じられなかったのだ。


リューは念のためランスロットに念話で連絡を取り状況を尋ねてみたが、特に異常はないと言う事だった。


ランスロットが居ればエイミは大丈夫だろうと判断し、リューは学園長に報告に行くことにした。


警備隊には、学園長には自分が報告しておくから、すぐにでも逃げたカザームの手配に回れと言ったのだ。


    ・

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    ・


学園長室ではベアトリーチェとマグダレイア、ヘレンも心配して待っていた。


逃げられた顛末をリューが報告していると、エイミの無事を確認したジャカールがやってきた。


それともう一人……ジャカールの後ろから、学園の捜査をしていた警備隊の騎士タロールが申し訳無さそうな顔で現れた。


学園長 「おや、タロール、どうしたのじゃ?」


タロール 「警備隊長から報告を頼まれまして…」


学園長 「カザールを捕らえたか? …という顔ではないな」


タロール 「はい、その、申し上げにくいのですが……」


学園長 「?」


タロール 「警備隊の留置場に捕らえていたスージルなのですが、逃げられてしまいました……」


学園長 「なんじゃと?」


リュー 「やれやれ。警備隊の留置場はそんな簡単に脱獄できるほど警備が手薄なのか」


タロール 「そんな事はない! 警備は厳重だった! 絶対誰も逃げ出す事など! 現にスージル以外の男達は残っている…」


学園長 「逃げたのはスージル一人なのか」


タロール 「はい、朝になったら影も形も見当たらず……」


リュー 「転移か」


タロール 「そのようだ。残った男達が話していた」


どうやら、部下の男達は外国人ではなく、この街でカザーム達に雇われたチンピラだったそうだ。そのため、特にカザームに忠誠心があるわけでもなく、むしろ、自分達を残してスージルが一人だけ逃げ出した事を聞き、怒って知ってることを話してしまったのだ。


彼らの話によると、どうやら転移は魔法ではなく魔道具によるものだったようだ。その魔道具は一度使ったら壊れてしまう使い捨てのものらしい。そしてそれはカザーム達にとっても貴重なもので、それほどたくさん用意している様子はなかったという。(そのためチンピラ達の分はなかった。)


貴重なもので数が多くないのはガレリアとしても幸いであった。もし転移の魔道具が無制限に使えるなどとなったら、国家的な驚異となってしまう。


その話を聞き、少しだけ安堵する学園長。だが、その時、リューにランスロットから念話で連絡があった。


ランスロット 『リューサマ、少々まずい事になりました』


リュー 『どうした、エイミに何かあったか?』


ランスロット 『はい、生徒達に襲われました』


リュー 「!」


ベアトリーチェ 「リュー……どうかしたの?」


リュー 「エイミが襲われたらしい」


ジャカール 「何? エイミは無事なのか?」


リュー 「エイミは無事だ。だが問題は、他の生徒達だ」


ジャカール 「誰に襲われた? どの生徒が犯人だったんだ?」


エイミのクラスの生徒の誰かがカザームの仲間になっているという事だったのだが、それが誰なのかまではジャカールは掴めていなかった。


リューが神眼で生徒を一人ひとり確認すれば分かる事なのだが、リューはカザームの対応で忙しかったので、ランスロット達に任せておけば大丈夫だろうと思い、そちらは保留のままだったのだ。


もちろん、エイミはランスロット達が守りきったので無事である。無事でなかったのは……


…攻撃した生徒達という事だった。




  * * * * *




リューとジャカールがエイミの居た教室に駆けつけてみると、エイミ以外の生徒達がバラバラ死体となって散乱しており、血の海という様相であった。


よく見れば、その中にはカザームの首もあった。


そして、教室の中では、ランスロットと謎の男が対峙していた…。




  * * * * *




時は十分程前に遡る。


教室で授業を受けていたエイミ達だったが、その時、教室内にチリンという鈴の音が響いた。


その途端、生徒達の目の色が変わる。まだ授業中だと言うのに、生徒達は席を立ち、エイミに笑顔で話しかけた。


エイミ 「どうしたの、マリア…?」


マリア 「ねぇ、エイミ……この間の、アレの事なんだけどさぁ……」


エイミ 「? アレって? 何のこと?」


だが、次の瞬間、マリアの手に握られていたナイフがエイミの腹部に向けて突き出されていた。



― ― ― ― ― ― ―


次回予告


ランスロット VS ニヤけ男

宿命の対決?


乞うご期待!



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